褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 死にゆく者への祈り(1987) 哀愁が漂う元テロリスト

2021年10月19日 | 映画(さ行)
 すっかり最近は大人しくなったIRA(アイルランド共和軍)だが、かつては北アイルランドやイギリス本土において爆弾テロを度々起こしていた。IRAについての詳しい説明は各々で調べてもらうとして、今回紹介する映画は冒険小説の巨匠であるジャック・ヒギンズの同名タイトル小説を映画化した死にゆく者への祈り。当時イケメンバリバリのミッキー・ロークが元IRAのテロリストの主人公を演じている。
 元テロリストと言っても今まで多くの人間の命を奪ってきているだけに絶対に近づきたくない人間のタイプの典型。しかし、ミッキー・ロークが演じる元テロは哀愁を感じさせ、愛おしくさえもある。人殺しに同情してしまう俺って我ながらアホかと思えたりもしたが、でも本作を観ればきっと多くの人が俺と同じ思いするはずだ。

 さて、必死に運命に抗うように生きる男の悲哀を感じさせるストーリーの紹介を。
 北アイルランドにおいて、IRAのマーティン(ミッキー・ローク)はイギリス軍の車両をぶっ飛ばそうとするが、誤ってスクールバスを爆破させて多くの子供達を死なせてしまう。そのことにショックを受けたマーティンはIRAを抜け出し、ロンドンに潜伏する。かつてのIRAの仲間、地元の警察から追われる身となったマーティンはロンドンから逃げてアメリカへ渡るために、大金とパスポートの報酬と引き換えに、地元のギャングの葬儀屋を営む親分であるミーアン(アラン・ベイツ)から敵対する相手のギャングの親分の暗殺の依頼を受ける。これを最後の暗殺の仕事と決めたマーティンは難なく成功させるのだが、その現場を神父(ボブ・ホスキンス)に目撃されてしまい・・・

 祖国のために正義を貫いているつもりが、罪なき人間を巻き込んでしまうことにより自らの信念が脆くも崩れ去る。新しい人生を切り開こうとするマーティンだが、暴力の波はひたすら彼を追いかける。かつてのIRAの仲間からは追いかけられるし、潜伏先でも警察から追われ、そして新天地へ渡るために背負わされる仕事が人殺し。彼には常に死の影がつきまとう。
 殺害現場を見られた神父も簡単に殺そうとすればできたのだが、ここからがこの映画の真骨頂。暗殺者と神父の奇妙な交流が描かれる。少しづつ良心に目覚めつつあるが、それでも罪の意識に悩まされ続ける暗殺者、神に仕える身であるがゆえの葛藤に悩まされる神父。この悩める男たちが背負わされる宿命に、哀しみや辛さを感じさせる。非常に宗教をイメージする画が多いのが特徴の映画だが、特に最後のクライマックスで訪れる場面は印象的。果たして神は苦悩に満ちた男たちにどのような結末をもたらすのか。
 盲目の少女の汚れなき心は暗い影を落とすこの映画において清涼飲料水のような役割を果たし、街を牛耳る極悪人の表でみせる仕事は葬儀屋という設定は面白い。そしてロッキーシリーズの熱い名曲を手掛けたビル・コンティのアイリッシュ風の音楽は聴きごたえがある。ミッキー・ロークの主演映画の中ではそれほど有名な作品ではないと思うが、猫パンチ以前の格好良いミッキー・ロークが見れる。脇役も豪華で50歳半ばから急にアクションに目覚めたリーアム・ニーソンの若き頃も見れます。
 悩める男に胸きゅんな女性、重厚なサスペンス映画が好きな人、ジャック・ヒギンズの小説が好きな人、IRAに興味がある人、宗教的題材(カトリック)について興味がある人等に今回は死にゆく者への祈りをお勧め映画として挙げておこう
 

 

   
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