MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

インフォームドコンセントはどう訳す

2006-10-18 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
う~ん。頭が回らない・・・。
簡単な単語がでてこない~ってことありませんか?
通訳者にとって体調管理は重要です。頭が回らない状態では、いい訳語はでてきません。「心電図」とか「尿酸」とか基本的な単語を「あ~っ、あれ」みたいになってしまうと最悪です。もちろん、そんな時でも、辞書で確認したり、ありったけの単語で連想ゲームのように言葉をつなげて説明するのですが、訳し終わった後はもう自己嫌悪の塊みたいになってしまいます。
でも、そういう苦労した単語はその思い出とともに意外とその後も忘れないものなんです。

頭が回らない状態ではありませんが、あまりにも当たり前すぎて訳すことすら考えなかった単語というものがあります。
先日、講座の中でスペイン語の通訳者と「インフォームドコンセント」ってどう訳すんだっけという話になりました。
そういえば、インフォームドコンセント自身をスペイン語に訳したことはありませんでした。「consentimiento informado」という訳語はあるのですが、いわゆる「説明」にもう少し意味を含ませた言葉で、その文化的背景を理解する人でなければこの単語は有効ではないと思います。つまり、直訳の言葉はあってもそれがすべての文化圏の人に意味とともに伝わるとは限らないのです。
判決で「執行猶予」という言葉が出てきます。執行猶予の制度のない国の人は、この言葉にとても戸惑います。表情を見ていると「ああ、わかってないなあ」と思います。いつも説明をつけ加えたい気持ちになるのですが、裁判所には直訳の言葉で訳して本人が理解できないといえば、もう少し平易な言葉でいい直しをするので、そのまま訳してくださいといわれます。
もしかしたら、インフォームドコンセントという言葉もその運用に近いものがあるかもしれません。
でも良く考えたら、インフォームドコンセントという言葉を正確に理解している日本人自身もそんなに多くはないのではないかと思います。もう少し平易な表現が普及すればなあと、勉強不足を棚にあげて思ってしまう今日この頃です。