今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

027 小樽(北海道)・・・暮れなずむ雪の運河でMay I help you?

2007-04-02 18:07:54 | 北海道

「北海道格安ツアー」について、函館のことを書いた(2007年1月13日付け)まま放置していたので、以下、その顛末を続ける。函館のホテルの、畳表が磨り減ってささくれ立っている大広間での朝食を済ますと、小樽経由札幌という長距離バスツアーとなった。説明書通りではあるのだが、ほぼ終日バスで移動するという強行軍である。行程にいささか無理がある。「格安」はやはり、「格安」の理由があるらしい。

渡島(おしま)半島をひたすら北上する。函館を出てまもなく、国定公園の大沼に立ち寄る。幻想的な姿をした駒ケ岳が、薄い水色を掃いたような空に浮かび、確かに美しい風景であった。バスはその駒ケ岳をぐるりと巡って内浦湾を望み、右手に海を眺めながら北上を続けた。

湾の出口のような位置にある町が「森」といい、駅弁「イカ飯」で名高い町のようだった。函館本線の鉄路が見え隠れし、荒涼とした原野が続く。「一面、枯れ木のように見えるのはカシワの木でございます。カシワの葉は新しい葉が芽吹くまで枝から落ちることはなく・・・」とガイドは今日も饒舌である。

バスはそうした原野の中にぽつんと建つドライブインのような施設で停まった。昼食、ショッピング、お手洗いをどうぞということだが、他には見渡す限り何もない国道端。何としてもここで金を使わせたいらしい。業者からのリベートが計算されているのだろう、これも「格安」の秘密か。われわれは大沼公園で買ったゴマ団子を、駐車場の陽だまりでほおばった。穏やかな天候に恵まれての、商魂に対するささやかな抵抗である。

バスはしだいに高度を上げ、洞爺湖畔に到着した。さすがに積雪深く、樹相もエゾマツ、ヒバなどが増えてきて、北海道だという気分になる。雪の下は広大な畑地なのだろう、丘陵をいくつも越えながら、この大地を切り開いた開拓農民の苦労に思いをはせる。

中山峠を越え、定山渓を素通りして小樽に到着したころには、冬の日はすっかり暮れていた。スケジュールが遅れているので、小樽滞在は40分だという。詐欺に遭ったような心持だが、みやげ物店に案内される乗客を尻目に、小樽は初めてのわがパートナーを運河に案内する。せめてもの小樽らしさを、という思いからだ。

小樽はいつも「札幌に来たついで」に寄る街なので、中心部を垣間見たことしかない。それもなぜか夕暮れ時となるため、私の中には「暮れなずむ街」といった印象が染み付いてしまっている。だがそれはそれで、独特の風情として記憶に残り、時折り懐かしく思い出すことになる。今回はそこに、雪の暮れ時が加わったわけである。

運河に向かってカメラを構えていると「May I help you?」と声がした。人懐っこい顔をしたお嬢さんがシャッターを押してくれるという。どうやらアジアからの観光カップルらしい。「Thank you! Where do you come from?」「from Hong Kong!」。雪の北海道は、南方の人たちには物珍しい観光地なのだろう。
        
札幌のホテルに到着し、チェックインを済ますとそのままバスで大通り公園まで運ばれ、そこでツアーは解散となった。あとは明夜、千歳空港で帰りのチケットを受け取るだけである。テレビ塔をバックに全員の記念写真をという誘いは断って、二人だけの「さっぽろホワイトイルミネーション」を楽しむ。テレビ塔の時計がちょうど「7:00」に切り替わった。(2006.12.22)
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