MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

子どもの通訳

2008-10-15 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
A産婦人科から電話がかかってきました。
電話でもいいからという通訳依頼です。

病気の問診ではなく、産褥指導だったので、
手元のパンフレットを見ながら、
通訳していきました。

病院「助かりました。
   実はこの方には通訳がついていたのですが・・・。」
通訳「その通訳はどうされたのですか?」
病院「通訳は13歳の男の子なのです。
   患者の子どもさんなんですが、
   さすがに13歳の男の子に避妊やらおりものやらの通訳を依頼できなくて」
通訳「当たり前です!というかそのことに気づいてくださってよかったです。」

私たち通訳者はどんな言葉も訳すように訓練されます。
司法や医療といったコミュニティ通訳の中には、
日常の中では使わないような単語や用語もでてきますし
普段はあまり口にしない性的な単語や身体の名称もあります。
そのたびに照れたり恥ずかしがったりしていては仕事になりません。
もちろん泥沼離婚の裁判や虐待の聞き取りなどは
口にするのもはばかられるような言葉を訳さねばならないこともあります。
でも、それは職業としてのものですから、
第3者としての目で平静を保つように自分に言い聞かせます。
(本当はすごく動揺しているんですけど)

ただ通訳者ではなく家族や知り合いについてきた子どもが、
産褥指導の通訳というのはどうなんだろうと思うと、
わたしならいやだなあと思います。
男の子だけでなく女の子でも
母親や大人の性的な姿や身体のことは、あまり知りたくないと思うでしょう。

でも、高校の先生たちと話していると、
子どもたちは家族や親戚の医療通訳をしているということを聞きます。
日本にはまだ医療通訳が制度化されている地域が少なく、
誰でも使える状態にはなっていません。
そんな中でも、少しずつ医療通訳は増えています。
細い糸ですができるだけその糸をたどってもらい、
病院の方には子どもたちの人権への配慮をお願いしたいと思っています。