私大の医学部の入試問題

私大の医学部の入試問題   2018.12.18.

私立大学の医学部の入試は、以前からいろいろ問題を含んでおり、簡単には変化が無いと思われる。私が43年ほど前に大阪市立大学の医学部に転出したころ、付近に生物の研究者がいなかったので、理学部や付近の私大医学部の生物担当者らのゼミに参加していた。

医学部は、設備や病院にかなりの費用が掛かり、卒業生の子弟からの寄付は重要な財源であった。そのため卒業生の子弟で入試の点数が足りない受験者はいいカモで、1点100万円とも言われて追加合格を行っていた(ちなみに私の月給は20万に満たなかった)。

私学の教授は、まともに雇うと経営が難しくなるので、どこかの国・公立大学などのリタイヤ組が多く、大学に常駐しているのは少ないようであった。従って大学の教育力も、そこそこに低下する。かなりエネルギーの落ちた教授は、教育力も低くなる場合が多い。また、大学の教育では、授業以外に、人間性や考え方を伝えることが重要であるが、あまり学校に居なくては、学生は学びようがない。

医学部の学生は医師の国家試験のために多くの労力を払うために、一番いろいろ幅広く吸収するべき若い時期に、国家試験の詰め込み教育に終始する。十分に余裕のある学生は問題ないが、やっと医学部に合格したような学生にとっては、国家試験以外の様々な幅広い教養を身に付けるのはかなり難しい。例えば、私の居た医学部は国家試験の合格率が高く、90%を超えており常にベストテン入りして居た。ところが非常勤に行っていた京都大学は、国家試験の合格率は80%前半ぐらいで、ベストテン以下であったように覚えている。しかし学生には余裕があり、天体観測が好きで花山の天文台に入り浸っている学生やクマが好きで青森まで出かけてクマ観察に明け暮れている学生がいた。聞いてみると国家試験ぐらいはいつか受かるから心配していないとのことであった。私のいた医学部の学生は、合格率は良いがそこまでの余裕は見られなかった。

順天堂大学の医学部の説明で、女子はコミュニケーション力が高いという発言は、論文さえ正確に読めない教授が学部をリードしていることを露呈して、ヒンシュクものである。まして卒業生が十分な教育を受けていると思うのは、早とちりの気がする。現在の医者は、患者が十分に吟味してかかる必要がある。

一般に私大の医学部は、国家試験の合格率でランク付けされる。ワースト10未満ぐらいになると、大学であらかじめ予備試験をして、あるレベルに達しないと国家試験を受験させない。それでも合格率は上がらず、大学のランクは下がる。私の知っている限りでも、12年間も在籍しても、国家試験に通らず医師になれない学生が2-3割出ることも珍しくなかった。努めている友人に聞いてみると、それでも実家に帰って医学部卒の理事(医師になれなくても医学部は卒業できる)として病院を経営すれば、結構目的は果たせるようである。大きな病院などを持っている卒業生は、いくら金をかけても子どもが医学部に入れれば採算は合っているようであった。

この様に、私大の医学部の入試は昔からあまり公平と言える状態ではなかった。こんなことを何十年もしていれば、感覚が鈍くなっており、今回の私大医学部入試問題はそれが明るみに出たと言うことであろう。

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