職員室通信・600字の教育学

小高進の職員室通信 ①教育コミュニティ編 ②教師の授業修業編 ③日常行事編 ④主任会トピックス編 ⑤あれこれ特集記事編

タバコ蘭の香り→くちびるのカタチ……この蘇り……再生……復活……ぶりかえし

2009-06-27 17:30:37 | Weblog

★根城城趾の道にて シャクヤクの花


◆今、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』を読んでいる。(正しくは、読みはじめたところだ。)

 第1篇「スワン家のほうへ」
 第2篇「花咲く乙女たちのかげに」
 第3篇「ゲルマントの方」
 第4篇「ソドムとゴモラ」
 第5篇「囚われの女」
 第6篇「逃げさる女」
 第7篇「見出された時」
 全13巻、集英社発行。

 購入したのは、1996、7年頃だと思う。
 過去の記述に検索をかけたら、教え子宛のはがきに登場した。

〈前略 ステキなお葉書ありがとう。
 環境情報学部については、以前、江藤淳先生からお話をうかがったことがあります。
 江藤先生は今でも学部にいらっしゃるのでしょうか。
 機会があれば、先生のご様子、教えてください。
 上の写真……書棚の右上が、現在、予約購入中の『失われた時を求めて』。
 右手前がこの文字と写真を処理しているパソコン。
 左側はもう何年も開けたことのない窓。
 窓の外に学生時代の空があると信じていたいからです。
 またお便りください。お元気で。早々〉

 夜、だれもいなくなった職員室(鮫中)の隅のパソコンに向かい、単語を打ち込みながら、ディスプレイの向こう側に、無限に広がっている宇宙を感じていた頃だ。
 「今は忙しくて、『失われて時を求めて』は読むことはできないけれど、時間に余裕ができたら……」と思っていたのだろう。


◆『失われた時を求めて』は、これとは別に、もう1セットあるはずだが、どこへ行ったのだろうか?
 しばらく見かけない。
 大学時代、研究室の先輩Yさんからもらったもので、たしか新潮文庫で、これも全13冊くらいだったと思う。
 文庫本は見あたらないが、Y先輩の発行した詩集『転位のための序曲』は、今もわたしの手元にある。

 黒いラシャ紙の表紙を開くと、
〈序
 あっ、
 これを手に取ったあなたに、まずお願いがあるのです。詩集を開いたら、第1に目次をみて、自分の好きな題の詩から、ひとつひとつ読んでほしいのです。
 私は完全主義者でも何でもありませんが、他人(ひと)に失望を与えるのがたまらなく悲しいのです。
 せめて、あなたが意志し、択んだ題の詩を読むことによって、責任の一端を私といっしょに背負い込みながら、そうしながら読んでほしいのです。
 何と勝手な注文でしょう。
 でも、そうして読んだ方が、あなたと私が協同でつくる世界が膨らむというものです。〉
 
 とあって、そのあとに、詩の題が、「片恋」「春の歌」「雨夜の感傷」「求愛」「脱落者の愛」「夜の感想」「記憶による貧困投影」「冬の午後」「背徳への招待」……と、約20篇ほど並んでいる。

 この詩集をもらったとき、たぶんわたしはどの詩も読まなかったのではないか?
 で、今、読むとすれば、「記憶による貧困投影」か「冬の午後」だろうか?……と思いつつ、今回も(Y先輩、スンマヘン)目は「後記」のほうに移っていった。

〈後記
 意外におめでたい卒業をむかえて、またさらに喜びを重ねて私の詩集を刊行できたことが非常にうれしく、これを刊行するために尽力下さった姉上をはじめ唐崎さんや多くの人達にまず「ありがとう」と言いたいと思います。……(後略)〉

 奥付をみると、「装幀=酒田清造 筆耕=唐崎○△ 印刷=田中隆夫 製本=○△ 限定100部の内第90番」とある。

 先輩は、卒業までに全部さばこうと思って、焦って、わたしにまでくれたのかもしれない(^_^)v。
 そのとき、書棚に並んでいる『失われた時を求めて』を見つけて、「先輩、プルーストじゃないですか!」と言ったら、「これもあげるよ」と全巻くれた。
 先輩と何を話したのか、その内容はほとんど、いや、まったく思い出せないが、40年の時間の層を越えて、先輩が吸っていた蘭というタバコの香りと、けむりをはきだすときのくちびるのカタチが蘇ってきた。


 集英社版『失われた時を求めて』→Y先輩の新潮社文庫『失われた時を求めて』→詩集『転位のための序曲』→タバコ蘭の香り→くちびるのカタチ……この蘇り……再生……復活……ぶりかえし……を、きっと、プルースト現象というんやろね◯0o。(ー。ー)y―~~。

 今、第1巻『スワン家の方へ 1』を読みはじめたところだが、1/3あたりのところに栞がはさんであるから、前回(といっても、いつ頃のことか思い出せないが)は、その1/3あたりで投げ出してしまったのだろう。
 今回は13巻、全部読み切りたい。
 全部読んだら、先輩Yさんの『転位のための序曲』の中味も読んでみよう。

◆きょうは、こういう内容を書くつもりではなかったのだ。
 『失われた時を求めて』の、いわばプルースト現象に絡めて、2009年魂の曲(ペテリス・ヴァスクス「エピソードと終わりなき歌」)→2003年魂の曲(マーラー「大地の歌」)→2003年乱氏とのシンポジウム……と記述するつもりで、記述のメインは「2003年のシンポジウム」だった。
 今度、記述することにする。


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