真夏の広島は暑かった。
あの夏、僕は九州から渡り瀬戸内沿岸を自転車で走り、広島にたどり着いた。
ちょうど原爆の写真展が開催されていた。
見物人は外国の人が多く、真っ黒に日焼けした僕は、なんとなく後ろめたさを感じはじめていた。
しかし写真を見ていると、そんな後ろめたさは吹き飛んでしまう。
人殺しの悲惨さ・・ボタンひとつで廃虚にしてしまう偽りの正義・・
見終ると僕は炎天下の中、灼熱の砂漠を思わせるアスファルトの上を自転車を走らせる。
喉の渇きや、この暑さからどうやって逃げようか、そのことばかりを考えていた。
原爆にあわれた人達は、掻きむしるような喉の渇きを汚染された黒い雨で潤わそうとした。
その時の僕は少ないなりのお金で喉を潤すことができた。
ヒロシマを思う時、あの時の気持ちが蘇る。