万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「東芝メモリ」売却問題ー経産省主導で何故韓国ライバル企業が入るのか?

2017年06月21日 14時13分29秒 | 国際政治
東芝メモリ売却、「日米韓連合」と優先交渉決定
 東芝問題につきましては、何処か、腑に落ちない点が多すぎます。今般の東芝子会社の半導体メーカーである「東芝メモリ」の売却先についても、報道によりますと「日米韓連合」が優先交渉権を得たそうですが、何故、日米連合に韓国のSKハイニックスを参加させたのか、日本国政府からの説明は何もありません。

 「東芝メモリ」の入札に関して、日本国政府が背後で動いた理由としては、海外への技術流出阻止が指摘されております。同連合の中核に日本国の官民ファンドである産業革新機構が据えられたのも、この説を裏付けています。しかしながら、政府の基本方針に照らしますと、韓国のSKハイニックスの参加は説明が付きません。。「日米韓連合」の一角を成すアメリカのベインキャピタルは投資会社ですが、SKハイニックスは、技術流出や競争法上の問題も生じるライバル会社であるからです。

 SKハイニックスについては、当初、単独入札を模索していましたが、公正取引委員会等、各国の競争当局から承認を得るのは難しいとして、一旦、断念した経緯があります。この経緯からしますと、おそらく、SKハイニックス側には、「東芝メモリ」を買収するだけのメリット、おそらく技術上のメリットがあるのでしょう(東芝メモリのコントローラ技術との指摘もある…)。しかしながら、日本側からしますと、技術の海外流出リスクが伴ってきます。東芝とSKハイニックスと言えば、東芝側が同社を知的財産権の侵害で訴えた因縁の過去があり(東芝研究データ流出事件)、東芝側は巨額の損失を被っています。SKハイニックス側が和解金330億円を支払うことで一先ずは解決していますが、SKハイニックスとしては、今度は出資者となることで、合法的な手段で東芝の技術を入手できるとする目論見があるのかもしれません。鴻海陣営による買収を阻止し、中国への技術流出のリスクが防いだとしても、韓国に漏れてしまうのでは意味がありません。SKハイニックス側の出資額は、それ程高額ではないそうですが(少額であれば他の日本企業からの出資も可能であったはず…)、経産省は、韓国への技術流出を防ぐ何らかの措置を準備しているのでしょうか。(追記22日の報道に拠りますと、SKハイニックスは出資者ではなく融資者の立場にとなり、一先ず、技術流出のリスクは低下したようです。もっとも、日本勢が全体の3分の2を占めるものの、コメントをお寄せくださいました方によりますと、米ベインキャピタルはSKハイニックスから資金提供を受けているとする情報があるそうですので、まだまだ油断はできない状況にあります。)

 また、仮に技術流出を防止できたとしても、SKハイニックスが東芝メモリの内部において株主権を自社に有利に行使する可能性も否定はできません。現在、半導体の世界市場のシェアは、サムスンが他者を引き離して1位であり、SKハイニックスも2位につけています。こうした現状を考慮しますと、SKハイニックスの参加は、半導体市場のさらなる寡占化を招く恐れもあるのです。

 何れにしましても、今般のSKハイニックスの参加は、日本側にとりましては何らのメリットもないばかりか、将来的には、「東芝メモリ」の市場競争力を低下させる展開も予想されます。産業革新機構には国費が投入されているのですから、国民の多くも、敢えて韓国のライバル企業を利すような日本国の経産省の方針に納得しないのではないでしょうか。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 
コメント (26)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする