マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

八日目の蝉

2011-06-03 10:23:08 | 映画ー劇場鑑賞

ー八日目の蝉ー

2011年 日本

監督=成島出 原作=角田光代 キャスト= 井上真央(秋山恵理菜=薫)永作博美(野々宮希和子)小池栄子(安藤千草)森口瑤子(秋山恵津子)田中哲司(秋山丈博)市川実和子(沢田久美(エステル))平田満(沢田雄三)劇団ひとり(岸田孝史)余貴美子(エンゼル)田中泯(タキ写真館・滝)風吹ジュン(沢田昌江)

 

【解説】

誘拐犯の女と誘拐された少女との逃亡劇と、その後の二人の運命を描いた、角田光代原作のベストセラー小説を映画化したヒューマン・サスペンス。監督は、『孤高のメス』など社会派エンターテインメント作品で定評のある成島出。誘拐された少女の大学生時代を井上真央が演じ、愛人の娘を誘拐する女性に永作博美がふんするほか、小池栄子や森口瑤子、田中哲司など実力派俳優が勢ぞろいする。(タイトルの「蝉」は、「虫」に「單」が正式表記)

 

【あらすじ】

子どもを身ごもるも、相手が結婚していたために出産をあきらめるしかない希和子(永作博美)は、ちょうど同じころに生まれた男の妻の赤ん坊を誘拐して逃亡する。しかし、二人の母娘としての幸せな暮らしは4年で終わる。さらに数年後、本当の両親にわだかまりを感じながら成長した恵理菜(井上真央)は大学生になり、家庭を持つ男の子どもを妊娠してしまう。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

なかなか面白かったです。

原作がいいのでしょうね。

読んでいませんが。

テレビドラマ化もされたようですが、私は見ていません。

 

ということで、この作品だけを見ての感想ですが、二人の母と、その犠牲者といっていい娘の心情がとてもよく描かれていました。

 

秋山丈博(田中哲司)には、恵津子(森口瑤子)という妻がいたにもかかわらず、希和子(永作博美)とも付き合っていた。

希和子が妊娠を告げると、秋山の態度は一変する。

断腸の思いで堕胎した希和子だが、それがもとで、二度と子供を産めないからだとなってしまう。

しかも、恵津子が妊娠。

恵津子は希和子の存在を知り、訪ねて来てののしった。

 

空虚な気持ちの希和子は、秋山と別れを決心し、一目だけでもと思い、秋山の留守宅に上がり込み、赤ん坊だった恵理菜を見るが、魔が差して誘拐してしまう。

 

☆ネタバレ

希和子は恵理菜を連れて逃げ惑い、カルト集団「エンゼルハウス」に3年間身を寄せる。

そこに警察が入ることを知り、恵理菜を連れて小豆島に渡る。

エンゼルハウスで懇意にしていたエステル(市川実和子)の実家に身を寄せ、普通の親子として1年間幸せに暮らしていたが、全国紙の写真コンクールに二人の写真が掲載され、再び逃亡を企てたところで警察に捕まる。

 

そして、その裁判シーンから映画は始まるが、希和子には反省がなく、実刑となり、恵理菜は実母恵津子の元で育てられた。

 

4歳まで希和子に育てられた恵理菜は、恵津子になつかない。

恵津子はヒステリックにわめき出し、恵理菜は泣いて謝る。

どちらも、なぜそうなるか、わからない。

この母娘が失ったものは、永遠に取り戻せないのだろうか?

 

恵津子が狂うシーンは、ぼろぼろと涙が止まりませんでした。

やはり、私は実母の心情に添って見てしまいました。

彼女が悪く描かれているなんて、ちっとも思いませんでした。

彼女は荒れて当然、狂って当然です。

恵津子にはなんの非もないのですから。

 

悪いのは秋山丈博です。

一生をかけて償わないと行けないのは彼だと思います。

ある程度、自覚して努力をしているようすがあったので、救われていると思いました。

 

恵理菜にも、当然非はないのですが、実母を愛せないと言うのが後ろめたさになっています。

そして、希和子を恨んだり憎んだりしないといけないという思いも、すごいストレスになっていると思います。

 

