万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国がアジアの顔となる不幸

2008年08月16日 16時00分13秒 | アジア
「56民族の子」ほとんど漢民族、開会式「偽り」の声(読売新聞) - goo ニュース
 急速な経済発展に惑わされて、日本国内でも、21世紀は中国をリーダーとするアジアの時代であると信じる人も少なくありません。しかしながら、次から次へと判明するオリンピック開会式の”不祥事”を見るにつけ、中国がアジアの顔となる時代は、アジアにとって不幸な時代となる予感がするのです。

 確かに、オリンピックの開会式には、莫大な資金と膨大な人員が投入され、史上最大のショーが華々しく演出されました。この時、耳目を驚かせる華麗な演出の仮面の下に、プロパガンダや演出で他者を欺くことで政権を維持してきた中国共産党の本質が隠されていたことに気付く人は少なかったはずです。インターネットなどが普及していない一昔前であったならば、共産党のお家芸である誤魔化し作戦も、あるいは成功したかもしれません。しかしながら、一たび、工作が白日ものと晒されてしまいますと、それは、中国の恥、延いては、アジアの恥になってしまうのです。

 この展開を見るにつけ、中国は、アジアのリーダーとなるに相応しくないことは、一目瞭然です。21世紀がアジアの時代であり、その顔が中国となりますと、心中穏やかではいられません。それにも拘わらず、自らアジアのリーダーシップを取ろうともせず、中国を抑止しようともしない日本国政府は、アジアの不幸を自ら招いているように思えてならないのです。

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戦没者の方々を悼んで

2008年08月15日 13時48分31秒 | 日本政治
福田首相「教訓、風化させない」 全国戦没者追悼式(共同通信) - goo ニュース
 8月15日は、不思議なことに、終戦の詔勅のあった63年前のあの日のように、毎年、晴れた暑い一日となります。

 圧倒的な劣勢の中で、戦地で死力を尽くされて戦われた方々や、望郷の思いを抱きながら亡くなられた方々を思いますと、まことに心が痛みます。どうか、御霊が安らかでありますように。

 みいくさに ゆきて帰らぬ ますらをの 眠れる野にも 夏風ぞ吹け

 
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グルジア危機は第二のキューバ危機か

2008年08月14日 16時04分25秒 | 国際政治
米軍機がグルジア着=ブッシュ大統領、休暇入り延期(時事通信) - goo ニュース
 1962年10月、ソ連によるキューバへのミサイル配備に端を発し、核戦争の瀬戸際まで至ったキューバ危機が発生しました。この時、世界中の人々は、この危機の行方を固唾を飲んで見守ったのです。今日のグルジア危機を見ますと、このキューバ危機が思い起こされるのです。

 何故ならば、ロシアの政策手法が、当時のソ連邦と大して変わりがなく、瀬戸際戦略を継承しているからです。瀬戸際戦略とは、相手国が、自らの不利益と損失を考えて(核戦争や第三次世界大戦・・・)、強硬手段に打って出ないぎりぎりのとことまで踏み込んで、自己の政策を実現しようとする手法です。ロシアが、グルジアに侵攻したのも、戦争の拡大を回避したいアメリカが、軍事介入をおもい留まると踏んでのことであったと考えられるのです。

 キューバ危機では、アメリカが、全面戦争も辞さずの強い態度で臨んだため、ソ連側が折れる結果となりました。本日、アメリカは、人道支援物資を搭載した軍用機をグルジアに派遣したと言います。この軍用機派遣には、アメリカのロシアに対する警告のメッセージが込められているのかもしれません。北京オリンピックの陰で進行しているグルジア危機は、もしかしますと、第二のキューバ危機かもしれないのです。

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グルジアの巧みなジェノサイド条約戦略

2008年08月13日 16時14分32秒 | 国際政治
国際司法裁にロシアを提訴=民族浄化と主張-グルジア(時事通信) - goo ニュース
 国際紛争の解決のために、国際司法裁判所へ提訴するためには、当事国双方の合意が必要ですので、グルジアによる提訴の報に接して、無理ではないか、と思われた方も多いかもしれません。ところが、この当事者合意の原則の例外が、実は、存在しているのです。

 この例外とは、ジェノサイド条約です。ジェノサイドとは、民族集団の抹殺を行う非人道的な行為ですので、この行為を行った者は、人類に対する罪を犯したとみなされ、国際裁判において裁くことができるのです。このため、ジェノサイド条約の第9条では、当事国の一方のみであっても、国際司法裁判所に提訴することができると定めてあります。もちろん、この条約が適用されるためには、両当事国が、締約国である必要がありますが、グルジアもロシアも加盟国ですので、グルジアは、自国のみで国際司法裁判所に付託することができるのです(チベットの亡命政府にもICJへの提訴という道が・・・)。

