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読書 スー・グラフトン「ロリ・マドンナ戦争」

2010-06-21 10:35:58 | 

           
 1960年代のテネシー州の片田舎。フェザー家とガッシャル家の確執を冷たい秋の風景と冷たいバイオレンスに包まれて描かれる。家長としての存在を冷酷に示す両家の父親像は1960年代というよりも100年も遡った1860年代を彷彿とさせる。命令は絶対であり反抗は許されない。違反者は死ぬ苦しみを味わう。
 ライフル銃やショットガン、拳銃が、粗末な小屋と家族を守る。長く続く両家の諍い。路傍を歩いていたロリ・マドンナをフェザー家の男たちが拉致する。このロリ・マドンナをガッシャル家の娘と思い込んだ結果だった。
 フェザー家には、五人の息子がいる。ガッシャル家には、三人の息子と一人の娘がいる。ロリ・マドンナを挟んで両家の人間ドラマが展開される。人の命も失われていく。
 アルファベットのAから始まるキンジー・ミルホーン・シリーズで成功を収めたスー・グラフトンの別の顔が楽しめる。もともとスー・グラフトンは、テレビ映画の脚本を書いていたようである。この作品は、スー・グラフトン29歳のときのもので、丁寧な人物造形や仕草、風景の描写が厚みを加えている。
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