MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

今必要な医療通訳

2011-06-06 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
私がスペイン語相談員の仕事を始めたのは1993年です。
時はバブルの終わりかけ。
1990年の入管法改正によって
南米日系3世やその家族に「定住者」の在留資格があたえられることになりました。
この「定住者」の資格には就労制限がなく単純労働が可能でしたので、
まだ社会情勢が不安定だった中南米からたくさんの日系人が出稼ぎにやってきました。

確かに当時は「出稼ぎ」という言葉が正しかったと思います。
日本社会への定着よりもまずは仕事。
若い労働者が単身言葉もわからない国にやってきて、
働きます。

たいていの人がブローカーと呼ばれる
外国人専門の派遣会社などで雇用されていました。

労災で指を落としたり、
病気になったら多くの人が
帰国という選択肢を選びました。

あれから20年。
南米日系人はすっかり日本社会の一員となりました。
日本への定住を選んだ人も多いです。

20年たったということは
20年、年をとったということです。
それまで働きづめで体を酷使していた人たちも
一息ついたらいろいろ体に悪いところが出てきたとか、
慢性疾患を我慢してきたのが悪化したとか
そういう受診が増えています。

ただ、20年前と違うのは、
病気の内容が複雑化していることと
彼らの日本語が確実に上達していること!
日常会話程度の通訳なら、
自分たちの日本語のほうがずっと通じます。
だから医療通訳を求める声の中に、
「自分の日本語レベルよりはるかに上の通訳者」
を求めるのが当たり前になってきています。
または「わざわざ交通費を出す価値のある通訳者」
「日本の病院のことも知っていて交渉もできる人」
という付加価値を求めます。

日本人が考えている
日常会話の通訳ができる通訳者では
すでに外国人患者の要求にこたえられないレベルになっているのです。

少なくともスペイン語・ポルトガル語はそうです。
だから、病院が求めるとにかく言葉ができる人ならよいというのは
患者が求める医療通訳の需要にはあっていません。
医療通訳を育成するにしても、プロレベルが必要です。
最近、つくづくそのマッチングギャップに苦労していて、
国際交流協会などの通訳ボランティアも
司法分野と医療分野を除くとしている団体が増えています。

こうした現実について、あなたはどう思いますか?