万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

慰安婦個人請求権問題ー日本統治下の韓国・朝鮮人とユダヤ人は全く違う

2017年06月18日 13時50分04秒 | 国際政治
日韓合意「再交渉に期待」…韓国側が発言後削除
 韓国における文在寅政権の誕生は、同国内で慰安婦合意再交渉の機運を高めているようです。個人請求権問題は”慰安婦”に留まらず戦時徴用にも及ぶ動きも見られますが、90年代以降、韓国は、国際社会において慰安婦被害はユダヤ人に対するホロコーストに匹敵する非人道的行為とする認識を定着させるべく、積極的に国際プロパガンダを展開してきました。しかしながら、日本統治下の韓国・朝鮮人とナチス統治下のユダヤ人の立場は、全く違うのではないかと思うのです。

 韓国側は、戦後におけるドイツのユダヤ人に対する個人補償を取り上げては、日本国は、ドイツに見習うべきと主張してきました。この主張には、戦前の韓国・朝鮮人(当時日本国籍を有した現在の韓国、並びに、北朝鮮の人々)とユダヤ人も共に時の政権から迫害を受け、筆舌に尽くしがたい虐待を受けたとする被害者意識があります。ヒトラー政権下のユダヤ人については、ヒトラーの命令や制定された法律に基づいて、公職追放、財産の没収、強制収容所への収監、強制労働…といった憂き目に遭っており、個人の被害や損害も書類等に基づいて証明することができます。奴隷貿易に携わったり、ペスト流行の一因となったり、さらには第一次世界大戦後の振る舞いなど、ユダヤ人の中には、歴史的には必ずしも純粋な被害者とは言い難く、むしろ加害者の側面を持つ者も少なくはないのですが、公権力の迫害行為によって辛酸を舐めたユダヤ人が多数存在したことは確かなことですし、被害の特定も可能です。

 それでは、日本統治下の朝鮮半島、並びに、日本国内の韓国・朝鮮の人々は、ナチスドイツ時代のユダヤ人と同様に、国家権力による迫害を受けたのでしょうか。事実をつぶさに調べますと、戦前の韓国・朝鮮人の場合は、全く逆であったとしか言いようがないのです。韓国・朝鮮人に対する公職追放の事実はなく、官吏、軍人、警察官など、幅広い分野で朝鮮の人々は公務員として勤務していました(日本国内では選挙で選出された帝国議会議員も存在…)。特に朝鮮半島では韓国・朝鮮人公務員の比率は高く、自治的な要素も見られます。財産没収についても、日本国は、朝鮮半島において近代的な所有制度を確立し、財産権の保障は当然に韓国・朝鮮の人々にも及んでいました。敗戦を機に財産を暴力で奪取されたのは日本人の方です。もちろん、韓国・朝鮮人を捕縛して収容するアウシュヴィッツのような強制収容所も設置されていませんし、当時の状況からすれば虐殺など想像も及ばないことです。国家総動員法に基づく戦時徴用はありましたが無償の強制労働ではなく、国民としての義務は、日本人も日本国籍を有する韓国・朝鮮人も変わりはありませんでした。むしろ、韓国・朝鮮人に対しては徴兵も戦時徴用も日本国よりも時期的に遅れて実施され、一般の日本人よりも優遇されていたと言っても過言ではありません。徴兵されはしたものの、韓国・朝鮮人兵士は、結局は戦場に配属されずして終戦を迎えています。

 どの側面をとりましても、日本統治下の韓国・朝鮮人とナチスドイツ統治下のユダヤ人は、真逆と言えるぐらいに政府による扱いが逆です。韓国政府は、国際プロパガンダに際してユダヤ人の協力を得る、あるいは、ユダヤ人の方法に倣ったのでしょうが、基礎となる事実が違っているのですから、ユダヤ人と自らを同列に並べ、”ドイツと同様に個人補償をせよ”という要求は、根拠なき不当な請求に他なりません(しかも、1965年の日韓請求権協定では日本国側が請求権を政府国民共に放棄する一方で、韓国側には、莫大な支援金が支払われている…)。事実関係を明らかにすれば、日本国に対する国際社会、並びに、韓国側からの批判も止むと予測されるのですが、政治的妥協に終始し、事実説明に後ろ向きな日本国政府にはふがいなさを感じるのです。

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コメント (8)
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