褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 サンドラの週末(2014) 労働者の悲劇です 

2018年12月24日 | 映画(さ行)
 社会の底辺に生きる人々を描くベルギーの映画監督であるダルデンヌ兄弟。今回もそのテーマから外れることはないが、彼らにしては珍しく大スターを主演に起用した映画が今回紹介するサンドラの週末。この監督の作風からして美女が登場する内容は似合わないが、なんと今回は世界で最も美しい顔ランキングのトップにも選ばれたことのあるフランス人女優のマリオン・コティヤールを主演に迎えた。今やハリウッドでも引っ張りだこの女優が出演している映画となると華やかな内容の映画かと思いきや、流石は社会派映画の名監督。労働者のクビ切りが本作のテーマだ。きわめてリアルに労働者の現実が描かれているのを見ていると、まるで我がことのように思わせる。しかもこの映画が描かれている国はベルギーなのかフランスなのか説明はないのだが、すっかりアジアのどこかの国の企業に押されて経営状態が苦しい会社の設定。まるでグローバル社会の成れの果てを見ているような気分にもなってしまうような話だ。

 早速だが、まるで他人事とは思えないようなストーリーの紹介を。
 サンドラ(マリオン・コティヤール)は精神的な疾患で会社を休職していたのだが、ようやく仕事に復帰しようと思っていた矢先の金曜日のこと。突然、働いていた会社の上司から解雇の通告を受ける。彼女が解雇を免れる方法はただ一つ。週末の土日を使って同僚たちにボーナスの破棄を認めさせて、彼女の復帰の是非をめぐる月曜日の投票で同僚16人の内の過半数を獲得すること。サンドラは夫の助けを得て、同僚たちを説得するために駆けずり回るのだが・・・

 まずは世界一の美人を解雇しようとする会社があることに、驚かさせられる。しかし、単なる美人であるだけでなくアカデミー主演女優賞に輝いたこともある実力派女優であるマリオン・コティヤールの役作りは流石だ。ノーメークに、ダサいヘアスタイルの出で立ちは、完全に女優オーラを消すことに成功している。これなら、いくら深刻なお願いであり、胸の谷間を見せられたぐらいでは、二つ返事で引き受けたりする男性は居ないのも納得だ。そもそも、彼女だけでなく世の中の労働者たちにとってはボーナスが出る出ないは死活問題にもなってくるし、本作を観ていてもそのことがよくわかる。だいたい『私を復帰させるために、ボーナスを諦めて!』なんて独りよがりのお願いをするようなことは俺にはできない。
 しかし、相変わらずダルデンヌ兄弟監督の弱者に対する視点には感心させられる。本作においても凄い我儘を言っているような主人公であるサンドラだが、実は彼女にもそのようなことを言わざるを得ないほど過酷な状況であることに次第に気付かされる。そして彼女が得られる感動は観ている者にもきっと通じる。人間は決して独りぼっちではないし、無謀な戦いだとわかっていても決して諦めないことの大切さを思い知るだろう。そういう意味では、あのボクシング映画の名作ロッキーと通じる部分があることに我ながら驚いた。
 社会派映画が好きな人、ハリウッド映画のような派手さは無いが渋い映画を観たい人、ジャルデンヌ兄弟監督と聞いて心が震える人、マリオン・コティヤールという美人女優に興味がある人、じわじわと感動する映画を観たい人等に今回はサンドラの週末をお勧め映画として挙げておこう

サンドラの週末 [DVD]
マリオン・コティヤール,ファブリツィオ・ロンジォーネ,オリヴィエ・グルメ
KADOKAWA / 角川書店


 監督は前述したジャルデンヌ兄弟。個人的なお気に入りとして息子のまなざしを今回は挙げておきます。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

 

 
 

 

 

 
 
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする