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映画「記者たち 衝撃と畏怖の真実」と「バイス」奇しくもディック・チェイニーが双方に登場

2019-10-18 15:48:22 | 映画
「記者たち 衝撃と畏怖の真実」
 2003年3月、アメリカはイギリス、オーストラリアそれに工兵部隊を派遣したポーランド等との有志連合によって、イラクに軍事介入したいわゆるイラク戦争を主導した。これの背景には、2001年9月11日アメリカで起きた同時多発テロがある。

 当時のジョージ・W・ブッシュ大統領は「これはアメリカへの宣戦布告だ」と断定、犯人捜しを強行に進めた。ブッシュの支持率も上がりニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどの大手はこぞって政権を支持する記事を書いた。

 カリフォルニア州サンノゼが本社の地方紙ナイト・リッダー社ワシントン支局編集長ジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー)は、冷静に真実を追う姿勢を示していた。二人の記者、ジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)とウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)をブッシュ政権に張り付けていた。

 編集長のウォルコットは、真実を報道するために必ずウラを取れと厳命する。ブッシュ政権は、戦争への道を歩み始めていた。副大統領のディック・チェイニーがたびたびメディアに登場して開戦への地ならしをしていた。

 2002年1月の一般教書演説で、ブッシュ大統領は「イラクが大量破壊兵器を所有し、テロを支援している」と断言する。しかし、ウォルコットや二人の記者は、懐疑的だった。そしてディック・チェイニーの「大量破壊兵器がある」を嘘だったとリークしたが、流れはイラク戦争に向かっていた。

 のちにランデーとストロベルは、上院プレスギャラリーから、「レイモンド・クラッパーは、アメリカで最も尊敬されるジャーナリストの一人」と言われるレイモンド・クラッパー賞が贈られた。

 さらに2008年7月24日ジョン・ウォルコットは、ストーン報道の自由賞でのスピーチで「高度な文明社会とは、報道の誠実さと明晰さの重要性を意識的に尊重する社会であり、報道の内容が正確かどうかに疑いを持てる社会です」とあり、今のアメリカや日本に求められていることでもある。

 さらに映画のエンディングに「彼らの記事こそ真実だったと世界は知った。17年間、米軍は紛争地帯で闘っている。2兆ドル、今までにかかった戦費。3万6千人以上米兵の死傷者。100万人、侵攻によるイラク人の死傷者」とある。
   
 ちなみに、ナイト・リッダー社は、ジョン・ナイトとハーマン・リッダーが1974年に創立した新聞社。地方紙とは言いながら堂々たるビルディングの社屋がある。2017年制作 劇場公開2019年3月
        
監督
ロブ・ライナー1947年3月ニューヨーク市ブロンクス生まれ。

キャスト
ウディ・ハレルソン1961年7月テキサス州ドランド生まれ。
ジェームズ・マースデン1973年9月オクラホマ州生まれ。
ジェシカ・ビール1982年3月ミネソタ州エリー生まれ。
ミラ・ジョヴォヴィッチ1975年12月旧ソ連(ウクライナ)キエフ生まれ。
トミー・リー・ジョーンズ1946年9月テキサス州生まれ。
ロブ・ライナー

「バイス」
 悪徳や邪悪を意味するバイスと副・次・代理を意味するバイスがある。この映画の場合、副大統領の意とともに悪徳も内包するから面白い。

 その主人公は、ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領を務めたディック・チェイニーなのだ。酔っ払い運転で捕まるくらいのだらしない男だったが、ドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)の言葉に心酔して政界に係ったのがそもそもの始まり。そしてディックの尻を叩き続けるのが妻リン(エイミー・アダムス)だ。

 男は家族を食わせていると思っているかもしれないが、実態は女(妻)に操られているに過ぎない。可哀相にハツカネズミのようにくるくると回る檻を止められないのだ。

 そのためには、大統領選に出馬するブッシュに副大統領の権限の拡大を約束させる必要があった。まんまと成功して、イラクに大量破壊兵器が無いにも係わらず「有る」と言い張りイラク戦争に突入した。

 この点をインタビューで突っ込まれてどう答えたか。
問「国民の3分の2がイラク戦争はムダだと、アメリカ人とイラク人の命を犠牲にする価値があるのかと」
答「だから?」
問「国民の声に耳を貸しませんか?」
答「ああ、それでは踏み外してしまう。進むべき道を。感じているとも私を責める声も非難の声も、だが私は平気だ。愛されたきゃ映画スターになれ。世界は見ての通りだ。この現実に対処せねば、世界には怪物がいる。我々は見た。3000人もの罪もない人々が、奴ら怪物によって焼かれ死ぬのを、なのに非難か」開き直るチェイニー。

 確かにアメリカは攻撃された。しかし、嘘までついて始めたイラク戦争で米兵の死者4550人。2001年以降、米兵の自殺率31%上昇。イラク戦争によるイラクの民間人の死者60万人以上。イスラム国による死者推定15万人。シリアとイラクでは、テロによる民間人の死者2000人以上というのがエンディングにある。これをどう考える? 戦争は必要悪かもしれないが、あまりにも犠牲が多すぎる。2018年制作 劇場公開2019年4月
   
監督
アダム・マッケイ1968年4月ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。

キャスト
クリスチャン・ベイル1974年1月イギリス、ウェールズ生まれ。2010年「ザ・ファイター」でアカデミー賞助演男優賞受賞。

エイミー・アダムス1974年8月生まれでコロラド州キャッスルロックで育つ。

スティーヴ・カレル1962年8月マサチュウーセッツ州生まれ。

サム・ロックウェル1968年11月カリフォルニア州生まれ。2017年「スリー・ビルボード」でアカデミー賞助演男優賞受賞。

コメント (1)
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