しかも岸田孝史(劇団ひとり)と、希和子と同じような愛人状態になって、妊娠もして、さらに恵津子との関係が悪化します。

 

そこへ現れたのが、ジャーナリストの安藤千草(小池栄子)。

恵理菜の事件を記事にしたいという。

二人は、希和子との逃亡生活を追って、大阪から小豆島に旅をする。

 

これが、恵理菜の心の旅になりました。

そして、小豆島の写真館に残されていた希和子と幼い自分の写真。

そして、希和子が捕まるときに言った言葉。

 

自分が愛されていたことを知り、自分も希和子を愛していたことを思い出した恵理菜は、実母との関係修復への努力や、子供を産むことへの希望も見いだして、新しい人生に向かう決心をしたのでした。

 

女優さんたちが素晴らしかったです。

特に、小池栄子さん。

 

いつも健康で明るいイメージですが、今回の役はかなり不健康な精神の持ち主で、それをとてもうまく表現していました。

大柄な体を曲げて、おどおどした不安そうな表情がとてもうまいと思いました。

エンゼルハウスで育ち、恵理菜の幼いときを知る複雑で重要な役ですが、そういう千草だからこそ、恵理菜も心を開いたんだなあ、と感じさせる演技力でした。

 

永作博美さんは、これは彼女の役だろうなと言うほどでした。

一番の嫌われ者ですが、この役が観客から愛されなければ、観客には葛藤が生まれないでしょう。

 

井上真央も素晴らしかったです。

 

お母さん、特に子供を産んだばかりの母親は、感情的で神経質で野生さえ感じるほどです。

出産そのものが自然なことなので、当然だと思います。

そこをうまくフォローしてあげるのが父親の役目でしょう。

母親を安心させ、子育てに専念できる環境を作る。

 

それが、この作品のように、子供を奪われてしまうと言うのは母親にとって最悪の出来事です。

その犯人は、夫の愛人なんて、立ち直れないほどのショックでしょう。

 

私は、恵津子に深く同情し、この母に再び幸せが来るようにと、祈らずにはいられませんでした。

恵理菜の子供をかわいがって育てて、自分の失われた時間を取り戻せたと思えたらいいのですが…。

そういう予感で満ちあふれている、いいラストだと感じました。

 

 

 


必死剣 鳥刺し

2011-06-03 09:08:24 | 映画ーDVD

 

ー必死剣 鳥刺しー

2010年 日本

監督=平山秀幸 原作=藤沢周平 キャスト=豊川悦司(兼見三左エ門)池脇千鶴(里尾)吉川晃司(帯屋隼人正)戸田菜穂(睦江)村上淳(右京太夫)関めぐみ(連子)山田キヌヲ(多恵)矢島健一(矢部孫千代)油井昌由樹(大場兵部)つまみ枝豆(福井)俊藤光利(光岡)村杉蝉之介(山内)瀧川鯉昇(安西直弥)田中聡元(権蔵)石山雄大(茂吉)生津徹(常吉)前田健(喜助)外波山文明(兼見清蔵)高橋和也(兼見伝一郎)福田転球(牧藤兵衛)木野花(はな)小日向文世(保科十内)岸部一徳(津田民部)

 

【解説】

藤沢周平の時代小説「隠し剣」シリーズの中でも、現代に通じる傑作と名高い「必死剣鳥刺し」を『しゃべれども しゃべれども』の平山秀幸が映画化。剣豪であるがゆえに、過酷な運命に翻弄(ほんろう)されていく武士の心情が描かれていく。悲運の剣豪・兼見三左ェ門を演じるのは豊川悦司。三左ェ門の亡き妻のめいでありながら、彼にひそかな思いを抱く女性・里尾を池脇千鶴が演じる。観る者の心を揺さぶるし烈なクライマックスまで、目が離せない。

 

