「やさしい文章なんてないんです。
分かろうとすれば難しいんです。
小林という男が出てくるまで読んでもらいたい」
「苦労する、分かるということは同じことですから」
「人間を分かりやすいように観察してはいけないんです。
みんな個性を持った、たった一人のものなんです」
「文字なき世は物覚えが良かったんです。便利になり過ぎてそういったものを削ぎ落としてしまったんです(脚色あり)」
「精神とは記憶なんです。それが生きるということなんです(脚色あり)」
「テレビ、新聞、ラジオなど託して安心していると精神を使わなくなる。
ものはよく知っていても智恵は働かないんです」
「学問は問うこと、学校の教えは答えを探しているだけなんです。
問うことが生きるということなんです」
「諸君が生きている時は世間は認めてくれないよ。
ソクラテスの時代から、人生とはそんなもんなんです」
「昔の学者は、幸福について答えを用意してくれたんです(脚色あり)」
「学問とは幸か不幸を問うこと、人にとって一番大事なことを現代では教えてくれない。
人が不幸であっていいわけではないじゃないか(脚色あり)」
「想像力がなければ、この世を渡っていくかいはないわな。
冷静な眼(まなこ)で生きたってなんになりますか。
これが本居宣長の思想なんです。」
「本居宣長さんは知識人が嫌いなんです(たぶん、そんなことで威張っているの奴が嫌いなんだと思う)」
「宣長さんは、もともとは小児科のお医者さんなんです。
35年間、古事記を研究して自費で本を出版しようとしたんです。(生前には出版されなかった?)」
以上、小林秀雄講演からです。
僕にとってこの講演は「幸福論」でした。
人はいかに生きたら幸福になれるのか、そんな答えがあったように思います。
何十年も前の講演ですが、根底には「人はなぜ幸福になろうとしないのか」があったと思います。
そういった意味で映画監督黒澤明に通じるものがありました。