ーレ・ミゼラブルーLES MISERABLES
2012年 イギリス
トム・フーパー監督 ヴィクトル・ユーゴー原作 アラン・ブーブリル・クロード=ミシェル・シェーンベルク脚本 ヒュー・ジャックマン(ジャン・バルジャン)ラッセル・クロウ(ジャベール)アン・ハサウェイ(ファンテーヌ)アマンダ・セイフライド(コゼット)エディ・レッドメイン(マリウス)ヘレナ・ボナム=カーター(マダム・テナルディエ)サシャ・バロン・コーエン(テナルディエ)サマンサ・バークス(エポニーヌ)アーロン・トヴェイト(アンジョルラス)イザベル・アレン(コゼット(少女時代))
【解説】
文豪ヴィクトル・ユーゴーの小説を基に、世界各国でロングラン上演されてきたミュージカルを映画化。『英国王のスピーチ』でオスカーを受賞したトム・フーパーが監督を務め、貧しさからパンを盗み19年も投獄された男ジャン・バルジャンの波乱に満ちた生涯を描く。主演は、『X-MEN』シリーズのヒュー・ジャックマン。彼を追う警官にオスカー俳優のラッセル・クロウがふんするほか、『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイ、『マンマ・ミーア!』のアマンダ・セイフライドら豪華キャストが勢ぞろいする。
【あらすじ】
1815年、ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、19年も刑務所にいたが仮釈放されることに。老司教の銀食器を盗むが、司教の慈悲に触れ改心する。1823年、工場主として成功を収め市長になった彼は、以前自分の工場で働いていて、娘を養うため極貧生活を送るファンテーヌ(アン・ハサウェイ)と知り合い、幼い娘の面倒を見ると約束。そんなある日、バルジャン逮捕の知らせを耳にした彼は、法廷で自分の正体を明かし再び追われることになってしまい……。(シネマトゥデイ)
【感想】
「レ・ミゼラブル」は19世紀フランスの作家、ヴィクトル・ユーゴー原作の小説で、日本では「ああ無情」というタイトルで少年少女向けの本で読みました。
たった1つのパンを盗んで19年もの間牢獄につながれていたジャン・バルジャンが、泊めたくれた教会から銀の食器を盗む。
捕まったジャン・バルジャンだが、司祭は「差し上げたものだ」と彼をかばい、それによって善に目覚めるというのが主な筋書きだったと思います。
私は原作を読んでいないし、ミュージカルも見たことがなかったので、とても楽しみに見ました。
「レ・ミゼラブル」というのは「悲惨な人々」という意味で、1815年の王政復古から1930年のフランス7月革命という激動の時代が背景です。
妹の子供が飢えているのを見かねてたった1つのパンを盗んだことと脱獄の刑を加えて、19年もの間囚人として重労働をさせられていた囚人番号24601、ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)が、ジャベール警部(ラツセル・クロウ)から命じられて、国旗を折れた支柱ごと取ってくる。
ジャベールはその怪力を見極めた上で、仮釈放を告げる。
「いずれ近い日にまた刑務所に戻るだろう」と予言して。
ジャベール警部
19年の恨みが心の中で渦巻くジャン・バルジャン。
しかし、1夜の宿に受け入れてくれたミリエル司教から、神の赦しを教えられたジャン・バルジャンは、自らの名前や過去を捨て、新しい自分として生きることを誓った。
数年後、彼はある町の市長となり工場も経営していた。
そこで働くフォンテーヌ(アン・ハサウェイ)が、工場で働く女性たちからあらぬ噂を立てられ、いざこざを起こしていたのだが、ジャン・バルジャンは赴任の挨拶に来たジャベールに気を取られ、適切な対処ができない間に、フォンテーヌは工場をクビになってしまった。
さらにジャベールは、荷馬車の下敷きになった人を助けた市長の怪力を見て、本能的に彼をジャン・バルジャンと見抜き、監視するようになった。
フォンティーヌは工場を辞めさせられて、途方に暮れる。
宿屋の夫婦に預けてある幼い娘のためにした多額の借金が彼女を苦しめるのだ。
髪を売り、歯も売って、娼婦に身を落としたフォンティヌだが、窮地をジャン・バルジャンに救われる。
