拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

悪い人がお好き?(刑事コロンボ、罪と罰、ゲッタウェイ)

2024-06-15 07:55:06 | 小説

ドストエフスキーの「罪と罰」を読むのは二回目。「カラマーゾフの兄弟」はこないだ3回目の完読を果たしたが、考えてみれば、複数回完読したのは「カラマーゾフ」だけ。これでドストエフスキー・ファンと自称するのは看板倒れもいいとこ。「タンホイザーのマーチ」だけでワーグナー・ファンと称するようなものである。

で、今回なんで「罪と罰」を読もうとしたかと言うと、それに出てくる予審判事(刑事みたいなもの)が刑事コロンボに似ている、つうか、刑事コロンボは「罪と罰」の予審判事をモデルにしてできあがったと聞いたから。どれどれ確かめてやらうと思ったわけである。そしたらホントにそっくり。まず犯人の追い込み方。いかにも親しげに全然疑ってない風を装って近づいていって、なかなか本題に入らず(コロンボのように「ウチのかみさん」の話こそしないが)、遠くからチクリチクリと攻めていって犯人の精神を疲弊させるやりくちである。そして「ずんぐり」な風体。さらに「右の手を背中へ回し、左手をひっきりなしにふり回して」ときたら、これはもうコロンボそのものである。

更に「刑事コロンボ」の日本語吹き替えの台詞の雰囲気が「罪と罰」の日本語訳と似ている(「そりゃ、あなた」とか)。私は、予審判事の言葉を脳内でコロンボの声(=小池朝雄さんの声)に置き換えて再生していたがぴったりだった(その際、新シリーズの石田太郎さんの声(小池さんより低くて太い)にならないように注意した。オリジナルの小池さんの声へのオマージュである)。

これははっきり「クロ」である。すなわち、「刑事コロンボ」は「罪と罰」の予審判事をそっくりパクったという「罪」を犯したのである。それに対する「罰」は歴史に残るドラマを作ったという賞賛である。

ところで、「刑事コロンボ」の視聴者は、犯人のトリックを見破って犯人を逮捕するコロンボに拍手喝采を送るのであるが、観客が常に警察・検察の側にいるとは限らない。こないだBSで放送していた映画「ゲッタウェイ」の主人公夫婦は強盗殺人犯である(強盗の共同正犯の一人が殺人を犯すと、共同正犯全員が強盗殺人罪になる)。強取した金は自分たちがせしめたから義賊でもなんでもない。だが、警察の追跡を振り切りメキシコに逃げおうせたとき、観客は「あー、よかった」と胸をなで下ろすのはなぜだろう。主人公がスティーヴ・マックイーンだからか?ダブル・スタンダードと言わざるを得ない。

同様に、「不倫は文化だ」と言った俳優をさんざっぱら叩いた芸能マスコミが、「マディソン郡の橋」のことはいい映画だ言ってほめる。これだってダブル・スタンダードである。因みに、放送開始直後の「サンデー・モーニング」に当初出演されていた某氏(某有名人のお兄様であることを当初隠していたが直にばれた)は当該映画について「不倫の話でしょ?」と言って眉をひそめていた。このくらい首尾一貫して初めて「不倫は文化だ」を非難できるのだと思う。因みに、警察・検察の人は「ゲッタウェイ」を見てスティーヴ・マックイーンに「捕まれ」と思うのだろうか。

なお、「刑事コロンボ」だって、カーク船長(ウィリアム・シャトナー)やミスター・スポック(レナード・ニモイ)が犯人役で登場した回は、特に「スター・トレック」のファンは犯人を応援したかもしれない。



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