金森正臣先生のカンボジアの文化・教育・食べ歩き体験記
金森先生のカンボジア日記
味
味
毎日いろいろの食事をしている。そのつどいろいろな味を楽しんでいる。しかし味の正体はなかなかつかめない。
味は食材の持つそのものと、自分の過去の経験の中の記憶とが入り混じっていると思われる。また体調なども、強く影響する。例えば、コーヒーなどもどのブレンドが美味いとか、どの濃さが美味いとかそれぞれの好みはあるが、体調であったり、その日の気分であったり、飲む場所であったりして味が変わる。
例えば、カンボジアで飲むコーヒーは、多くがアイスコーヒーで、熱いのはあまり飲まない。日本では、あまりアイスコーヒーは飲まないが、カンボジアでは逆になる。これにはいくつかの理由がある。カンボジアのコーヒーの多くは、アラビカ種ではなくロブスタ種であるために、やや苦く(これは焙煎方法にもよる)ベトナムコーヒーのようにコンデンスミルクを入れて飲むのが普通である。また環境が熱いので、つい冷たいものが飲みたくなり、アイスコーヒーになる。甘くて冷たいのが美味い。
コロンビアでは、アラビカ種系で、非常に安い。このために首都では主に、熱いのを飲んでいた。国の政策で、良い品は輸出用になり、国内ではそのはねだしが安く流通している。お土産に500グラム2ドルぐらいの豆を持ってきたが、非常に美味しかった。タンザニアでもキリマンジェロコーヒーなど、高地でアラビカ種系のコーヒーが栽培されている。かなり旨いコーヒーであるが、現地ではコーヒーよりも紅茶が好まれ、どこのレストランでもチャイが置いてある。紅茶の葉も上質のものが栽培されていて、旨い茶葉が多い。レストランでは、チャイを飲むことが多い。しかしキャンプ地では、40度を超す気温が下がり始めた疎林の落ちる夕日を見ながら、ハンモックで飲むコーヒーは格別である。
ニワトリの味も各地でかなり異なる。カンボジアの地方に行くと、ニワトリは放し飼いで元気である。結果としてかなり硬いが、味は非常に良い。食事には、スープ系と焼いたものが出るが、どちらもかなり旨い。タンザニアでも同じで、基本的にニワトリは自由に駆け回っている。人々は飼う意識がなく、餌などは与えないので、自分でアリなどを探して自給している。従って、かなり硬い。しかし味は抜群で、なかなか日本では出会えない。また、スープにすることが多いが、出汁も良く出る。アヒルも時々見かけるが、アフリカのアヒルは家の屋根の上まで舞い上がって夜を過ごす。これも旨い。その点では日本のニワトリは、水気が多く、味は薄い。これは飼育方法による品質の低下であろう。極力味付けで補うから、トリの味がしない。
最近コロナ渦で、通信販売が盛んになっている。北海道の食材を手に入れるのも簡単になっている。しかしながら、ウニやカニなどは現地で食べると旨いが、時間がたつと如何なものであろうか。現地で食べていない方が、幸いかもしれない。
味はどうしても過去の経験と関係して判断するから、簡単にそのものの味では評価できないように思われる。