フォンティーヌ
一方、ジャベールから「逃亡者ジャン・バルジャンはつかまった」と聞かされたジャン・バルジャン、無実の人間が裁かれるのは許されないと、裁判所に名乗り出た。
そしてフォンティーヌの元に駆けつけるが、フォンテーヌは娘をジャン・バルジャンに託して息を引き取る。
しかし、ジャベールが彼を逮捕しにやって来た。
なんとかジャベールから逃れてコゼットを探しに来たジャン・バルジャン。
森の中で水汲みをしているコゼットに出会う。
宿屋の夫婦テナルディエ夫婦(サシャ・バロン・コーエン・ヘレナ・ボナム=カーター)に大金を払い、コゼットとともにパリに向かう。
ジャベールは執拗に追うが、二人は修道院に匿われ、時は過ぎる。
パリの片隅のお屋敷で、成長したコゼット(アマンダ・セイフライド)とともにひっそりと暮しているジャン・バルジャン。
彼にとっては、生涯で初めての至福の時だった。
そのころパリでは学生たちが政治結社を作り、革命を起こそうと準備をしていた。
その中のひとり、マリユス(エディ・レッドメイン)は、一目見かけただけのコゼットに恋をしてしまう。
テルナディエの娘エポニーヌ(サマンサ・バークス)に彼女の居所を突き止めてもらって、二人は愛を打ち明ける。
コゼットとマリウス
しかし、ジャン・バルジャンにはまたもジャベールの影がー。
ジャベールもまた、パリに赴任して来ていたのだ。
ロンドンに渡る決心をしたジャン・バルジャン。
そして、決起のときが近づいたマリウス。
恋人たちは引き裂かれようとしていた。
とうとう学生たちはバリケードを築き、立ち上がった。
あとに市民たちが続いてくれると信じて。
でも、市民たちは沈黙し、学生たちは孤立した。
失敗だ。
軍隊がなだれ込み、マリウスも傷ついた。
ジャン・バルジャンは、コゼットのため、マリウスを助けるためにバリケードの中に入っていったー。
ミュージカルが苦手という人がいます。
うちの夫もそうですが、私は「ミュージカルというのは、声や言葉に出せない思いを歌にして表現しているのよ」と説明しています。
このミュージカルは、まさにその通り。
ジャン・バルジャンが初めて赦しの心を悟る歌「バルジャンの独白」、フォンテーヌが娼婦に落ちてしまった身を嘆いて歌う「夢やぶれて」、テーマ曲とも言える「民衆の歌」、ジャベールが自殺する心境を歌った歌、フォンテーヌに導かれて神の国に旅立つ「バルジャンの告白」などなど、歌でしか表現できない独白が胸を打ちました。
これが正しいミュージカルだなあと思いました。
そして、映画の武器であるカメラワークや映像も素晴らしい。
ヒュー・ジャックマンが歌えるのは知っていたし、アマンダ・セイフライドは「マンマミーア」で見ていました。
でも、アン・ハサウェイやラッセル・クロウがあんなに情感豊かに歌えるなんて、びっくりしました。
心情が痛いほど伝わって、何回泣いたか!
そのなかで、ほっとさせてくれるのがテナルディエ夫婦。
予告編で見たときには、浮いているんじゃないかなあと思ったけど、その小悪党ぶりを1曲の間のエピソードで見せてしまうなんて、憎い演出。
要所要所でピエロ役に徹して、よい緩和剤でした。
エポニーヌ
この作品を見終わった友達も言っていましたが、きらりと光るエポニーヌの純情。
マリウスに好意を寄せながら、彼の恋に協力を惜しまず、最後はバリケードの中でマリウスの腕の中で死んでいきます。
切なかったわ。
そしてバリケードの陥落は、70年代の安田講堂陥落にも似て、当時を知る私なんかは、ジーンと熱いものがこみ上げてきました。
振り返っても誰もいない虚しさ。
今思い出しても、あのときの熱病のような浮かれた情熱は何だったんだろうと思います。
今につながっているのだろうか?
そんなことも考えつつ長尺の映画でしたが、まるで長さを感じません。
点数があるなら、満点を付けたいです。
たくさんの人が見に来ていましたが、最後は拍手していた人もいましたし、エンドロールが終わるまで席を立つ人が少なかったです。
みんな感動しているんだなあって、思いました。
ああ、この年末にこんないい映画が見られてよかった。
お正月映画はこれで決まりですよ!!
民衆の歌