JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

無節操の勧め?

2008年10月27日 | d-f

今日から読書週間、みなさんは本を読んでおられますか?
かく言う私は若い頃の量には及ばぬものの、テレビ離れも伴って一時はかなり遠のいていた活字に、また心引かれる日々を過ごしています。
とは言っても、小遣いのほとんどをアルコールにつぎ込む状態で新刊をあさるのには限界がありまして、もっぱら図書館の利用と昔読んだ本の読み直しが中心となっていますけどね。(笑)

私の読書の欠点というと「斜め読み」「重ね読み」しかもジャンルや趣向などお構いなしの「無節操読み」、ヘタをすると内容を理解しないままに読み終わるということが間々あるわけで、まぁ、そのおかげで以前読んだはずの本も新刊のごとく読み返しが出来るという利点もあるのですけど。(笑)
今現在もいっぺんに4冊の本をTPO(笑)に応じて読み分けておりますが、内、新刊は一冊のみ、後は図書館からの借り物が一冊に、学生時代に読んだジャズ本一冊、二十数年前の本が一冊というありさまです。

それでも、読み直しに関しては、それを読み直そうというきっかけというものがあるもので、現在読んでいる二十数年前の本『-完全版- 三光』なんてぇのもそんな一冊です。

ご存じの方も多いと思いますが、この『三光』は、一時大論争を巻き起こした本でありまして、方や「中国に於ける旧日本軍が行った戦争犯罪を、本人達が明かした赤裸々な事実で語られている」と称し、方や「これは中国のプロパガンダだ」「左派系のプロパガンダであり、史実を湾曲するものだ」と批難する、ある意味今も続く、中国国内で行われたとされる旧日本軍の犯罪を巡る論争の一つの火種となった本でもあります。

私が持っているのは、神吉晴夫氏が編纂した1957年版ではなく、後に森村誠一氏らが編纂した『新編三光』第一集、第二集(厳密には第二集は発刊されなかった)をさらに一冊にまとめたいわば最後の『三光』初版ということになります。

おっと、勘違いしないでください。私はこの本を巡る論争に加わる為に今読み直しているわけじゃありませんよ。
それじゃ読み直しを始めたきっかけは何か?それはやっぱり「中国五輪」だったわけで、あくまで「あらためていろんな中国関連の本を読み直してみようかなぁ」なんて思った延長上のものなのです。

本が与える影響力というのは、本人が思う以上に大きかったりすることがあります。この本を始めて読んだときも、純真無垢な私(笑)に大なり小なり影響を与えたことも事実でしょう。しかし、人間ある種しらけた目線で書物や情報を見る必要も情報多可の時代には必要なのだと思います。
公に流れる情報にある程度のプロパガンダ的要素が含まれることは当然ですし、だからこそ多くの見地からそれをどう見ているのか知る必要もある、そういう考えからすれば趣味趣向など関係無しに本を読む「無節操読み」も必要なことではないかと・・・・・

あはははは、いったい何が言いたいかって、ようは自分の「無節操読み」を肯定したいだけなんですけど(笑)、
ともかく、読書の秋、いろんな書物に触れながら、いらぬ知識を増やしていきましょうよ。

さて、今日の一枚は、私が毛嫌いしている「E.S.P」以降のマイルス・デイビスです。
毛嫌いしてるなら紹介するなって?
いやいや、ジャズもまた、趣味趣向を考えずに聴く「無節操聴き」は、必要なことなのですよ。(笑)

今読み直しているジャズ本、植草甚一氏の「マイルスとコルトレーンの日々」(もう何回読み直したでしょう....笑)の中にこんな一文があります。

マイルス・デイヴィス五重奏団の「キリマンジャロの娘」は、全部の曲目がフランス語になっている。キザな真似をやるなぁ、と思いながら聴きだしたところ、とてもいい。
<中略>
それにしても、どうしてフランス語の曲名にしたんだろうと不思議になって見なおすと、その五曲が全部マイルス・デイヴィスの新しい作品なのだ。こんなことは最近はなかったのである。ずうっと彼の五重奏団は、ウェイン・ショーターの作曲が、大いにモノをいってグループのジャズ的感情をおしだしてきた。そこにはオカルティズムの要素が入りこんで、神秘的で暗い感情を表現するかと思うと、ロック調になって明るくなったりする。
<中略>
それが、こんどは同じマイルスでも、ちがったマイルスみたいに聞こえてくる。ロック調になったのは、たしかに若いジャズ・ファンに訴えかけようとしたのだった。けれど彼らはロックにたいするような反応をしめさない。そこでマイルスは、ほんとうにモダン・ジャズを理解している人たちを相手にしたくなったに違いない。それが「キリマンジャロの娘」であり、フランス題名にしたのは、そういった気持ちを、そのなかに隠したいという理由があるらしい。

この文章を読んで、久しぶりに針を落としてみたのです。
純真無垢な私は、やはり影響を受けやすいのでしょうか?たしかに今こうして聴くと、悪くないのであります。(笑)
ただ、植草氏は「ロン・カーターのベースが入りこんでくるあたりが素晴らしい」とおっしゃっておりますが、今私が聴くと、1曲目と5曲目、つまりディブ・ホランドのベースが入った演奏が良かったり思うのは完全な影響下には無いということでしょうか(笑)

ともかく、毛嫌いはいけませんね、私も読書スタイルのごとく「無節操聴き」を実行せねばいけません。

FILLES DE KILIMANJARO / MILES DAVIS
1968年6月19,20,21日, 9月24日録音
MILES DAVIS(tp) WAYNE SHORTER(ts) HERBIE HANCOCK[2,3,4], CHICK COREA[1,5](p,elp) RON CARTER[2,3,4], DAVE HOLLAND[1,5](b) TONY WILLIAMS(ds)
[GIL EVANS(arr)]

1.FRELON BRUN
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