JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

時進日歩?!

2007年02月20日 | a-c

連日のTV話で申し訳ありませんが、昨晩、NHK総合で『プライム10ピアノ・華麗なるワンダーランドへようこそ』という番組が放映されておりました。
細かい内容についてはここでは省略させていただくとして、まずもってビックリしたのは、番組後半で紹介されていた「遠隔自動ピアノ」(そういう名前ではありませんが)でありました。

なんとまぁ、ニューヨークで上原ひろみが弾くピアノ演奏を、リアルタイムで東京のスタジオのピアノが自動演奏するという・・・もちろんタッチもそのままに・・・
なんとも恐ろしい時代ではありませんか。
もちろん、同型同音色のピアノが同条件でそこに存在しないかぎり、全く同じ音は追求できないのかもしれませんが、録音媒体を通して聴く音よりもはるかに原音に近い音が、遠距離でリアルタイムに聴くことが出来る・・・・・・
番組内では、「これで遠距離のピアノ・レッスンが可能となる」的な趣旨を強調されておりましたけど、私のような田舎在住リスナーとしては、じつにゲスな考えが浮かぶわけで。

例えばですよ。
都内のでかいコンサート会場で、上原ひろみのソロ・コンサートがあったとしましょう。
何千人も入る会場でその演奏を聴くより、その時、リアルタイムに我が田舎のピアノ・バーで、酒を飲みながらその演奏を聴けたとしたら・・・・
あるいは、つないでいる回線は高速インターネット回線との説明でしたので、何らかの電気信号で送られているということでしょ、ということは、これをCDかDVDといった記憶媒体に保存すれば、『生演奏CD(DVD)』なるものが出来るわけじゃありませんか・・・・・
おいおい、これから世の中はどんなになってしまうんじゃい、みたいな(笑)

「バブさん、いずれCDもレコードも無くなってしまうんでしょうね」
iPod等々のMP3方式プレーヤーの普及で、音楽媒体が全てデータ化された音源のみに変わってしまう等の不安を持つ方も増えてきています。
そんな時、
「何言ってんの、電子図書がいかに便利でも本は無くなんないでしょ。あれと一緒でね、人間には物体収集癖っていうのがあって、形として手元に置きたいとの欲求があるかぎりは、CDもレコードも無くなんないよ。」
と答える私・・・・・・しかし、その実、CDなんかは間違いなく消えていく運命にあるのかと思ってもいます。


音質のムチャクチャいいHDオーディオが出来て
しかも、モニター付きで、ジャケットの替わりに
こんなんが表示されたりして・・・・何だか寂しい

昔、ジャズのレコードが、まるでいっぱしのジャズ喫茶のごとく棚を埋める知り合いの部屋に行って、よだれを垂らさんばかりにうらやましがった私、今でもレコードには同様の愛着を感じます。
同じように、CDが棚を埋める姿も魅力はあるものの、レコードほどの愛着が湧かないのもたしかですけど。
この一種独特の「愛着心」は、じつは全くの時代遅れで、今後こういった人種は減っていく運命にあるのでしょう。とすれば、いずれハードディスクに収められたアルバム(とは言えないでしょうね)の数に愛着が湧いてくるのか?・・・ははは、これはないでしょ。やっぱり、今ある媒体も、我々旧人類も、消えて無くなる運命なのかもしれません。

話が大幅にずれてしまいました。
ともかく、技術の進歩はまさに「日進月歩」、いやいやそれどころか「時進日歩」、旧人類には追いついていけないスピードを供えています。
十数年後に生きていれば(その前に肝臓を患っていなくなる可能性も高いですけど)、その時、旧人類バブは、どのような音楽ライフをおくっているのでありましょうね。

さて、今日の一枚は、オーネット・コールマンです。
何故コールマンを選んだのか?
私がついて行けるジャズの流れが、おそらくこのアルバムあたりまでということかもしれません。つまり、これ以前に常に停滞する旧人類なのであります。エレクトリック・マイルスや、ハービー・ハンコックの「HEAD HUNTERS」といった電化ジャズには、全くついて行けず、かといって、クロス・オーバー(それ以前もジャズは常にクロス・オーバーなのですが)、フュージョンといった類にも共感できず、その結果、その後起こった「ネオトラディショナリズル」といった流れにも取り残されたような・・・・・
それでいて言うことがいい
「それ以前をまだまだ聴き込んでないから」
まさに年寄り、旧人類の何者でもありません。

またまた、話がずれてしまいました。
テキサス州フォートワースという、いわゆるジャズのメイン・ストリートから大きくはずれた地でコールマンは育ちました。地元のR&Bバンドで働き、ミュージシャンとしての仕事がなければ、皿洗い、エレベーター・ボーイをして、いつかロサンゼルスに出たいと夢見る若者だったのです。
ある日、隣で寝ていた母の枕を蹴飛ばし、
「ウジ虫ども、ジャズは生まれ変わったのだ!」と叫んだのだそうで、この奇行は神の啓示に基づくものだったそうです。
翌日から彼の演奏は、例のブヒョブヒョ吹きまくるスタイルへ変化しました。

彗星のごとくジャズ・シーンに現れたコールマンは、彼の意志とは別に、コマーシャリズムな流れに翻弄されることとなります。
そんななか彼は1962年12月21日、ニューヨーク「タウン・ホール」でのコンサートを、自分の最後の舞台と決めて挑みます。以降3年間、彼はジャズ・シーンから姿を消し、エレベーター・ボーイとして生活をおくったのです。
そんな彼が突如こんどは、ヨーロッパで活動を再開しました。その時の録音がこのアルバムということになります。
ブルーノート4224番(今日のアルバム)、4225番(Vol.2)、あなたはコールマンの3年のブランクをどう捕らえますか?

THE ORNETTE COLEMAN TRIO AT THE "GOLDEN CIRCLE" STOCKHOLM Vol.1
1965年12月3,4日録音
ORNETTE COLEMAN(as) DAVID IZENZON(b) CHARLES MOFFETT(ds)
(1).INTRO
2.FACES AND PLACES
3.EUROPEAN ECHOES
4.DEE DEE
5.DAWN