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あらよっと!

2009年08月16日 | 読書日記 その6
『「空気」と「世間」』  鴻上尚史著  講談社現代新書

先日、公共放送で夏目漱石のイギリス留学の時の話題がありました。
イギリスで引きこもり状態になり、部屋から一歩も出ることもできなくなった漱石ですが、イギリスを恨むでもなく、日本を美化するでもなく、シーソーの真ん中でバランスをとることを選択しました。
(こうした経験があったからこそ、夏目漱石は夏目漱石になりえたというのが、識者たちの一致した意見です)

この本の中でも紹介されていますが、「世間」について数多くの著作がある阿部謹也氏の本の中に、夏目漱石は世間を熟知していたという内容の記述がありました。
世間を熟知していれば、バランスをとることも可能だということかもしれません。

著者は劇団「第3舞台」を主宰している、作家、演出家でもあります。
以前、ある本の中に著者は高いところに住めない、といったことが書かれてありました。
理由は、高いところにいると衝動的に飛び下りたくなるから、だそうです。
ですから1階にしか住めないそうなのですが、こうしたことも熟知していれば最悪の結果から回避できる、ということかもしれません。

「世間」というのは両刃の刃で、その流れにそって生きれば何も考えないで生きることもできる。
志しがあれば、逆流に向かって歩かなければならず、まともに歩いていればぶつかりあって上手く進めない。

ならば、マイケル・ジャクソンのように踊りながら、歌いながら、かわしながら、ムーンウオークしながら逆流してもいいじゃないか。
「あらよっと」と飄々として・・・

最後に著者はこう記します。
「壊れかけた「世間」の力を、幽霊のように大きく見ては損だと僕は思っています。
 激しい力を持っているとしても、それは、かつての「世間」とは違うんだぞと、相手を見極める必要があると思っているのです。
 そして、「世間」は壊れていると書き、言い続けることで、本当に「世間」の力は弱まっていくだろうと思っているのです。
 この本は、いじめに苦しんでいる中学生にまで届いて欲しいと思って書きました。
 ・・・・
 あなたが大人で、この国の息苦しさに苦しむ子供達と出会ったら、そして、この本に書かれてあることにあなたが共感してくれたら、どうか、子供達にも分かりやすい言葉でこの本の内容を伝えて欲しいと願っています。
 「差別的で排他的」な「世間」から弾き飛ばされないように、一日何十通ものメールを交換する必要なんかないんだと、「順番に来るいじめ」に怯えている少女に伝えて欲しいと思うのです。」


コメント
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