Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『ものだま探偵団2 駅のふしぎな伝言版』

2015-07-16 16:04:12 | 読書。
読書。
『ものだま探偵団2 駅のふしぎな伝言版』 ほしおさなえ くまおり純:絵
を読んだ。

「徳間書店の児童書 Book For Children」と帯に書かれていました。
「小学校中・高学年から」らしいですが、なめてはいけない。
おとなも十分楽しめるうえに、感動までしてしまった・・・。
まとまりもいいし、肝心のところの展開は読めないまま進んでいくし、
冗長なところはないし、完成度高いなぁと思って読んでいました。

ものだまというのは、ものに宿る魂のようなもので、
この本の舞台となっている坂木町にたくさんいるようなんです。
そして、そのものだまの声をきけるのは限られた人々ではありますが、
やはりこの坂木町という土地にいると聞こえるようになる人がいる。
主人公の七子も相棒の鳥羽も、このものだまと話ができるんです。

その坂木町の駅で待ち合わせをする人が、もの忘れ病にかかって、
いったいなんのために駅にいるのかわからなくなる事件が頻発するのが、
この物語の始まり。
七子と鳥羽がこのなぞについて調査していきます。

僕が子どものころに読んだ物語だと、『ズッコケ三人組』だとか、
子供向けの落語の本だとかでしたが、
そのころに夢中になった記憶が甦るような読書になりました。
児童書だから子どもだましと思ってはいけない。
稚拙なんじゃないかとか勘ぐってはいけない。
立派に構築されて、細かいところは勉強して記述されている、
ちゃんとした児童「小説」でしたよ。
良質な読書経験が得られる種類の本です。

今回、『2』を読みましたが、いまや『3』も出版されていて、
当たり前ですが『1』もあるわけです。
面白いし、ほかの登場人物との関係性との深まりも期待できるような状態が
キープされていながら(それは長い伏線となっている)『2』は終幕していもするので、
シリーズ化して、ながい読みものになるのかもしれないですね。

ものに魂があるっていう設定、考え方っていいなあと思うのです。
独自に魂が生まれるっていうのがこの本の考えですけれども、
もらったものに贈り主の魂ではなくても、気持ちやら精神性やらが
やどっているっていうマルセル・モースが『贈与論』などで語った考え方に、
僕はなにかしら現代社会の行き詰まりを打破するものがあるのではないかと
考えているので、そういったイメージを近いところで共有できるような
想像力がこの本を読むことでも養えるだろうなと思いました。

子どもたちの夏休みが近いです。
どうだい、きみ、『ものだま探偵団』を夏休みにどうだい?


Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする