毎日のできごとの反省

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書評・「カエルの楽園」が地獄と化す日・百田尚樹・石平共著

2017-04-20 17:45:29 | Weblog

 実は、百田氏のカエルの楽園はまだ読んでいないのだが、この日中関係をテーマとした寓話小説について、実際に起きていることが、如何にこの寓話小説の通りになりつつあるか、ということを両氏が対談したものである。カエルの楽園は、中国であるウシガエルの国が、日本であるナバージュというカエルの楽園をいかに侵略していくか、という物語である。

日本の多くのマスコミ、特にテレビでは、中国軍艦や軍用機が尖閣付近で挑発行為をしても、自衛隊を出動させて中国を刺激してはならず、対話をすべきだと一方的に日本の自重を求めるだけなのだが、これらのセリフが、カエルの楽園に登場するディスブレイクというナバージュのカエルの言葉にそっくりで、石平氏によれば、一種の予言の書となってしまっている、という。

国際法では、軍用機がレーダー照射を受けた場合、攻撃を受けたものとみなして、反撃撃墜することが一般的権利なのに、自衛隊は絶対そのようなことをしてはならない、と法的にも政治的にも規制されているし、多くのマスコミもこれに同調している。また、他国の侵略を受けても話し合えばいいし、最後は降伏すればいいのだ、と多くの左派言論人は主張しているし、テレビマスコミも本音はこの論調である。

このことを二人は、日本が米国に負けたときの占領で残虐な行為を行わなかったし、平和憲法という有難いものさえ与えてくれた経験から、中国などの他の国の占領も同様だろうと思っている日本人が多いからであろうというのだ。米軍の占領が比較的平和的だった原因は、特攻隊や硫黄島などの日本人の勇敢な戦いを経験した米国は、非道な占領をすれば日本人は決死の戦いを挑んでくるから、平和的に占領し日本人の精神を改造してしまうしかないと考えたからである。

だが、小生は一見平和的な占領だったかに見えても、米占領軍による強姦、略奪、殺人などの不法行為は今伝えられているよりも、遥かに多かったのだが、GHQによるマスコミ検閲や、嘘の日本兵の残虐行為の宣伝などで、日本人が騙されているために、日本の被害が矮小化されている、というのが真実だと考える。もっとも中国に侵略されたら、これより遥かに非道な行為が行われる、というのは両氏の言う通りである。

その例として本書では、チベットやウイグルで行われ、現在進行形で行われつつある残虐行為を具体的に書いているが、おぞましいものである。これらのことが信じない日本人が多くいる。インターネットでチベットを調べたら、「解放」前のチベットがいかに野蛮な風習に満ちていたことが書かれていたサイトがあった。ダライ・ラマがCIAの手先として働かされている、という本さえ書店にあった。

チベットやウイグルで実際に起きたことを信じない、反日日本人は、常に中共からのこのような情報を教え込まれて、信じこまされているのであろう。中共のプロパガンダと言うのは、昔から物凄いものがあることは自戒しておかなければならない。

「南京大虐殺」などの嘘宣伝がいきわたった結果、日本が反撃さえしなければ、中国は侵略するはずがないし、仮に占領されても中国人による残虐行為もない、というのが「ディスブレイク」のような日本人の精神の根底にあるのだ。侵略や残虐行為をするのは日本人の軍隊だけだ、という思い込みが牢固としてある。

たまたま「歴史群像」平成29年4月号に「尼港事件」の記事があった。シベリア出兵の際に、ニコラエフスクで、白軍兵士や現地ロシア人、日本軍守備隊や民間人などが赤軍パルチザンに数千人が惨殺された事件である。この顛末は日本が自重すれば安全である、というのがいかに間違いかを証明している典型である。

