十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

2999 藤

2017-08-05 | Weblog
藤房を昇る水の香ありにけり
天網に絡まる藤の匂ひかな
別別の風に吹かれてソーダ水
青葉木菟百度石より夜の更けて


*「阿蘇」8月号当季雑詠、山下しげ人選

【選評】豊かな香りをこぼしている藤房を見ていて、花を咲かせ実を付けるために幹や枝を伝わって運ばれてくる養分や水の中にその香りが既に含まれていると感じ取ったのである。虚子の有名な紅梅の句と同じく表面に現れ出ない物の本質を詠んだ一句である。(しげ人)

 今年も熊本県北の日吉神社「山田の藤」を見に行きました。参道に天蓋のように設けられた藤棚からは、良い香りが立ち込め、藤房も手に取れるほどの近さ。当季雑詠で選評を頂き、あの時の感動が蘇りました。(Midori)

柿の花

2017-08-03 | Weblog
学成りて村捨て柿は花落す     安形静男

「少年老い易く学成り難し」とは、よく言われたものだが、掲句では「学成りて」である。高校大学への進学率は大きく向上したものの、生まれ育った町や村に残る若者たちの数は少ない。「学成りて」「村捨て」「柿は花落す」の動詞の畳みかけが、どうしようもない現実を物語る。「阿蘇」8月号より抄出。(Midori)

夏兆す

2017-08-02 | Weblog
墳丘に大王のこゑ夏兆す     堀 伸子

熊本県北を流れる一級河川、菊池川流域には、多くの古墳が造営されている。出土された副葬品は、被葬者の権力の大きさを物語るが、「大王」とは、その権力者のこと。墳丘に聞こえて来たその「こゑ」に、夏の兆しを感じた作者である。「大王のこゑ」に、「夏兆す」が配されて、いかにも生命力の漲りを予想される一句となった。「阿蘇」8月号より抄出。(Midori)

2017-08-01 | Weblog
女滝てふ水の絵姿仰ぎけり     西  美愛子

男滝に対していう「女滝」。いかにも楚々と水が落ちてゆく様を想像されるが、それを「水の絵姿」とは、どこまでも美しい。まるで中世の美女を思わせるような大胆な比喩に、作者の限りない感性を感じたことである。「阿蘇」8月号より抄出。(Midori)