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●科学技術ニュース●理研と京都大学、量子もつれの伝達速度限界を解明しボーズ粒子系における新たな理論的発見と量子計算へ道

2024-04-09 09:40:32 |    物理
 理化学研究所(理研)量子コンピュータ研究センター 量子複雑性解析理研白眉研究チームの桑原 知剛 理研白眉チームリーダー(開拓研究本部 桑原量子複雑性解析理研白眉研究チーム 理研白眉研究チームリーダー)、ヴー・バンタン 特別研究員、京都大学 理学部の齊藤 圭司 教授の共同研究チームは、相互作用するボーズ粒子系において量子もつれが伝達する速度の限界を理論的に解明した。
 
 同研究成果は、多数のボーズ粒子が相互に作用することで生じる量子力学的な動きを理解する上で新しい洞察を提供すると同時に、量子コンピュータを含む情報処理技術における根本的な制約を解明することにも寄与すると期待される。

 量子力学で現れる最も基本的な粒子であるボーズ粒子が相互作用を通じてどのくらいの速さで量子的な情報を伝達できるのか、という問題は長年未解決であった。

 同共同研究チームはリーブ・ロビンソン限界と呼ばれる概念を考察し、情報伝達速度の持つ限界を理論的に解明しました。

 その結果、もう一つの基本粒子であるフェルミ粒子と異なり、ボーズ粒子は情報伝達の加速という現象を起こすことを明らかにした。

 同研究の応用として、リーブ・ロビンソン限界を活用して、量子コンピュータ上で相互作用するボーズ粒子系をシミュレートする新しい手法を開発した。

 量子多体系では、多くの量子力学的な粒子が複雑に相互作用しており、これを従来のコンピュータで正確かつ効率的にシミュレートするのは難しい課題。ここで量子シミュレーションの技術が重要な役割を果たす。

 同共同研究チームは、量子コンピュータを使用して量子ビットを操作し、目的の量子系をデジタル的に模倣するデジタル量子シミュレーションに焦点を当てた。

 このプロセスでは、ボーズ粒子の動きを模倣するために、時間を細分化して区間ごとに適切な量子演算を実行する必要がある。量子もつれの生成量、つまり時間内にどれだけの量子もつれが生じるかは、必要な量子演算の量を決定する鍵となる。

 同研究で得られたボーズ粒子系のリーブ・ロビンソン限界により、量子もつれの生成量を定量的に評価することが可能になった。

 これにより、ボーズ粒子のデジタル量子シミュレーションを、高い精度を保ちながら最も効率的に実行するための方法が確立された。この進展は、量子シミュレーションの分野における大きな一歩となり、複雑な量子系の研究や量子コンピューティングの応用範囲を広げる可能性を秘めている。<理化学研究所(理研)>
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