今日も秋晴れ、眩しいばかりの日差しは汗ばむほどです。それでも、先日まで直接カップに注いでいた珈琲が、カップを温めないとぬるくなってしまう、そんな時「あ~~秋は深まっているんだなぁ」なんて思ってしまうのであります。
朝なぎに 来寄る白波見まく欲り
我はすれども 風こそ寄せぬ
(作者不明)
朝の凪に寄せて来る白波のような恋人を見たいと思いはするけど、風は波を寄せては来ない・・・・
「あ~あのお方にお逢いしたいけど、どうにもこうにもそのチャンスはやって来ない、それでもやっぱり逢いたいわ」
てなところでしょうか?
万葉集巻7に載る作者不明の歌だそうですが、いかにも万葉の恋歌でありますねぇ・・・
いやいや、そういう話題ではなく、
その珈琲を飲みながら新聞を読んでおりますと、カワイコチャン綾瀬はるかに関する「ゾクゾクする絶対美人」という記事も気になりながら、社会面に載っていた「最古の万葉歌木簡」との記事に目が留まりました。
奈良県明日香村の石神遺跡(飛鳥時代)から出土した7世紀後半の木簡に、国内最古の歌集、万葉集の歌が記されていたことが、森岡隆・筑波大准教授(日本書道史)の調査でわかった。
のだそうで、
その木簡に記されているのが、この「朝なぎに 来寄る白波見まく欲り・・・」であるというのです。
木簡は7世紀後半のものと推定され、万葉集巻7成立時期より少なくとも半世紀以上古い時代の物なのだそうですよ。
って、あはは、じつは私はそんなことはどうでもいいというか、「半世紀違ったからって、なんなんじゃい」といった感じなのですが、この木簡に書かれた文字がこの歌だろうと推定する過程に興味が湧きました。
森岡教授によれば、通常木簡は右から書く例が多かったため今まで意味が判明できなかったけど、土器に左から歌を書く例があったことから判断したんだそうですが、なんとこの文字には万葉仮名の誤字となまりがあるのだろうというのです。
木簡の写真と書いてあった文字はこちらで確認できますので、ご覧いただければと思いますが、
「朝なぎ 来寄る」の「きよる」の部分が「きやる」になっているのはなまり、「白波」の部分が「しらなに」と書かれているのは「弥(み)」という字を「(あ~~ん、字がない)」にんべんに尓の字を着けたような字なんですが、その「に」と読む字と間違えたのだろうという推測で・・・・
万葉の時代の誤字となまりって、なんだかとっても嬉しくありません?楽しくありません?そんなふうに思うのは私だけかなぁ????????
この木簡に書いた人ってどんな人なんだろうって思っちゃうんですよねぇ。
そんでもって、これはかなりの飛躍ですが、東北人としちゃぁですね、もともとこの歌が
「おら、はぁ、にしゃに逢いだくて逢いだくてしかたねぇげんども、ちっともそんだらふうになんねぇんだぁ」
みたいなんだったら笑っちゃうし(絶対に東北弁ということはあり得ませんが)
さらに、誤字でしょ、14世紀も昔の人ですけど、へんに親しみが湧いてくるんです。(笑)
「へへへへへ、誤字だって、笑っちゃうね」って、この木簡を書いた人に言ったら
「誤字脱字の天才には、言われたかないね」って、切り替えされるでしょうけどね。
ちなみに、ネット上のasahi.comの記事には
■「はやり歌」の可能性
上野誠・奈良大教授(万葉文化論)の話 木簡の歌は、万葉集が完成するかなり前から詠み継がれてきた「はやり歌」の可能性がある。口頭で歌われたものを書きとめたため、一部に間違いもあるのだろう。万葉集は訓読みの漢字や万葉仮名で書かれた後世の写本しか残っていないが、7世紀後半の時点で万葉仮名で歌が書かれていたことがわかり、非常に意義深い。
とありましたので、今でいえば、歌詞カードがない歌を覚えたくて、音源を聴きながら一生懸命歌詞を書き取って、完全に覚えたつもりでカラオケで歌ったら、歌詞が微妙に違ってたみたいな、なんともこれまた親しみの持てる原因がそこにはあったのかもしれないわけで・・・・
「うん、万葉人良い、とっても庶民的」
そう思ったのでありました。
さて、今日の一枚は、セシル・テイラーです。
昨日、「キース・ジャレットをジャズと感じることが出来ない」などと書いておいて、「おいおい、セシル・テイラーこそ」と言われる方もおるやもしれません。
ブルーノートの前作「UNIT STRUC TURES」ほどの衝撃がない分、本アルバムの方が聴きやすい一枚であるとは思いますが、昨日私がこだわっていたインパクトといった面では、充分伝わってくるものがあります。
特にブルーノートの真髄である綿密なリハーサルが、オーケストラ的サウンドの中で、じつは繊細で緻密なテイラーのピアノを強調しているという感じを受けます。
テイラーというピアニストを好きかと訊かれれば、正直「?」と考える私ですが、たまにこの世界に入り込むのも悪くありません。
そんな時、最も入りやすいアルバムがこれかもしれません。
CONQUISTADOR / CECIL TAYLOR
1966年10月6日録音
CECIL TAYLOR(p) BILL DIXON(tp) JIMMY LYONS(as) ALAN SILVA, HENRY GRIMES(b) ANDREW CYRILLE(ds)
1.CONQUISTADOR
2.WITH