
製薬会社のセールマン、キップ・ドーソンは宇宙旅行の懸賞募集に当選して、キャプテンのビル・キャンベルとともに宇宙空間に達した。
狭い宇宙船のコックピットには何人かの同乗者がいる筈だったが、それぞれの事情でコックピット内には二人の人間しかいない。
それもつかの間で、宇宙の塵が高速で粘着性の防護壁を突き破り、ビルの額を穿ち後方の機械室を破壊する。それによって宇宙船と地球との通信が不可能になる。 さあ、困った! キップは小型のセスナ機の操縦とこのミッション参加で少しシュミレーションをしたに過ぎない未熟な飛行技術しか持ち合わせていない。しかも、五日間の酸素を保有しているだけだった。
シチュエーションは完璧にスリルとサスペンスに満ち満ちているが、今ひとつ没入できなかった。こういう題材は、映像向きで文章での表現に限界があるのだろうと思ってしまう。
未熟な飛行経験しかないキップが地球に帰還する場面はいともやすやすと、といった感じでスリルを味わえなかった。読んでいてたびたび眠気に襲われたので印象に残らなかった。
著者は、テキサス生まれ。空軍のパイロットとしてヴェトナム戦争に従軍、湾岸戦争でもC-141輸送機を操縦した。旅客機の機長も長年務めている。弁護士の資格を持ち、航空安全問題の専門家として新聞・ラジオ、テレビに頻繁に登場している。