A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ICP オーケストラ+高瀬アキ@六本木SuperDeluxe 2014.9.3(wed)

2014年09月05日 00時47分37秒 | 素晴らしき変態音楽


ICPオーケストラ
スペシャル・ゲスト:高瀬アキ

メンバー:
アップ・バールス (clarinet, saxophone)
トービアス・デーリウス (clarinet, saxophone)
マイケル・ムーア (clarinet, saxophone)
ウォルター・ウィアボス (trombone)
トーマス・ヘベラー (trumpet)
メアリー・オリバー (violin)
トリスタン・ホンシンガー (cello)
エルンスト・フレールム (bass)
ハン・ベニンク (drums)
+ 高瀬アキ (piano)

ICP (Instant Composers Pool) オーケストラは、オランダフリーミュージックシーンの代表的なオーケストラであり、伝説的なピアニストであるミシャ・メンゲルベルグによって創設されたビッグバンド。創設時からのメンバーでミシャと共にエリック・ドルフィーの遺作『Last Date』にてその才能を開花させていたドラマーのハン・ベニンクをはじめ、米欧のフリー・ミュージックの精鋭たちが結集した豪華な顔ぶれとなっています。結成した60年代の中盤から優秀なミュージシャンを数多く輩出。彼らはジャズミュージックのみならずオランダが生み出したユーモア、演劇、文化の多くに触れ独自の音楽性を確立。今なお精力的に活動を続けています。2006年のスーパー・デラックス主催による24年ぶりの再来日公演では変わらない素晴らしい演奏を披露。沢山の喝采と賞賛を集めました。その後、2008年にも来日を果たし、今回は6年ぶり来日となりますが、ミシャ・メンゲルベルグは近年の持病により今回も含め海外公演が難しくなってしまいました。しかし、メンバーとしてハン・ベニンク、アップ・バールス、トービアス・デーリウス、マイケル・ムーア、ウォルター・ウィアボス、トーマス・ヘベラー、メアリー・オリバー、トリスタン・ホンシンガー、エルンスト・フレールムと実力も魅力も兼ね備えた9人編成のICPオーケストラも体感するたびに生まれる新しい発見と豊かな音楽の喜びを届けてくれる素晴らしい楽隊としてその魅力的な演奏を存分に披露してくれることでしょう。
ICPオーケストラ公式サイト



ハン・ベニンクは何度か観たが、ICPオーケストラを観るのは1982年以来32年ぶりとなる。先週来日したメンバーはスーデラ公演の前に何ヵ所かライヴし好評を博した。当初は何公演か観るつもりだったが、諸事情で行けなくなりこの日のスーデラオンリー。総帥たるミシャ・メンゲルベルクが持病のため来日出来なかったので、ゲストに高瀬アキを迎えたこの日の公演が、32年前に観たICPオーケストラに最も近い演奏になると予想した。
百鬼夜行の回想録~フリージャズ編:ICP BOXとICP オーケストラ

スーデラには32年前も観たとおぼしき年配客やミュージシャン関係者も多く平日にもかかわらず満員の盛況ぶり。楽屋が狭いので、出演者も客席内のテーブルに座って食事したり世間話したりしている。気を置けない雰囲気がこの自由な音楽家集団に相応しい。赤ら顔のハン・ベニンク以外は識別できないが、哲学者風のトリスタン・ホンジンガー、長身痩躯に眼鏡の兄弟のようなサックス二人(マイケル・ムーア、アッブ・バールス)や小太りの刑事コロンボ風のウォルター・ウィアボスの風貌が印象に残った。


(写真の撮影・掲載については主催者の許可を得ています)

四半世紀以上前の記憶を辿っても無意味かもしれないが、フリージャズや即興音楽が、決して眉間にしわ寄せ項垂れて聴くだけのものではないということを教えてくれた彼らのスタンスはまったく変わっていない。当時は意識しなかったが、彼らのレパートリーは、完全なフリー・インプロヴィゼーションではなく、概ね作曲された楽曲だという事実に今更ながら気がついた。そもそもICPはInstant Composer’s Pool=「即席作曲家共同体」の意味であり、ミッシャ・メンゲルベルク、ハン・ベニンク、ウィレム・ブロイカーというインプロ道の猛者により1967年に結成された時点から、あくまで「作曲」を追求する理念があったと言えよう。その意味ではFMP=Free Music Production(自由音楽制作組織)やINCUS=砧骨(きぬたこつ・ちんこつ:耳の中の骨のひとつ)に比べて、分かり易く風雅で上品な雰囲気に貫かれているのも頷ける。



メンゲルベルクやメンバーの作品を中心に、耳馴染みのあるスタンダード・ナンバーも交えたプログラムは、持ち前の驚きとユーモアとパワーに溢れた演奏だった。ソロ演奏に掛け声を掛けたり、メンバー同士で顔を見合わせて笑い合っている姿には、演奏することが楽しくてしょうがないという気持ちが溢れていた。演奏する歓びを第一に据えていることが、このユニークな音楽集団が50年近くも高いエネルギーを保ちながら活動を続けている第一の要因と言えるだろう。



予想通り高瀬アキの奔放なピアノが管楽器弦楽器打楽器のオーケストラにトキメキの色彩を注入する。所々デュオやトリオの演奏になり、ハイレベルなハードコアプレイを聴かせるところは流石テクニシャン揃い。しかしテクニックをひけらかすのではなく、人を喰ったようなトボケたパフォーマンスこそICPカラーの所以である。老いて益々やんちゃなハン・ベニンクは珍しくドラムの前から動くことはなかったが、微に入り細に入り叩き方を変える異能ドラミングは、見事にオーケストラの悪戯通奏低音を成していた。メンゲルベルクは79歳、ベニンクは72歳の高齢になり、いずれは演奏現場を去る日が来るが、ICP精神は自由音楽の伝統として継承されて行くに違いない。

アイシーピー
愛しているよ
アイラヴユー

ICP Orchestraスケジュール
東京JAZZ 2014
9月6日(土)17:00~/20:00~ [DUTCH JAZZ GARDEN]ICP オーケストラ(オランダ)
9月7日(日)15:30~ [東京JAZZ LABO]ICP オーケストラ(オランダ)ワークショップ

Disk Union お茶の水JazzTOKYO
9月8日(月) 18:00~ ICPオーケストラ インストア・ライヴ!!

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