MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

肺がんサバイバー

2016-04-20 21:19:33 | 通訳者のつぶやき
がん患者さんの通訳につくと、
長いつきあいになります。

治療も生活も生き方も仕事とのかかわり方も
みなさんそれぞれ違います。

今までは家族がいて、
患者と家族にきちんと通訳をつけて説明することで
どうしたいかということを決めることが多かったのですが、
最近は、患者以外にキーマンとなる家族がいないというケースも
少しずつ増えてきています。

母国には連絡したくない。
国に帰りたくない。
日本で治療したい。

バブルの終わりころ、
働き盛りで日本にやってきて
ずっと働き続けていた人が人生の半分を過ごした日本で
治療を受けたいという思いをもつのは不思議なことではないと思います。

海外では治療について様々な選択肢を出してもらって
自分で決めるのが一般的といわれています。
医師の説明は受けるけれど、
その選択肢の中から自分で決めるいうのは
日本人には少し苦手かも知れません。

最近では
拠点病院にがん専門相談窓口があって
看護師や社会福祉士といった専門職が
違った角度から患者に寄り添ってくれます。
とても心強い存在です。

私たち通訳者は
こうした場面では治療したり、相談にのったりはできません。
情報を正確に伝え、患者の希望をきちんとつなぐ。
文化の違いを埋めていくだけです。

ただ、治療方針を決める患者さんの選択に
心のなかはざわざわしても、
こういう生き方もあるのだなと思います。

先日、ETV特集「肺がんサバイバー~余命宣告から6年 命の記録~」を見ました。
映像を記録することが仕事の長谷川さんが
ご自分の肺がんの闘病生活を6年にわたって記録しています。
薬の名前、治療法・・・聞いたことのある単語もでてきます。

時には、医師のアドバイスを聞かない、
自分で納得がいくまで病院を回る、
外科手術をする、
自分で患者団体を立ち上げ、学会で請願をだす。
その前向きな闘病はある意味、誰でもできるものではないと思います。

末期がんだったAさんが
緩和ケアをすすめる医師に本気で怒っていたこと、
主治医をかえる通訳をしたことを思い出しながら見ました。

今週末、再放送があります。
深夜ですが、見逃した方は是非見てください。

ETV特集「肺がんサバイバー~余命宣告から6年 命の記録~」
4月23日(土)午前0時00分~午前1時00分
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259534/


金曜日の夜です。