MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

待合室で

2008-04-23 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
待合室で、通訳者と患者が世間話をします。
この世間話をするかどうかについては通訳者の間でも是非両方の意見があるのですが、私はその時間を積極的にご本人の語彙の収集につかいます。

たとえば

「乳房のレントゲンはとりましたか?」

「マンモグラフィーのことですか?」

この会話で、これからは「マンモグラフィー」という言葉について、ご本人の中に認識があるという前提でお話が出来ます。

また、ご本人の言葉の使い方や話し方のクセなども、待合室の世間話の中から拾っていきます。語彙は、国籍だけではなくその人の教育レベルや生活環境にも影響されていますし、翻訳でなく日本語のほうがいい人もあります。

たとえば「ゆび」とか「しごと」とかは日本語で、
それ以外はスペイン語になったりするひともいます。

「Me corto ゆび en しごと」 とか・・・(苦笑)

その際には、指を表現するとき、できるだけ「dedo」ではなく「ゆび」を使うことを暗黙の了解事項とすることもあります。

特に在日年数の長い方は、使い慣れている日本語が混ざることが多く、その場合はできるだけ、ご本人の表現に近いものを使うようにします。
ただ、時々間違って使っていることもあるので、それは要注意です。
ありえませんが、「ゆび」といいながら「くび」を触ったりされても困るので・・。

待合室には積極的な情報収集といういい面とともに、少し困ったこともあります。フレンドリーな雰囲気ができあがり、患者がリラックスするのはいいのですが、通訳者の携帯番号や住んでいるところ、家族状況などの個人情報に話題が及ぶことがあるのです。
人それぞれですが、その場合は、自分がどうするかは事前に決めておいたほうがいいと思います。
「携帯番号を教える」と言うことは、かけてきてもいいですよということになるので、その人がかけてきたり、コミュニティの中に番号が回っては困るという人は伝えるべきではありません。

司法通訳などでは、通訳者と被告人が二人きりになったりすると席を離れるなどして、世間話をしないようにします。通訳人にアドバイスを求めたり、通訳人を脅したり、個人的な頼みごとをする被告人もいるので、それを避けるためです。

待合室を医療通訳にとってプラスになる場所として活用したいものです。