今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

1004 山下(神奈川県)ガンダムはおじけることなく寒立す

2022-01-02 09:28:30 | 埼玉・神奈川
強い北風になぶられた波が、飛沫を浴びせようと打ち寄せて来る。先ほどまでちらほらと、雪が舞うほどの冷え込みなのだ。それでもじっと佇む二人は、何を見ているのだろう。視線の先をたどると、ガンダムがいた! テレビアニメのヒーロー・機動戦士ガンダムの「実物大」が造られたと聞いてはいたが、あれがそれかと目を凝らす。背景のデッキに並ぶ見物客との比較から、その巨大さがわかる。2021年の大晦日。横浜・山下公園の岸壁で凍える。



コロナを引きずったまま明け、なおも引きずったまま暮れる2021年である。ようやく第5波が収束したかと見えたパンデミックは、オミクロンという名の悪漢登場で、またまた世界中が混乱している。医療従事者はもとより、働く世代は生活習慣の変更を迫られ、何かと苦労しているのだろうけれど、世間のしがらみから解き放たれた老人にとっても、パンデミックは貴重このうえない「残り時間」を刻々と削って行く、罪深い災いなのである。



だからと言って、世の片隅でひっそり余生を送る年寄りが愚痴をこぼしてはみっともないとは思うのだけれど、孫が小学校に入学したというのに、もう足かけ2年、会えないでいるのは、いくら温厚で知られる私でも堪忍袋の緒が切れるというものだ。だから「私が横浜に出向くから、外に連れ出し、美味しいものを食べさせたい」と次男家を誘ってみた。すると「それならウチも行くよ」と長男家も乗ってきた。これは老獪なジジイの「みんなに会いたい」がための策謀なのである。



テレビでは専門家が「人の動きが多くなる季節です。くれぐれも油断しないように」と繰り返し警告している。従っていささかの後ろめたさは覚えるものの、一族8人で中華街の個室を予約、2年越しのお年玉を配って息災を祝うことができた。中華街は大晦日のせいか人出は多くなく、広々とした個室は孫二人がはしゃぎまわっても叱られることはなかった。爺やは娘に睨まれながらも紹興酒をお代わりし、嬉しそうに顔を染めて呑気なものだ。



鉄腕アトムと鉄人28号世代の年寄りから見れば、ガンダムは全く異世代のヒーローである。どこに惹かれるのか、息子たちには永遠の憧れらしい。それを受け継ぐ7歳の男の子も、寒風に耐えながらガンダムが動き出すのを待っている。5歳の孫娘は「あんなの来たら怖い」とパパにしがみついて、「東京まで来るのは無理だよね」などと都合よく解釈している。男子と女子の好みが幼児期から異なるのは何故かは、人間学の永遠のテーマらしい。



アニメの中のヒーローなのに「実物大」とは、などと考えだすとややこしくなるが、高さ18メートルというそっくりさんはファンを惹きつけるのだろう、間近でを見られる「GUNDAM FACTORY」には行列ができている。そこは山下埠頭の付け根部分だ。横浜市長選で論議を呼んだ「統合型リゾート施設」の候補地とされた土地だ。カジノという異形の世界が進出してくるより、ガンダムの方が平和的だろう。横浜市民は真っ当な判断を下した。



2022年は「コロナ最後の年」になるだろうか。人流も経済も、地球規模の行き来が復活する、そんな日が年内に来るだろうか。禍いはコロナだけではない。ユーラシアの東と西で、何やらきな臭い緊張が高まっている。その元を突き詰めれば、いずれも「国家悪」に行き着く。「国は生存の基本」などという考えは、一部に都合のいい幻想なのだと論証したいところだが、とりあえずこの寒風から逃れる必要がある。地下鉄の駅に駆け込む。(2021.12.31)












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