MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

五感で聴く

2011-07-18 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳をしていて、
「聴く」という行動が最も重要だということは理解していますが、
意外と耳に入ってくる言葉以外の情報が
大切だということは理解されていないと感じることがあります。

通常、コミュニケーションは言語のみで行われているわけではありません。
五感といわれる視覚、聴覚、嗅覚、触覚なども使っています。

相談員として話をしているときには、
その人の服装(おしゃれかどうかでなく乱れなど)を観察したり、
顔色や元気の様子、目線や癖や症状などを観察したりしています。
向き合っていると、その人のにおいも伝わります。
生活が荒れてくるとそのにおいが変わってくることもあります。
それも話をする時の情報の一部として加えられています。
触れるという意味ではあいさつで握手するときにも多くの情報を得ます。

人とのコミュニケーションには
無意識のうちに五感を使っているなと感じます。

電話通訳ではこれがありません。
こうした情報にすべてふたをしたうえで通訳をしているので、
面談や同行通訳よりかなり難易度が上がります。

見えないものは想像力を働かせて向き合いますが、
間違いがあっては困るので、
確認をしながらすすめていきます。
せめてスカイプなら、視覚は確保できるのですが・・・。

面談通訳の場合は、
私も含めて通訳者は「眼」をよく使います。
通訳者の言外の言葉は「眼」で伝えることが多いのです。
不本意な言葉を医療者が伝えたとき、
私は同意しない!という抵抗は眼でします。
通訳はきちんと訳さなければならないので、
言葉の中で抵抗できないのですが、
眼で「私はそうは思わないぞ!」と訴えるのです。
(たいていの話者はそれを感じ取ってくれますけど)
電話の場合はこの眼の表情というものも使えない。
電話通訳には制約が多いのです。

でも、外国人患者さんがいるのは
都会の通訳のいける病院ばかりではありません。
私の活動している兵庫県も南北に広いため、
電話での通訳を使うことが多いのです。
インフルエンザやSARSの時も電話通訳に切り替えましたし、
医療通訳において電話通訳を併用しなければいけないのは、
今後の医療通訳者育成を考えるときに忘れてはならない視点だと思います。