 とかくに、国際紛争は、政治問題として国際裁判の埒外に置かれることが多いのですが、グルジアは、ジェノサイド条約を持ち出すことによって、巧みに法律問題に持ち込んだことになります。ロシアの対応は未だ不明ですが、グルジアの提訴は、法の支配による国際秩序の議論を提起したことにおいても、意義があるのではないでしょうか。

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中国でも発生した”民主主義ひき逃げ事件”

2008年08月12日 16時00分51秒 | 国際政治
元米国労働長官 ロバート・ライシュ「暴走する資本主義が民主主義をひき逃げする」(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 ロバート・ライシュ氏の批難は、国内の所得格差の拡大が民主主義の成立基盤を脅かしていることに向けられていますが、その一方で、暴走する資本主義は、国際社会においても民主主義を”ひき逃げ”してしまったのではないか、と思うのです。

 この”ひき逃げ事件”は、特に、共産党による一党独裁体制を維持している中国において発生してしまいました。先進国の消費者が、より低価格の商品を求め、企業もまた、この要求に応えるために経費節減に走った結果、多くの企業が、一党独裁体制にあるにも拘わらず、製造拠点を労働コストのかからない中国に移してしまったのです。この企業の中国進出は、市場経済化が民主化を促すとする楽観的な観測の下で進められましたが、これまでのところ、政府の国民弾圧は強まりこそすれ、中国の民主化への道筋はなかなか見えてきません。それどことか、経済成長による国力の拡充は、周辺諸国の民主主義さえ脅かしているのです。この点において、日本国もまた、自分の首を自分で絞めていると言えるのかもしれません。

 ライシュ氏が、親中政策を選択したクリントン政権の閣僚であったことを思い起こしますと、この国際レベルの”民主主義ひき逃げ事件”には、無自覚なようにも思われます。実のところ、安全保障問題や内政干渉にまで発展する民主主義への深刻な脅威は、国外においてこそ発生するのですから。

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危ぶまれる”生活者重視”の政策方針

2008年08月11日 15時58分18秒 | 日本経済
輸入小麦価格20%アップへ、昨年4月以来4回連続値上げ(読売新聞) - goo ニュース
 輸入小麦の価格上昇は、物価上昇率をさらに押し上げそうですが、もし、政府が、国民生活を真剣に心配しているならば、安易に値上げを行うことは望ましくないと思うのです。 

 農業にあっては、食糧供給が、国民の生存や生活に関わるという理由で、どの国でも様々な保護政策が行われるものです。日本国政府も、1.国内農業の保護、2.食糧の安定供給、3.穀物価格の安定などを根拠に、輸入農産物に対して国境調整を実施しています。この国境調整によって、政府は、穀物を外国から安く買って、国内で高く販売し、利ざやを国庫に納めているのですが、このことは、輸入穀物価格が上昇したことを理由に、それをそのまま売り渡し価格に転嫁する必要がないことを示しています。つまり、輸入穀物価格が上昇しても、利ざやの縮小による歳入の減少を我慢すれば、売り渡し価格を据え置くことはできるのです。

 どうやら、政府は、この関税収入の減少に耐えるつもりはないらしく、安易に消費者に負担を求めているようです。原油価格といった国境調整のない商品については、値上げも致し方ありませんが、政府が価格決定の権限を持つ領域での値上げとなりますと、これは、政府が国民生活を慮っていない証となってしまいます。年金の給付額については、物価スライドをしないとの報道もありますが、これでは、”生活者重視”を強調する内閣は、掛け声倒れとなってしまうのではないでしょうか。

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ダブル・スタンダードに引き裂かれる国際秩序

2008年08月10日 18時09分37秒 | 国際政治
「ロシアは死んでも許さない」グルジア国民に渦巻く憎悪(読売新聞) - goo ニュース
 分離独立問題が平和裏に解決された事例がありつつつも、南オセチア問題については、事態は、そう簡単には解決の糸口を見出せそうにありません。何故ならば、対立する様々な要素が入り組んでいるからです。

 第一の対立要素は、民族独立主義対多民族主義です。南オセチアにとっては、グルジアからの独立は、民族自決の原則に基づく正当な要求であり、一方、グルジアにとっては、南オセチアの行動は、国家分裂を引き起こす内乱ということになります。