尼港は、主要海産物の鮭を日本に輸出するために、約400人の日本人が居留していた。そこを後のソ連軍となる、赤軍パルチザンが2000人で包囲した。北海道にいた師団長は、救援に行くのはできないので、無理をせずに平和的に解決し赤軍と和平しろ、と現地部隊に命令した。これに対して、日本に味方した白軍の指揮官は、赤軍との合意は必ず裏切られる、と反対したのだが、現地の指揮官は師団長命令を拒否できるわけもなく、尼港を開城し停戦した。

開城の条件は日本軍が白軍の武装を解除すること、白軍元将兵の過去の行動は免責する、市民の財産と安全を保障する、赤軍入城後も日本軍が居留民の保護を続けること等であったそうである。警告通りこの約束はすぐに反故にされた。白軍の将兵の拷問虐殺はもちろん、一般市民も殺害された。

尼港の住民の訳半数の6000人が殺害され、そのうち日本人(守備隊も含む)は分かっているだけで、730人が惨殺された。筆者は結局は力の裏付けのない約束は無意味、と結論している。このような赤軍の蛮行は、ロシア各地で行われたが、隠蔽されて白日の下にさらされはしなかった。

この事件だけが有名になったのは、生存した日本人が証言したからである。ひどい話はまだ続く。この蛮行の指揮官のトリアピーツィンは、日本による非難で責任をとらされ、「共産主義に対する信頼を傷つけた反逆者」として銃殺されたそうである。小生は子供の頃、雑誌で尼港事件の顛末を読み、壁に「共産主義はわれらの敵」というような意味の血書が犠牲者によって残されていた、とあったことが忘れられない。これ以来、小生は共産主義は残虐非道なものだと知った。

いずれにしても、日本が反撃さえしなければ、中国は侵略するはずがないし、仮に占領されても中国人による残虐行為もない、というのが「ディスブレイク」のような日本人の言い分が間違っていることは、尼港事件の例でも明瞭である。不可解に思えるのは、同じロシア人でも赤軍(共産党系)が約束を守らず残虐行為を平然とするのに、白軍は必ずしもそうではない、と思われることである。

同じ支那人でも、毛沢東率いる共産党の残虐非道や民族絶滅政策は、必ずしも全て清朝などの王朝の慣行を引き継いだものではない。少なくとも中共以前の多くの支那王朝は残虐行為は珍しくはないが、宗教や民族言語に関しては比較的寛容であったように思われる。ベトナムやカンボジアなど、共産主義の直系政権は、やはり残虐行為をしているから、共産主義教育そのものにも問題があると思われる。

それは必ずしも、マルクス・エンゲルスの主張ではなく、それを敷衍して実現した、トロッツキー、レーニン、スターリンあたりに淵源を発しているのだろう。敢えてトロッツキーを例に入れたのは、彼が亡命してソ連政府により暗殺されたから、日本人はトロッツキーを同じ共産主義者でも、比較的自由主義的である、という誤解があるようだからである。トロッツキーは単に政争に負けたのに過ぎない。

百田・石平の両氏は「反中分子たちの一斉逮捕」と「共産党に入党して、苗字も一字に変えて中国風にし、中国語を操ってうまく生き延びる。いまマスコミで活躍している反日文化人はそうやって転身を図る人が続出するでしょう。」(p246)と書くが、これはあまりに甘い考え方であろう。

確かに日教組や左派知識人や左翼マスコミは、日本侵略の過程では活用できるであろう。支那には漢奸という言葉がある。支那人を裏切った支那人のことであり、平和になれば極刑にされる。同様に日本を裏切った反日本人などは、自らの祖国を裏切る到底信頼できない人物である。中共に言わせれば、漢奸ならぬ日奸というべき、最も信頼できない人たちである。真っ先に処刑しなければならない。

いずれにしても、中共の日本侵略は、日本を不幸(地獄)にするばかりではない。永遠に支那大陸に住む人々も幸せにはしない。中共幹部は子弟や親戚を欧米に送り込んで国籍を取得させている。いざとなったら大陸から逃げ出す算段である。中共の幹部自身が中共政府を信頼していないのである。