マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

サラの鍵

2012-02-04 11:42:46 | 映画ー劇場鑑賞

ーサラの鍵ーELLE S'APPELAIT SARAH

2010年 フランス

ジル・パケ=ブランネール監督 クリスティン・スコット・トーマス(ジュリア・ジャーモンド)メリュジーヌ・マヤンス(サラ・スタルジンスキ)ニエル・アレストリュプ(ジュール・デ。ユフォール)エイダン・クイン(ウィリアム・レインズファード)フレデリック・ピエロ(ベルトラン・テザック)

 

【解説】

ナチス占領下のパリで行われたユダヤ人迫害、ヴェルディヴ事件を題材に、過去と現代を交錯させながらユダヤ人一家に起こった悲劇を描く感動的な社会派ドラマ。世界中で300万部を売り上げたタチアナ・ド・ロネの原作を基に、『マルセイユ・ヴァイス』のジル・パケ=ブランネール監督が映画化。『イングリッシュ・ペイシェント』などのクリスティン・スコット・トーマスが、アウシュビッツについて取材するジャーナリストを好演。次第に解き明かされる衝撃の事実とラストに胸を打たれる。

 

【あらすじ】

1942年、ナチス占領下のパリ。ユダヤ人一斉検挙によってヴェルディヴに連れてこられた人々の中に、少女サラはいた。それから60年後。パリに暮らすアメリカ人ジャーナリストのジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は、アウシュヴィッツに送られた家族を取材するうちに、かつて自分のアパートで起こった悲劇を知ることとなる。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

<ナチス占領下のパリで行われたユダヤ人迫害、ヴェルディヴ事件>を全く知りませんでした。

ウィキペディアによると、「1995716日大統領就任直後に第二次世界大戦中、フランス警察が行ったユダヤ人迫害事件であるベルディブ事件に対して、追悼式典に出席した上で、始めてフランス国家の犯した誤りと認めた」のだそうです。

 

この映画は、1942年7月に起きたヴェルディヴ事件で、フランス警察によってアパートから強制的に連れ出されるユダヤ人スタルジンスキ家の悲劇と、現代のフランスで生きるアメリカ人女性ジャーナリストで、ホロコーストの取材を続けるジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)の物語が交錯して語られていきます。

サスペンス仕立てで、観客を飽きさせません。

 

前者の物語の主人公はスタルジンスキの長女サラ(メリュジーヌ・マヤンス)です。

「その日」は突然やってきました。

 

 

噂はあったのでしょう。

父親は地下室に隠れていました。

でも、警察は家族全員を連れて行くというのです。

サラはとっさに弟のミッシェルを納戸の中に隠し鍵をかけました。

「きっとすぐに出して上げる。約束するから静かに待っていて」と。

 

☆ネタバレ

警察は乱暴に母もサラも連れ出しました。

地下室に隠れていた父親も見つかり、ベルディブ競輪場に連れて行かれました。

サラはミッシェルを隠したことを後悔し、警察官にミッシェルを連れれてくるように頼んだけれど無視されてしまいました。

両親にも「おまえが隠すからだ、お前の責任だ」と罵倒されます。

 

人々はここで数日間放置され、収容所に送られました。

収容所では、男と女子供が先に引き離され、それから数日して母と子供が引き離されました。

 

サラは友達になった女の子と収容所を逃げ出し、近くの村へたどり着きます。

でも、一緒に逃げた女の子はジフテリアにかかっていました。

農家のテザック夫婦が二人を助け、亡くなった女の子をフランス警察に引き渡しますが、サラは匿ってくれました。

 

二人を助けてくれたテザック氏

 

そのうえ、サラの訴えを聞いてパリの自宅にも連れて行ってくれました。

ところが、アパートには新しい住民が入居したばかりでした。

サラは片時も放さなかった鍵で納戸を開けますが、もちろん遅過ぎたのです。

 

この出来事がサラの心に暗い影を落とし、生涯にわたってサラを苦しめ続けます。

賢く働き者の女性に成長したサラは、育ててくれたテザック夫妻にも黙って家を出ていき、その後アメリカに渡りました。

 

さて、もう一方の主人公ジュリアです。

フランス人の夫とティーンエージャーの娘の3人暮らし。

この度、夫の祖母の思い出のアパートを改装して住むことになりました。

でも、ジュリアの心はうつろです。

 

ヴェルディヴ事件をライフワークのように追っかけていますが、歴史の闇に葬られ、人々から忘れ去られようとしているこの事件をいくら取材しても、それで何が得られるのか、まるで、底なし沼に落ちていくようです。

 

諦めていた妊娠がわかり、ジュリアは喜びますが、夫も娘も赤ちゃんを望んではいませんでした。

さらに落ち込むジュリア。

 

取材の過程で、彼女の改装中のアパートが、1942年7月までユダヤ人のスタルジンスキ一家が住んでいたことがわかります。

スタルジンスキ夫妻は収容所で亡くなったことが確認されましたが、子供たちーサラとミッシェルの消息は不明になっていました。

 

夫の父に聞くと、8月引っ越したばかりのときに、ユダヤ人の少女が飛び込んできて、納戸を開け、幼児の死体があったことを話し始めました。

このことは、父と祖父だけの秘密でした。

祖父とテザック夫妻の手紙のやり取りがあり、それが貸金庫に残されていました。

そこには、美しい娘に成長したサラの写真がありました。

 

 成長したサラ

 

子供を産む決心をし、ジュリアはサラを追ってアメリカへ。

 

サラは、アメリカで知り合ったリチャードと結婚。

サラにとって、人生で一番幸せな時代だったのでしょうが、過去の苦しみはサラを決して逃がしませんでした。

一人息子をもうけましたが、その子が9歳のときに、サラは自殺してしまったのです。

 

ジュリアはサラの息子ウィリアム(エイダン・クイン)に会うためにイタリアへ。

 

サラの息子、ウィリアム(エイダン・クイン)

 

でも、ウィリアムは両親から何も聞かされておらず、自分がユダヤ人の息子であることも知りませんでした。

ジュリアはへんな言いがかりをつける女と思われ、追い返されてしまいました。

 

ジュリアは夫から「家族を傷つける真実を知ってなんになる」となじられますが、「真実を知るには代償がいる」と言い、自分の生き方を貫くのです。

 

数年後、ジュリアは夫と別れ、長女と赤ちゃんの次女とニューヨークで暮らしていました。

そんなある日、ウイリアムから連絡がありました。

ウィリアムは父親から母親のすべてを聞いて、ジュリアにも理解を示すようになっていました。

 

二人は旧知の間柄のように親しく話し合い、そして最後にウィリアムがジュリアの娘の名前を聞いたのです。

ジュリアは「ごめんなさい、サラと名付けたの」

二人の間に、なんともいえない感情が通いました。

それが見ている私にも伝わってきて、流れる涙を止めることができませんでした。

 

悲しい壮絶なサラの生涯。

でも、こうして、ジュリアの娘という形になって、赦しの感情が流れ込んで来ました。

サラの苦しみは決して無駄ではなく、新しい命という美しいものに形を変えたんだと思いました。

カタルシスを与えてくれるラストでした。

 

ホロコーストの映画を見ると、いつも疑問に感じることがあります。

人が人に、あんなにひどいことができるのだろうかと。

 

多くの人は、クラスのいじめられっ子にするように、少しだけイジメに加担したり無視したりしているだけなのでしょう。

あんなひどい収容所に入れられ、最後は殺されるなんて、想像もしなかった、というに違いありません。

人々の無関心がホロコーストの悲劇を生んだのではないかと思います。

 

サラたちが連れて行かれるときも、隣人のフランス人たちはとても冷たかった。

でも彼らは、競輪場で何が起きているのか、知ろうともしなかったし、その後アウシュビッツで殺されるなんて想像もしなかったのでしょう。

 

事実が明るみになったとき、多くのフランス人たちは恥じて忘れてしまいたかったのでしょう。

 

それが、ジュリアがサラを知ったように、個人を知ってしまえば、無視はできない存在になります。

彼女の痛みや苦しみは、自分のことのように感じられることでしょう。

 

アウシュビッツでは何万人の人が亡くなったと言われても、それはすごいと思うけど、数字でしかありません。

でも、その数のひとりひとりに人生があり、感情があったと知ることが、大切なんだと思いました。

真実を知ることは、人も傷つけ、自分も傷つかずにはいられないことかもしれないけど、真実はやがて愛に通じると信じ、勇気を持って追求しなければならないんだと思いました。

 

相変わらず、クリスティン・スコット・トーマスは素敵です。

演技もさることながら、フランス語と英語を苦もなく操る知的な姿には、うっとりしてしまいました。

 

 