 第二の対立要素は、介入主義対非介入主義です。ロシアは、南オセチア問題に、迷わず軍事介入しかしたが、一方、アメリカをはじめ、西欧諸国は、現在までのところ、介入に消極的な姿勢を見せています。いわば、ロシアは、瀬戸際外交を行っていることになります。

 第三の対立要素は、国際秩序における法律主義と実力主義です。法律主義は、法的な領有を重く見ますが、実力主義は、軍事力による占領に領有の正当性を求めます。国際社会の大半は、法律主義の立場にありますが、ロシアは、実力主義をもって事態を解決しているようとしています。

 しかも、各国は、常に一貫性のある態度をとっているわけではなく、随所にダブル・スタンダードが見られます。そうして、このダブル・スタンダードが、事態の解決をより困難なものとしているのです。

 もし、解決の方針を挙げるならば、南オセチアにおいてロシア系住民が多数を占めるに至った経緯を詳細に調査した上で(チベットのように、移民が大量に送り込まれた場合がありますので)、1.ロシアおよびNATOを含めて、他の諸国は干渉しない(ロシア軍の撤退)、2.グルジアと南オセチアの代表による交渉の場を設置する、3.最終的には、南オセチア住民による住民投票で独立か否かを決定する、というプロセスが必要なのではないか、と思うのです。

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五輪開会式―孔子のメッセージの疑心暗鬼

2008年08月09日 16時18分10秒 | 国際政治
五輪開会式の視聴率98%=人民日報などが号外-中国〔五輪〕(時事通信) - goo ニュース
 昨晩の北京オリンピック開会式は、さながら”民族の祭典”と化しており、中国政府のオリンピックへの思い入れの強さを余すところなく伝えていました。もちろん、視聴率の高さが示すように、それは、中国の”国内向け”の演出であったのかもしれませんが、そればかりではないようなのです。

 実のことろ、開会式の演出には、国際社会へのメッセージも込められていたのではないか、と思うのです。開会式の冒頭で”朋あり、遠方より来る、亦楽しからずや”という論語の有名な一文が披露されました。おそらく、この一文こそ、この演出が、実は、国際社会向けであることを暗示したのではないか、と推測できるのです。そうして、儒教の強調は、民主主義という普遍化された価値に対するアンチ・テーゼであり、儒教が位階秩序の尊重したことを思い起こせば、自国を中心とした華夷秩序を強要しようとする意図が見えなくもないのです。周辺諸国の日本国としては、この儒教の演出に、心穏やかではいられません。もちろん、この心配が深読みであり、杞憂であればよいのですが・・・。

 冒頭の一文の後には、”人知らずして慍みず、亦た君子ならずや”という言葉が続きます。これは、”人が分かってくれなくても気にかけない。これぞ君子たるもの。”というような意味になります。この言葉を加えますと、何やら、君主たる中国は正しいのだから、国際社会が分かってくれなくても結構、と言っているようにも聞こえます。北京オリンピックの開会式は、まことに、見る者に、疑心暗鬼を抱かせたのでした。 

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オリンピックの政治利用で中国批判もグローバル化

2008年08月08日 15時41分48秒 | 国際政治
北京、高揚と警戒 開会式の朝は薄曇り(朝日新聞) - goo ニュース
 オリンピックの開催は、その歴史を振り返りましても、確かに”先進国”への登竜門と言えるかもしれません。しかしながら、今回の北京オリンピックをみる限り、中国政府の思惑とは裏腹に、国際社会へのデビューは、中国に対するブーイングをグローバル化してしまったとも受け取れるのです。

 それは、そもそも、中国が、オリンピックを政治利用したところから始まります。オリンピックを口実として、チベットや新疆ウイグルでの弾圧を強化し、武力で抵抗を抑え込もうとしたからこそ、国際社会は、中国政府が行ってきた”悪事”を知るところとなったのです。自らの政治的な目的のために、オリンピックを悪用したことが、国際社会から非難を浴びる原因をつくり、逆に、自らの立場を危うくしたとも言えます。

 この側面を考えますと、北京オリンピックの開催は、中国政府にとって、両刃の剣であったことになります。そうして、開会式を迎える今でも、その剣の両刃は、中国の頭上で、ゆらゆらと危なげに揺れているのです。
 
