万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

矛盾に満ちた不法入国フィリピン人一家問題

2009年03月09日 15時49分04秒 | 社会
比一家、入管に出頭の夫収容…妻は仮放免期間を延長(読売新聞) - goo ニュース
 両親が不正入国者であったフィリピン人一家の処遇が、マスコミなどでも話題となっておりますが、この問題には、多くの矛盾が横たわっているように思えるのです。

 第一に、法律の世界では、法は、不法行為から生じた権利を保護しないというクリーン・ハンドの原則があります。その理由は、一旦これを認めますと、不法行為や犯罪を行った者を、法が擁護してしまうことになるからです。言い換えますと、法自身が、自らに反した者を擁護するという自己矛盾に陥ってしまうのです。

 第二に、もし、言語を基準にして、お子さんの滞在許可が認められたとしますと、反対に、日本語ができない人は、入国や滞在基準を満たさないということになります。しかしながら、両親は、日本語がしゃべれずに入国しておりますので、この主張にも、矛盾があります(両親は、家庭で一切フィリピン語をしゃべらなかったのでしょうか・・・)。

 第三に、フィリピン人の両親は、お子さんだけを日本国に残す方針のようですが、この措置にも矛盾があります。何故ならば、多くの諸国では、家族が共に暮らせることを配慮して、家族を呼び寄せる権利を特別に認めているからです。つまり、逆の場合には、家族は離ればなれでもよい、と主張してるのですから、移民の家族保護の権利を自ら否定していることにもなります。

 これらの矛盾点を考えますと、この問題は、同情論だけでは解決しないように思うのです。むしろ、問題を別な方面で拗らせてしまうことにもなりかねません。原則を忘れた安易な解決は、将来に禍根を残すのではないか、と心配するのです。
  
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コメント (21)
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