金森正臣先生のカンボジアの文化・教育・食べ歩き体験記
金森先生のカンボジア日記
今日も雨
今日も雨
雨が続き各地で被害が出ている。川の濁流を見ていると、学生時代のことが思い出される。伊勢湾台風の時、大学1年であったと思うが、わが村も洪水が起こり多くの家屋が流された。
次の、年であったと思うが山岳部の夏の合宿で、黒部川の上ノ廊下にいた。今は黒部ダムの底に沈んでいるが、場所は薬師岳の下で、赤牛岳との間に当たる。当時はまだ電波事情が悪く、谷の中に入るとラジオもほとんど聞き取れなかった。
ルートは黒部ダムの底の「平の渡し」からではなく、薬師沢を下って黒部の谷底に降りた。低気圧が来ていることは天気図を書いて理解していたから、テント場は河原の岸辺にした。ところが夜になった雨が降り出し、増水の危険を感じて川岸の崖の上にテントを移した。それから3日間ほど降り続き、黒部川は濁流になった。テントまで川を流れる岩がぶつかり合う地響きが聞こえ、時によるときな臭い臭いがした。昼間見る川は異常な光景で、数トンもある岩が、川の表面を流れていた。地理の専門で信州大学の教授になった先輩に聞くと、底にも岩が流れており、従って大きな岩が浮き上がるのだと言う。時々鉄砲水が出るらしく、急に増水することもあった。
結局黒部の「上ノ廊下」は諦めて、4-5日後に薬師沢を登って薬師岳の稜線にテントを張った。8月2-3日ごろだと覚えているが、次の朝周囲に霜柱が立っており、これは初霜か、遅霜かと話題になった。後で調べたら、その夏の最高気温がすでに出ているか、後から出るかで、初霜か遅霜かが決まると言うことであった。
川の濁流の映像を見ていると、遠い昔の記憶が蘇る。言葉ではなく体験したことは、長く体に残っている。ドイツの哲学者シュタイナーの目指した教育は、この様な身体にめり込んだ知識(教育学者太田堯氏の言葉)を目指したと思われる。