SOMEWHERE

2012-02-04 10:20:58 | 映画ーDVD

SOMEWHERESOMEWHERE

2010年 アメリカ

ソフィア・コッポラ監督 スティーヴン・ドーフ(ジョニー・マルコ)エル・ファニング(クレオ)クリス・ポンティアス(サミー)ララ・スロートマン(レイラ)クリスティーナ・シャノン カリサ・シャノン アマンダ・アンカ エミリー・ケンパー ミシェル・モナハン ベニチオ・デル・トロ

 

【解説】

『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』のソフィア・コッポラが、映画スターの家族のきずなや孤独をセンチメンタルに描いた人間ドラマ。ロサンゼルスの有名なホテルで自堕落に暮らす俳優が、娘との久々の時間を過ごす中で自分を見つめ直すプロセスを映し出す。主演は、『ブレイド』のスティーヴン・ドーフと、ダコタ・ファニングの妹で『ベンジャミン・バトン数奇な人生』のエル・ファニング。美しい映像や音楽と共につづられる、父娘のさりげない交流と感情のうつろいに、心を洗われる。

 

【あらすじ】

ロサンゼルスのホテルで派手な暮らしを送るハリウッド・スターのジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)だが、別れた妻のもとで暮らしていた11歳の娘クレオ(エル・ファニング)をしばらくの間、預かることになる。騒々しい日常は一転、クレオとの楽しく穏やかな日々が過ぎていく。そして、再び離れ離れになる日が訪れるが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

「ロストイントランスレーション」のような感じの映画です。

主人公はジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)。

ハリウッドスターで、LAのシャトーマーモントでホテル暮らしをしている。

ポールダンスの女の子の出前(そんなんあるのねえ!!)を頼んだり(それも2回も、途中で寝てしまうのに)、パーティで拾った女性とセックスを始めるけど、途中で寝たり…。

私は、こういう病気の人の話になるのかと思いました。

 

とにかく、彼は空虚で空っぽなのね。

 

そこに、娘がやって来る。

ティーンエージャーのクロエ(エル・ファニング)。

母親の都合で、父親であるジョニーに預けられたのだ。

彼女がサマーキャンプに行くまでの数週間、一緒に過ごすことになった。

 

ジョニーはイタリアの授賞式に招待され、クロエも同行する。

泊まるホテルはお部屋にプールが付いていました!!

表彰式には金熊賞ならぬ、金猫賞。

ユーモアたっぷりです。

 

父と娘。

甘い至福の時間はすぐに過ぎ、キャンプに送っていきます。

これも、途中ヘリに乗り替えたりして豪華です。

さすが、ハリウッドスターです。

 

その途中、クロエは「ママはなぜどこかに行ってしまったの?」と泣き出すシーンがあり、これが唯一感情が出ているシーンでした。

 

でも、ラスト、ジョニーが砂漠にすっくと立つシーン。

ジョニーも何か大きな決断をして、一歩踏み出すことにしたんだなあという余韻を残して終わりました。

 

エル・ファニングは自然な感じの美少女で、スリムな体で背も高く、とてもチャーミング。

この映画、エルのための映画と言って過言ではないと思いました。

この天使のような娘だからこそ、ジョニーも再び歩きだそうと思ったんだね。

 

この作品は、とてもソフィアらしい作品でした。

インタビューを読むと、子供の頃の経験が元になっているそうです。

そういう意味では、フランシス・フォード・コッポラ監督の娘・ソフィアにしか作れない作品と言えますね。

 


クリスマス・ストーリー

2012-02-04 09:42:46 | 映画ーDVD

ークリスマス・ストーリーーUN CONTE DE NOEL/A CHRISTMAS TALE

2008年 フランス

アルノー・デプレシャン監督 カトリーヌ・ドヌーヴ(ジュノン)ジャン=ポール・ルシヨン(アベル)アンヌ・コンシニ(エリザベート)マチュー・アマルリック(アンリ)メルヴィル・プポー(イヴァン)イポリット・ジラルド(クロード)エマニュエル・ドゥヴォス(フォニア)キアラ・マストロヤンニ(シルヴィア)ローラン・カペリュート(シモン)エミール・ベルリング(ポール)フランソワーズ・ベルタン(ロゼメ)

 

【解説】

フランス映画界を代表する面々が出演し、2008年のセザール賞で9部門にノミネートされたヒューマン・ドラマ。クリスマスに集ったある家族の物語がドラマチックにつづられていく。監督は『キングス&クイーン』のアルノー・デプレシャン。大女優カトリーヌ・ドヌーヴをはじめ、『潜水服は蝶の夢を見る』のマチュー・アマルリック、『ブロークン』のメルヴィル・プポーらが集っている。豪華キャストによる極上のアンサンブルが魅力だ。