【あらすじ】

江戸時代、海坂藩の近習頭取・兼見三左ェ門(豊川悦司)は、藩主・右京太夫(村上淳)の失政の元凶である愛妾(あいしょう)・連子(関めぐみ)を3年前に城中で刺し殺すものの、寛大な処分によって再び藩主に仕えることに。亡妻・睦江(戸田菜穂)のめいであり、身の周りの世話をしてくれる里尾(池脇千鶴)との日々の中で生きる力を取り戻すが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

原作は藤沢周平だし、ヤフーのレビューでも評価が高いので、期待して見ましたが、私にはあっていなかったようです。

理解できないことがいっぱいでした。

 

まず、なぜ海坂藩の近習頭取・兼見三左ェ門(豊川悦司)は藩主・右京太夫(村上淳)の失政の元凶である愛妾(あいしょう)・連子(関めぐみ)を暗殺したのか?

いろいろ理由は語られます。

藩の財政に口出しをし、勝手に役人の腹を切らせたなど、ひどいエピソードもあり、領民は高い年貢に喘いでいたという現実もある。

 

一方、兼見は愛する妻を病気で失い、子もなく、自分が犠牲になっても悲しむ人はいないという状況です。

 

だから、藩のために連子を殺したの?

だから、連子を暗殺するのは兼見だったの?

というところで、私は引っかかりました。

役者さんの力量もあるのでしょうが、連子が一番のワルに見えなかったし。

連子より、その暴走を止められない藩主の右京の方が問題でしょう?

しかも、藩主の右京も連子の考えに賛成しているみたいにも見えました。

 

そして、我が身を捨てての暗殺。

極刑を覚悟していた兼見ですが、自宅謹慎で生かされ、謹慎が解けてからは右京の側で、針のむしろという感じで仕えていた。

それには、津田民部(岸部一徳)の思惑があったのだ。

 

連子が亡くなっても、藩内の農民の窮状は変わらない。

藩主が無能と言うことです。

別家の帯屋隼人正(吉川晃司)が心を痛め、たびたび右京に意見していました。

とうとう堪忍袋の緒が切れ、単身右京を訪ねてきました。

 

ここも、不思議でしたね。

別家とはいえ、刀に手をかけて藩主を目指しているのに、家来たちが数人バラバラに止めにくるだけなんて。

 

帯屋が右京の部屋に迫って来て、その前に立ちふさがったのが兼見でした。

そこが彼の働き場所だったのです。

 

兼見は「必死剣鳥刺し」という秘剣の使い手だったのです。

それは、「その秘剣が抜かれるとき、使い手は半ば死んでいる」というもので、使い手である兼見も使ったことがないという秘剣中の秘剣です。

そして、帯屋との息詰る死闘を制した兼見。

 

しかし、待ち受けていたのは、帯屋を殺した乱心者として同僚の家来たちに討たれるということでした。

これが津田の筋書きだったのです。

 

この立ち回りが長々と凄まじい。

お話に入り込めない私にとっては、かなり苦痛でした。

「スプラッター映画やん」と引きながら見ていました。

 

そして、見せられた「必死剣鳥刺し」だけど、そのからくりがよくわからなくて、さらにフラストレーションがたまりました。

どうも、ひもで動脈を縛って脈を消し、相手が油断したところで一気に突くというやり方のようです。

相手も死ぬけど、自分も死ぬというのがからくりのようでした。

 

兼見には、亡くなった妻の姪の里尾(池脇千鶴)が出戻りで身を寄せていて、謹慎中も献身的に世話をしていました。

兼見は、里尾の行く末も案じているのだが、自分を慕っている里尾の気持ちを知って、一線を越えてしまいます。

 

兼見が亡くなってからも、それを知らない里尾は、生まれた赤ちゃんとともに兼見の迎えを待っているというラストでした。

 

お城で何があろうと、農民はたくましく生き続けるというメッセージも感じたラストで、そのへんはいい感じでしたね。

 

結局、兼見と帯屋の対決はどういう意味だったのかなあ?

兼見は、藩政への批判から連子を暗殺したんだから、帯屋とは連携すべきだったのではないか、と思いました。

命を救われた藩主や津田を救うためだったのかな?

命は捨ててもいいと思っていたはずなのになあ。

原因も結果も、私は納得できなかったのでした。