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●科学技術ニュース●IMS、筑波大学と茨城県立中央病院、嗅覚センサと機械学習により呼気から肺がんの有無を予測

2024-05-21 09:34:15 |    生物・医学
 物質・材料研究機構N(IMS)と筑波大学、および茨城県立中央病院からなる研究チームは、嗅覚センサと機械学習を組み合わせることで、肺がん患者さんの術前と術後の呼気を高い精度で識別できる可能性を実証した。

 この呼気がん診断法は、簡便かつほとんど体に負担をかけない方法で実施できるため、将来的にがんの早期発見と早期治療に貢献する技術となることが期待される。

 これまでの肺がんのスクリーニング方法では、低線量コンピューター断層撮影 (CT) スキャンが主流であったが、放射線被曝のリスクや偽陽性、高いコストなどの問題があった。

 そのため、より安全で経済的かつ簡便な新しいスクリーニング方法の開発が求められていた。

 同研究では、NIMSで開発された膜型表面応力センサ (Membrane-type Surface stress Sensor, MSS。超高感度・小型・化学的多様性を有する嗅覚センサ) と機械学習を組み合わせて、手術前後の患者さんの呼気を分析し、肺がんの有無を予測する機械学習モデルを構築した。

 その結果、80%を超える精度で肺がんの有無を検知可能であることが確認された。

 これまでの研究と比較して特筆すべき点として、手術前後の呼気を用いることで個人差を抑制して得られた結果である点と、同研究チームによって確立された再現性の高い測定・解析方法を用いた点が挙げられる。

 今後はこの研究成果を基に、各種のガス分析装置を用いた実験と組み合わせて、肺がんの存在を示す分子を特定するなど、より明確な科学的裏付けを確立して行くことを目指している。

 この技術は、将来的には肺がんに限らず様々ながん種に対応したスクリーニング方法として、がんの早期発見・治療に貢献する革新的医療技術となる可能性がある。

 同研究は、筑波大学附属病院呼吸器外科の佐伯祐典病院講師、同大医学医療系の巻直樹客員研究員、北澤伸祐講師、佐藤幸夫教授と、NIMS高分子・バイオ材料研究センターの根本尚大エンジニア、南皓輔主任研究員、今村岳主任研究員、吉川元起グループリーダー、マテリアル基盤研究センターの田村亮チームリーダー、および茨城県立中央病院の稲田勝重研究員、磯田愉紀子研究員、小島寛副院長によって、日本学術振興会 科学研究費助成事業および官民研究開発投資拡大プログラム の一環として行われた。<物質・材料研究機構N(IMS)
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