 

【あらすじ】

とあるクリスマス。ヴュイヤール家では、母ジュノン(カトリーヌ・ドヌーヴ)の病気をきっかけに、長女エリザベート(アンヌ・コンシニ)、三男イヴァン(メルヴィル・プポー)ら、子どもたちが集まっていた。しかし、絶縁されていた次男アンリ(マチュー・アマルリック)の登場で、穏やかなクリスマスに波風が立ち始める。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

「フランス映画界を代表する面々が出演し、2008年のセザール賞で9部門にノミネートされたヒューマン・ドラマ」ということで、かなり期待してみたのですが、私には合わなかったようです。

影絵を使ったり、章分けをしたり、作り方が斬新でした。

エピソードがぷつんと切れちゃう作り方で、私は気持ちがそがれる感じがしました。

 

ヴュイヤール家。

フランスのルーベという都市に住み、染め物工場を営むアベル(ジャン=ポール・ルシヨン)は妻のジュノン(カトリーヌ・ドヌーブ)と暮している。

クリスマスが近いある日、ジュノンが白血病と診断された。

家族が呼び戻された。

 

影絵で紹介されるのだが、この一家の長男は幼いときに白血病と診断され、両親も長女のエリザベートも適合しなかった。

適合することを願って次男のアンリを産んだが、彼も適合せず、長男は6歳で亡くなってしまった。

アンリは役立たずとして育ち、その後末っ子のイヴァンが産まれた。

 

この長男の夭折というのが、一家には大きく影を落としていて、今また母がこの難病に襲われたということです。

 

長女エリザベート(アンヌ・コンシニ)は脚本家として有名で、夫は高名な数学者だが、一人息子のポール(エミール・ベルリング)は思春期の難しい時期で、自殺願望がある問題児だ。

エリザベートは心身ともに疲れ果て、精神科医にもかかっていた。

 

アンリ(マチュー・アマルリック)は小さい時から問題児で、あるときとうとう巨額な借金を抱え、父親にも迷惑をかけた。

エリザベートは、アンリの借金を肩代わりする代わりに、自分とは縁を切るように迫った。

それから、10年くらい会っていなかった。

 

実家で再会しても、すごい喧嘩になる。

この二人の演技、すごいです。

 

末っ子のイヴァン(メルヴィル・プポー)は、家族の顔色を見ながら育ち、内気な青年に育った。

でも、今は美しいシルヴィア(キアラ・マストロヤンニ)との間に、可愛い二人の男の子がいる。

 

☆ネタバレ

子供たちや孫たちは、ジュノンの骨髄移植のために、適合するか検査を受け、その結果、アンリとポールが適合するとわかる。

一家のお荷物だったアンリが、求められる存在となったのだ。

 

ジュノン自身が手術に消極的で、アンリとの通わないやり取りもおもしろい。

でも、ラストシーン、母と息子の交流が、この映画の中でも一番ステキなシーンに昇華されていました。

 

ポールが提供者になればいいと主張していたエリザベートも、最終的には心を落ち着け、受け入れるようになる。

ポールもまた、このことを通じて成長した感じがしました。

 

私が違和感があったのは、もう一つのエピソード。

イヴァンの妻シルヴィアに、元々、アンリと従弟シモン(ローラン・カペリュート)も思いを寄せていた。

特にシモンは、内気なイヴァンのために告白をしなかったということが、シルヴィアの知る所となり、シモンは家からいなくなる。

それをシルヴィアが探し出して、最終的にはベッドインとなる。

そして、朝、シルヴィアとシモンが裸で寝ている所へ子供たちが起こしにきて、その開いた部屋の前をイヴァンが通りかかってにっこりします。

 

ここが、どうもわからなかったのです。

私は修羅場になるとひやひやしたから。

イブァンのにっこりのわけが、とうとう謎でした。

だって、クリスマスが終わって帰る日、シルヴィアとシモンは別れがたい感じでしたが、イヴァンは気にせず「シルヴィア、早く、帰るぞ」ってすごく普通だったから。

 

これがフランス人なんでしょうか?

 

お父さんがステキでした。

妻の病気を心配しながらも、家族が集まれば食事の世話や後片付けをし、孫をかわいがり、娘が悩んでいると見たら、本を朗読してあげる。

音楽にも文学にも造詣が深い。

 

この懐の深さが、フランス人なのでしょうね。