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●科学技術ニュース●東北大学など、10億分の1秒の原子運動を見る放射光技術を開発し材料開発や生命現象の機構の理解に大きく貢献

2024-07-12 09:37:20 |    化学
 東北大学 大学院理学研究科の齋藤 真器名 准教授を中心とした研究グループは、理化学研究所の初井 宇記 グループディレクターら、高輝度光科学研究センターの依田 芳卓 主幹研究員ら、住友ゴム工業株式会社と共同で、従来は測定系に1つしかなかった時間分解能を2つ持つ、原子運動の新しい放射光X線分光型測定技術を作り出すことで、0.1ナノ~100ナノ秒の広い時間領域で原子・分子・ナノ構造体の運動を測定することを可能にした。

 また、最新の2次元高速X線カメラCITIUSを用いることで、動いているものの時間スケールだけでなく、空間的な大きさの同時測定も実現した。

 同手法は、測定対象の制限が少なく、内部まで非破壊で観測でき、生体モデル系も含めた多くの対象に適用可能で、より優れた特性を持つ材料開発、生命現象の理解が大きく加速する。

<ポイント>

 ・10億分の1秒(ナノ秒)程度で起こる原子・分子・ナノ構造の運動は、産業材料の機能や特性、生命現象のメカニズムの理解に特に重要な運動の1つ。しかし、放射光ではその観測が大きく制限されていた。同研究グループは、0.1ナノ~100ナノ秒という1ナノ秒を含む広い時間で、原子運動を高精度で測定可能な新しい放射光技術を開発した。

 ・次世代2次元X線カメラを用いることで、詳細な原子の構造も同時に測定でき、タイヤなどの産業材料開発、生命現象理解が大きく加速する。

 ・ナノ秒程度で起こる原子・分子の運動は、物質の硬さや壊れやすさなど、多様な物質の特性や生体機能の最も基本的な起源の1つ。分光型と呼ばれる従来の原子運動の測定装置では、運動を観測できる時間範囲は装置性能から決まるある1つの時間(時間分解能)の近辺に制限されてしまうことなどから、放射光ではナノ秒程度の原子運動の観測はこれまで大きな制限があった。

 同研究は、科学技術振興機構(JST) CREST JPMJCR2095および理化学研究所のSACLA/SPring-8基盤開発プログラム 2022-2023によってサポートされている。<科学技術振興機構(JST)>
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