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動員より強いインパクトを与えた横断幕

2008年08月07日 16時24分51秒 | 国際政治
チベット支持で国外退去 横断幕掲げた米英の4人(共同通信) - goo ニュース

 北京オリンピックの開会式を明日に控え、中国では、テロや政治活動を警戒した厳戒態勢が敷かれているようです。北京での聖火リレーでも、動員により何とかオリンピックらしさの演出に苦心しているようですが、中国の政府を挙げての対応が、むしろ、人々の心を冷ましてているのに比べて、僅か4人によって掲げられた”フリー・リベット”の横断幕は、数万人の動員にも優るインパクトを世界中の人々に与えたのではないか、と思うのです。

 多勢に無勢とは言いますが、全国民の行動を統制しようとする全体主義の体制にあっては、たとえ小人数の行動であっても、抗議の表明の方がはるかにアピール効果が高いものです。それは、抗議をする者が、当局による厳重な監視体制をかいくぐらなければならないこと、そうして、それには、危険を冒す相当の勇気を要するからです。中国での取り締まりの厳しさが連日報じられる中で、横断幕を掲げることに成功したとするニュースは、チベット救済に対する要求と弾圧への非難が、決して消えてはいないことを内外に示したと言えましょう。

 メディアを通して流された横断幕の映像は、おそらく、中国政府、ならびに、政府のチベット政策を支持する中国の人々に対するメッセージでもあったかもしれません。”フリー・チベット”の横断幕は、北京オリンピックの場を借りて、中国の国家としてのあり方に一石を投じたのではないか、と思うのです。

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技術競争力に劣ったBRICsの経済戦略

2008年08月06日 16時00分31秒 | ヨーロッパ
いよいよ白熱するロシアの「エネルギー帝国化」脅威論(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 昨今のエネルギー資源高で潤うロシアを含めて、近年、急速な経済成長を遂げたBRICS諸国には、共通する戦略があるようなのです。それは、先端技術に頼らずに、利益を最大化する、ということです。

 先進諸国では、ついつい、先端技術が市場の勝敗を決する要因であると考えがちです。実際に、戦後の経済では、技術力に裏打ちされた製品開発力が市場を制してきましたし、経済成長の牽引力となっていました。しかしながら、自らの技術的なトップ・ランナーにならずとも、経済的な利益を確保する方法があったのです。それこそ、BRICS諸国が選択した経済戦略であり、ロシアはエネルギー資源を、中国は安価な労働力を、インドはITの人材を武器に、そうしてブラジルは、バイオ時代を国土政策と結びつけることによって、グローバル市場の中で、自らのパイを大きくすることに成功したのです。

 ただし、これらの戦略には全く問題がないわけではありません。もとより国内にあっては、市場経済のメカニズムがスムースに働いてはいませんので、何らかの要因が変化することによって、これまでの戦略が通用しなくなる怖れもあります。ロシアには、記事にも指摘されているように、エネルギー価格下落が、中国には労働価格の上昇が、ブラジルには森林伐採の負の影響が、そうしてインドには、むしろ政治的な要因による危機が心配されます。そうして、先進国もまた、先端的な技術力を活かして、現在の不利な状況を乗り越えてゆくかもしれないのです。
  
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司法の”籤引き民主主義”の危うさ

2008年08月05日 16時27分30秒 | 日本政治
裁判員に選ばれる確率、最高は大阪の「2894人に1人」(読売新聞) - goo ニュース
 政治家や公務員を籤引きで選ぼうという主張は、古代アテネではいざ知らず、現代社会にあっては、もはや耳にすることはありません。それにもかかわらず、司法に限って籤引き制を導入することに、果たして、どれだけの合理的な根拠があるのでしょうか。

 籤引き制度は、倫理観や刑罰に関する意識には個人差がなく、誰が選ばれても結果は同じである、という考えによって正当化されているようです。裁判を行う人には、適性も、専門的な知識も全くいらないことが、この制度の大前提なのです。しかしながら、あらゆる職業に適正が要求されるように、裁判員に限って適性はいらないという主張には、説得力がなさそうです。また、陪審員とは違って、裁判員は、法律の適用も行わなくてはならず、全く法律の知識がなくてよいはずもありません。しかも、誰でも良ければ、裁判官でも良いわけですから、この根拠には、納得しかねるのです。

 裁判員になる確率に大きな差があることが報じられているように(最大で約4倍の格差・・・)、”籤引き民主主義”は、平等なき民主主義です。また、司法の民主主義は、国民の選択なき民主主義です。政治の分野では、選ぶという行為こそ、国民の民主的な意思表示の手段なのですが、司法においては、選ぶ行為の方は”偶然の運”に任せるのですから。怪しげな民主化よりも、司法には、犯罪者を法律に照らして公平に裁く、という本来の目的に即した制度設計が必要なのではないか、と思うのです。
 
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WTO交渉より資源高が心配?

