A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

灰野敬二 Hurdy Gurdy Solo@仙川タイニーカフェ 2014.9.6(sat)

2014年09月08日 01時15分15秒 | 灰野敬二さんのこと


◆灰野敬二ライブ@タイニーカフェ◆
日時:9月6日(土)19:00 START
出演:灰野敬二 (オープニングアクト 末森 樹)
場所:タイニーカフェ(調布市若葉町1-42-2)

ヒカシューの巻上公一が総合プロデューサーを務める音楽フェス「Jazz Artせんがわ」の一環で仙川タイニーカフェで灰野敬二のソロライヴが開催された。名前の通りこじんまりとしたカフェ兼バーは4年前に灰野とNon(Non Band)のデュオライヴ以来。地元のロック/アート/文学好きな若者たちの隠れ家風の店。愛情溢れる手書きフライヤーもナイス。限定20名の観客は店の常連や地元のファンが多く、灰野特有のピーンと張った緊張感は余りない。夕方せんがわ劇場に出演したインドネシアの二人組センヤワと内橋和久も来場した。彼らは二日前に秋葉原Club Goodmanで灰野や吉田達也等と対バンした。最前列に座る。演奏者の近さと木製の内装が、2000年代前半灰野が毎月ライヴしていた西早稲田ジェリージェフを思い出させる。
Non+灰野敬二@仙川 Tiny Cafe 2010.9.21 (tue)

●末森樹


オープニングアクトはタイニーカフェでライヴ活動している若手クラシックギター奏者・末森樹。「アルハンブラの想い出」やバッハの曲を端正に演奏。かなりアウェーな状況だが物怖じしない態度が潔い。
末森樹公式ブログ

●灰野敬二

(写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。)

スタッフがお香に火をつけ、椅子とアンプをセッティング。灰野が現れハーディーガーディーの調整を始めると、店のシャッターがゆっくりと閉められる。ガラガラという音を立てて窓の外に鉄扉が降りてくるのを見ていると、閉じ込められて拷問を受ける虜囚になった気がしてくる。こんな至近距離でこの黒い砲弾状の擦弦楽器を見るのは初めて。その形状から頑丈そうに見えるが、木製で壊れやすく、湿気に弱いデリケートな楽器だということがよく分かる。優雅にハンドルを回して弦を擦ることで音が鳴る仕組みだが、カバーを開けて弦を弾いたり、フレットを押さえたり、弦の上にアルミホイルを巻いたり、兎に角忙しい。灰野は椅子の上で身体を揺らしリズミカルな動きでハンドルを回す。それはギターやエアシンセを弾くときの激しいアクションとまったく同質である。一寸音だけ聴くと蝸牛の匍匐のようだが、脈動するビートが流れていることをを感じるべきだろう。



学校の音楽の授業で聞いたのかハーディーガーディーの名前だけは前から知っていた。ドノヴァンに「Hurdy Gurdy Man」というヒット曲もある。しかしこの楽器の存在が頭脳に強烈に植え付けられたのは2002年末の不失者の法政大学学生会館ワンマンだった。灰野のライヴに通いはじめてから1年経った頃初めて経験した7時間ライヴ。最初はまさかそんなに長いとはつゆ知らず、始まってから3時間程して灰野と小沢靖がステージを去り、電子音がPAからリピート再生されたので、このままフェードアウトして終わるんだな、と思った。しかし電子音は同じ音量で20分以上鳴り続ける。何かおかしいぞ、と思いながら時間感覚が麻痺してきた時、突然電子音を遥かに凌ぐ大音量でガラスを引っ掻くような耳障りな轟音が鳴り響いた。耳を塞ぐことも出来ず茫然とノイズに溺れたまま意識が遠のき、徐々に眠りに落ちていった。頭の中の景色がぐにゃりと曲がり、墨汁のように溶けて流れ出し、モノクロの曲線の間からえも言われぬ奇怪な異形の化け物がこちらを覗いている。余りの恐ろしさに目を醒すと、全身の毛穴から冷や汗が噴き出し、エレクトリック・ハーディーガーディーの音圧のために声も上げられず金縛りのままの自分を意識した。人間が只の肉の塊に過ぎないことを思い知り、シュールレアリストたちの描いたヴィジョンは、脳の中に存在する風景を忠実に再現した写実主義であることを実感した。



灰野のハーディーガーディーの音源は『手風琴』(PSF 1995)、『こんなになってもまだ考えている』(徳間ジャパン 1998)、『Abandon all words at a stroke, so that prayer can come spilling out(Disc1)』(Alien8 2001)、『Reveal'd to none as yet -an expedience to utterly vanish consciousness while still alive(Disc2)』(aRCHIVE 2005)『こいつから失せたいためのはかりごと』(PSF 2008)。コンピでは『Undecided』(PSF 2004)が代表的。



<ハーディーガーディー見聞録>
屹立ロケンロー&屹立エグジスタンス(存在)そろい踏み~Drop's/灰野敬二 2013.9.29(sun)
灰野敬二+テニスコーツ/Doraptron(ドラびでお+伊東篤宏)@青山 月観ル君想フ 2012.9.2 (sun)
灰野敬二@横浜トリエンナーレ 2008.11.21 (fri)
魂を絞り出す音~灰野敬二「こいつから失せたいためのはかりごと」
トニー・コンラッド×灰野敬二@六本木 Super Deluxe 2008.9.17 (wed)
石原志保(舞踏)+灰野敬二@中野 Plan B 2007.11.7(wed)
渋谷UPLINK FACTORY(2005.4.17)
灰野さんのハーディーガーディーを聴きに行ったよ(2005.4.8)
どうしても聴けないCDがあるよ(2005.2.22)

ハンドルを
回す手見てると
目も回る

センヤワの楽器担当ヴキール・スワディーもハーディーガーディーを演奏するらしく、いつかハーディーガーディー二重奏をやろう、と話していたそうだ。
【予告】センヤワ+内橋和久他、二日間に亘る「Jazz Art せんがわ 2014」のライヴレポートは明日掲載予定!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする