万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ダブル・スタンダードに引き裂かれる国際秩序

2008年08月10日 18時09分37秒 | 国際政治
「ロシアは死んでも許さない」グルジア国民に渦巻く憎悪(読売新聞) - goo ニュース
 分離独立問題が平和裏に解決された事例がありつつつも、南オセチア問題については、事態は、そう簡単には解決の糸口を見出せそうにありません。何故ならば、対立する様々な要素が入り組んでいるからです。

 第一の対立要素は、民族独立主義対多民族主義です。南オセチアにとっては、グルジアからの独立は、民族自決の原則に基づく正当な要求であり、一方、グルジアにとっては、南オセチアの行動は、国家分裂を引き起こす内乱ということになります。

 第二の対立要素は、介入主義対非介入主義です。ロシアは、南オセチア問題に、迷わず軍事介入しかしたが、一方、アメリカをはじめ、西欧諸国は、現在までのところ、介入に消極的な姿勢を見せています。いわば、ロシアは、瀬戸際外交を行っていることになります。

 第三の対立要素は、国際秩序における法律主義と実力主義です。法律主義は、法的な領有を重く見ますが、実力主義は、軍事力による占領に領有の正当性を求めます。国際社会の大半は、法律主義の立場にありますが、ロシアは、実力主義をもって事態を解決しているようとしています。

 しかも、各国は、常に一貫性のある態度をとっているわけではなく、随所にダブル・スタンダードが見られます。そうして、このダブル・スタンダードが、事態の解決をより困難なものとしているのです。

 もし、解決の方針を挙げるならば、南オセチアにおいてロシア系住民が多数を占めるに至った経緯を詳細に調査した上で(チベットのように、移民が大量に送り込まれた場合がありますので)、1.ロシアおよびNATOを含めて、他の諸国は干渉しない(ロシア軍の撤退)、2.グルジアと南オセチアの代表による交渉の場を設置する、3.最終的には、南オセチア住民による住民投票で独立か否かを決定する、というプロセスが必要なのではないか、と思うのです。

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