2008年08月04日 16時53分01秒 | 国際経済
アンチ・グローバリストはどこに消えた? ~ 平穏なWTO閣僚会議を考える(WIRED VISION) - goo ニュース
 
 産業界とは、競争力を自負していれば、輸出拡大を目指して関税引き下げを望むものです。もしかしますと、産業界の強い後押しがあれば、WTO交渉の妥結もあり得たのかもしれません。

 しかしながら、今回のWTOを取り巻く環境は、以前のものとは大きく違っています。何故ならば、現在の産業界の切実なる関心事は、工業製品の関税引き下げよりも、原材料高にシフトしているように思われるからです。経営に重くのしかかる資源高への対策こそ、企業にとっては急務の課題です。つまり、WTOの交渉を協力に後押しするパワーが低下してしまっているのです。

 新聞報道によりますと、鉱物資源市場の寡占化が進み、EUの競争当局が、BHPとリオ・ティントの統合を認めるか否か、関心が高まっていると言います(本日付日経新聞)。もしかしますと、グローバルなレベルで経済を再活性化するためには、通商政策よりも、別の政策手法を要する時代が来ているのかもしれません。 

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中国のネット規制緩和の吉凶

2008年08月03日 16時10分29秒 | アジア
中国、一般家庭のネット規制緩和 「五輪限定」難しく?(朝日新聞) - goo ニュース
 歴史の展開を予測することは人間の能力を超えた業であり、歴史は、運命の女神の手に委ねられているのですが、さて、中国のネット規制緩和は、中国という国の将来にどのような影響を与えるのでしょうか。

 恐らく、共産党政権としては、五輪期間中に限定すれば、ネット規制の緩和は国民の意識に大きな影響を与える程ではなく、むしろ、一時的であれ、現在高まっている政府に対する国民の不満を和らげる”ガス抜き”の働きをする、と読んだのでしょう。何と言いましても、北京オリンピックを成功させることが最優先課題ですので、ここで、国際的な非難をかわす必要があったわけです。

 しかしながら、過去の歴史が示すように、一度自由の空気が広がりますと、これを元の状態に戻すことは難しくなります。政府が、オリンピック後に、再度規制強化をしようとしますと、国民は、それに対して以前にも増して抑圧感を抱くかもしれません。規制緩和の間に広がった情報や知識は、もはや、人々の記憶から消すことはできないのですから。

 中国政府にとりまして、後者のシナリオは、”凶”であるに違いありません。一方、中国国民や国際社会は、後者のシナリオの先に、中国の自由化と民主化の”吉兆”を見出しているのです。ネット規制の緩和によって、中国がどのように変化するのか、注意深く見守る必要があるようです。

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一抹の不安がよぎる中山女史の起用

2008年08月02日 16時29分03秒 | 日本政治
「要望が実現」「勇気付けられる」=拉致担当相新設に家族会(時事通信) - goo ニュース
 北朝鮮相手に筋を通し、拉致被害者の帰国を実現した中山女史の手腕は、弱腰と日和見に終始していた日本国の外交にあって、国民に一縷の希望を与えるものでした。この度の内閣改造にあって閣僚に起用され、拉致被害者家族会のみならず国民もまた、大いに大臣の活躍に期待を寄せるところです。しかしながら、この起用には、一抹の不安もまた脳裏をよぎるのです。

 それは、どのような不安かと申しますと、首相の福田氏自身が、北朝鮮との関係改善に前向きであり、可能な限り早期に経済制裁を解除し、日朝間の国交交渉に入りたいと望んでいる節が伺えることです。もちろん、その前提条件には、拉致事件の解決があるのですが、中途半端で不透明な解決で蓋をしますと、家族会および国民世論の反発は必至です。そこで、この予測される反発を最小限に抑えるために、中山女史を矢面に立たせのではないか、という疑いが拭い去れないのです。

 もちろん、この心配が杞憂であることを願うのですが、政治の常套手段として、反対派の抵抗を抑えるために、反対派からの信頼が最も厚い人に説得の任に当たらせる、という方法が使われてきたことも確かです。中山大臣には、妥協せず、是非とも、拉致被害者全員の救出という基本方針を貫いていただきたいと思うのです。

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