【靴のようで靴に非ず、、、On】
体の防衛本能とは大したもので、経験した痛みをちゃんと覚えていて、少しでも前と似た信号が入ってくると実際には大したことないような状況でもダメだぁと痛みを出して動きを止めさせ、体を守ってくれる。そんなことが度々ある。
患部そのものはさほど悪くないのに、結構な痛みがやってくる。嘘をついているのかと問い詰めれば、決してそんなことはなく、脳波的にはちゃんと痛みを感じているのだそうな。
これを称して「ダミー痛」と言う。
第1回UTMFのレース中、本栖湖から先、膝が痛くなって走るどころではなくなり、ようよう足を引きずりながらるひたすら歩き通していた。
ところが残り2kmくらい、頑張れば目標タイムに届くかもということに気づくと、急に走れるようになった。更に残り500m、深夜なのにかなりの人たちが声援を送ってくれる。爆発的な元気が湧き上がり、ラスト100mはそれこそ全力疾走。別人誕生だ。
そして、ゴールしてしまえば、先ほどまでの膝の痛みなんて何処へやら。
これも体(脳)が限界を感じ、もうやめておけと。
この時、脳が運動をストップさせるために発していた痛みが「ダミー痛」。
以前治療院に通ってくださっていた戦争で片足を落とされた方が、ない方の膝が痛い、足首が痛いと訴えることが時々あった。
「幻視痛」と呼ばれているけど、これもまさにダミー痛だ。
本物の痛みとダミー痛、似て非なるもの。ここを見極めることがかなり難しいのだ。