MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

不安な日々

2009-01-14 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
★先週末、第18回びわ湖国際医療フォーラムがありました。
12演題(うち6題が在住外国人関連)の発表があり、
様々な立場の方々の意見を聞くことができました。
私も「ネイティブ通訳者の重要性」というテーマで発表しました。
発表演題の中で特に興味深かったのは
検査現場の会話集を手がけられた診療放射線技師の方の
現場の説明と訳文の違いというところです。

★たしかに検査現場では、
「足の下に枕をいれますね」という言葉を使います。
ただ、これを文字化すると、
足の下なのか、足の裏なのか、そもそも膝の裏でないのか・・・と
文字ではどう訳していいのかわからなくなります。
言葉はその状況を共通認識とした上で発するものですから、
そこに翻訳文を使うのは、なかなか難しいかもしれませんね。
医療通訳の場合、正確性はもちろんですが相手に伝わることがより重要です。
そのために専門用語の羅列ではなく、伝わる言葉で解読することもあります。

★日曜日、MEDINTで5月に引き続きローチェ多恵子さんに
通訳トレーニングをしていただきました。
その中に「サマリー(要約)」トレーニングがありました。
それは「足すのでも引くのでもなく、要約する」という技術です。
大切なものを残して必要のないものは除いて伝える。
確かにいい澱みや不確実・非鮮明な情報に関しては、
伝えられると逆に混乱してしまうことがあります。
その場合、通訳者は要約をします。
ただし、この要約は医療知識を持ち、
正しい判断をできる医療通訳者にしかできません。
医療通訳初心者が勝手に行うことのできるものではありません。
ここでも、伝える技術、通じるコミュニケーションについて教えられました。

★ところで、日系労働者の解雇の現実はたぶん皆さんが想像している以上です。
年末年始にかけてひどいデマが日本中を飛び交いました。
「一度日本から離れると在職証明書がないと再入国できない」とか
「仕事のない外国人に再入国許可を出さない」とか。
年末年始は離れた家族や友人と会ったり連絡したりする上に
公的な窓口はしまっていて確認ができません。
なので、すごい勢いでこのうわさが駆け巡りました。
もちろん入国管理局に連絡してそのような変更がないことは確認しましたが、
常に雇用の調整弁として使われてきた人々は、
景気の悪化の影響が自分たちにかかってくることを経験上知っています。
今回の景気の悪化は男性労働者にも及んでいるためメディアも取り上げますが、
外国人労働者や障害をもつ労働者、女性や高齢者はこうした事態のずっと前から不安を抱きつづけているのです。

★ほぼ毎日定額給付金はいつでるかという質問を受けますが、
去年までは「taroだけが知っている」と答えていたのですが、
最近は「taroもわからない」と答えています。
日本の政治はどこに行くのでしょう。