褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 トト・ザ・ヒーロー(1991) 他人の人生が羨ましく感じる時があるけれど

2015年07月21日 | 映画(た行)
 ベルギーの俊英ジャコ・ヴァン・ドルマル監督だが、1991年から現在に至るまでたったの3本しか撮っていない超寡作で知られる映画監督だ。普段は何をやっているのか心配してしまうが、それこそ余計なお世話。なんせ3本とも非常に優れ物で、常人には思い浮かばないようなストーリー設定及び展開が魅力的な監督だ。そんな彼のデビュー作品が今回紹介する映画トト・ザ・ヒーロー。タイトル名からして子供向きの映画に思えるが、実は全く子供には向かず、人生経験が豊富な大人が観るべき映画だ。
 俺なんかは不惑の40代を超えているのに、いまだに知るはずのない他人の人生と比べて、俺の人生はどうしてこんなにフラフラしてるんだ!なんて悩んだりする時がしょっちゅうある。ところが、そんな俺でもビックリするぐらいネガティヴなのが本作の主人公。既に老人ホームに居候しているような年齢なのに、この世に産まれた瞬間から未だに自分の人生を悔いている諦めの悪い老人だ。しかも自分の人生を取り替えられたと思っているだけに、その妄想ぶりはノイローゼ以上に深刻そうに思える。苦悩、後悔、自虐、嫉妬の感情ばかりで生きてしまい、楽しい想いは想像の中だけ。そんな男の生涯を描いた内容だが、その男に訪れる結末は幸か不幸か、果たしてどっち?そして観ている我々は、このような生き様から何を想い、何を感じるのか。

 チョッと立派な偉人の伝記映画ならば多少は楽しめるとしたものだが、負のオーラ満載の男の数奇な人生とはいかなるものか?
 老人ホームで居候しているトマ(ミシェル・ブーケ)は産まれた時の病院が火事に遭った時に、隣に住むアルフレッドと取り替えられたと信じている。トマが少年から青年になるに連れて、裕福なアルフレッドの生活が羨ましく感じ、しかもアルフレッドに虐められる日々。ある日のこと、トマにとってアルフレッドの一家に対して憎悪する出来事が起こってしまう。羨望から憎しみに変わる時トマにとって更なる不幸が追い撃ちを掛ける。
 年月を経て、大人になったトマは近親相姦的に大好きだった、今は亡き姉アリス(サンドリーヌ・ブランク)に似たような女性を見かけるのだが・・・

 冒頭から重たいシーン、重厚な音楽、死体が語りだしている雰囲気から、サスペンス的な雰囲気が漂う。一体この死んでいる男は誰なのか、やっぱりこいつか?という思いが観ている最中は頭から離れないのだが、その後の展開は現在や過去など時間軸があっちこっちに飛びまくり、時には妄想が入ってくる。なんだか頭の中が混乱しそうな構成だが、冒頭のシーンが頭から離れないために不思議とスンナリ観れる印象だ。
 トマが『本当は俺がアルフレッドのような生き方をできたんだぜ』と勝手に思い込んでいる様子は今思えば素っ頓狂だが、観ている最中は哀切を感じる。俺なんかは夢でも良いからブラッド・ピットになりたいと思う事が多々あるが、そんな願いが叶ったとして果たして俺は幸せになれるのか?その問いに対する明快な答えがアルフレッドの方から聞ける。
 重厚な音楽が響いてきたかと思えば、ブン、ブン蜂が飛ぶ~みたいな軽快な音楽が流れてきたり、暗さと明るさが同居している感じが良い。そしてトマの選択は良かったのか、悪かったのかは観る人によって判断が別れるのかもしれないが、良かったと思える人には恐ろしいほどのハッピーエンド。なんだか悩むのがアホらしくなるほど生きる気力が湧いてくる瞬間をラストシーンで感じることができるだろう。
 本作はタイトル名、そしてこの映画を紹介されるときに使われる画像(上記の画像です)から、興味が惹かれなかったり、少々気持ち悪く感じて観ようとする気が失せる人が多いと思うが、実は傑作の部類に入る方。そんなことで観てない人は本当にもったいない映画トト・ザ・ヒーローを今回はお勧め映画として挙げておこう

トト・ザ・ヒーロー [DVD]
ミシェル・ブーケ,ジョー・ドゥ・バケール,ミレイユ・ペリエ,トマ・ゴデ,サンドリーヌ・ブランク
角川書店


 監督は前述したジャコ・ヴァン・ドルマル。フランスの名優ダニエル・オートゥイユ主演の八日目、ジャレッド・レト主演のミスター・ノーバディと今のところパーフェクトな結果を挙げている監督さん。今後も彼の作品には注目です。

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