褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 灰とダイヤモンド(1958) ポーランドの悲劇を感じます

2014年08月14日 | 映画(は行)
 俺たちの日本は神話の時代を含めて二千六百年以上の歴史を持つが、世界を見渡してもこれほど長い歴史を持つ国は見当たらない。世界最古の歴史を持つ日本が世界中から賞賛されるのは当然のこと。しかし、逆に消滅しながらも再度復活した国家もあるのだが、それはそれで尊敬に価する。滅亡と独立を繰り返して、今日も存在する国がポーランド。第二次世界大戦中も西からは残虐非道なナチスドイツ、東からはならず者国家のソ連の侵略を受けるなど、ポーランドの歴史には悲劇が付きまとう。
 そんなポーランドの悲痛な叫びが聞こえそうな作品が今回紹介する映画灰とダイヤモンド。ポーランド映画及びアンジェイ・ワイダ監督の名を世界に知らしめた名作及び傑作だ。1958年のポーランド映画って言うと、とてつもなく退屈で暗いというイメージが真っ先に浮かぶ人が多いかもしれないが、本作についてはそんな心配は全くの無用。後で述べるが名シーンの連発だし、自由を渇望する主人公の青年の揺れ動く微妙な心理がまさに第二次世界大戦終了直後のポーランドを表現しているように思える。そんな青年が時代の荒波に吞み込まれてしまう生き様に観ている我々は何を想い、何を感じるのか

 ちょっと簡単にストーリーを紹介すると、第二次世界大戦末期のポーランド、ワルシャワが舞台。青年マチェック(ズビグニェフ・ツィブルスキ)はワルシャワ蜂起以来、自由を求めてナチスドイツとのレジスタンス活動に身を捧げてきた若者。ようやくナチスドイツをワルシャワから撤退させたのも束の間、新しい政権はソ連の影響を受けた共産党による政治体制。マチェック(ズビグニェフ・ツィブルスキ)は上司の命令で共産党幹部であるシュチューカ(バクラフ・ザストルジンスキ)を暗殺しようとするのだが、間違って違う二人を殺してしまう。
 偶然にもマチェック(ズビグニェフ・ツィブルスキ)はシュチューカ(バクラフ・ザストルジンスキ)と同じホテルに泊まり、今度こそと暗殺計画を実行しようとする機会を狙っていた。しかし、ホテルの酒場で給仕をしていたクリスティーナ(エヴァ・クジイジェフスカ)の美しさに一目惚れ。すっかりマチェック(ズビグニェフ・ツィブルスキ)とクリスティーナ(エヴァ・クジイジェフスカ)は意気投合し愛し合うのだが、それは今までレジスタンス運動だけに身を置いていたマチェック(ズビグニェフ・ツィブルスキ)に新たな試練を与えることになる。
 それは、上司の命令通りシュチューカ(バクラフ・ザストルジンスキ)を殺害するのか、それとも上司の命令に逆らい愛するクリスティーナ(エヴァ・クジイジェフスカ)と一緒に暮らし、レジスタンス活動の組織から抜け出すのか。即ち祖国を選ぶのか、愛する女性を選ぶのか、二者択一の究極の選択を強いられるのだが・・・

 ちなみに俺なら主人公マチェックとは違う選択をしていただろう。しかし、違う選択をしたとしても違う結果が出たとは限らない。結局は進むも地獄、退くも地獄と言ったところか。それはさておき、最初は人殺しも平気だったマチェックが次第に自らの行動に疑心暗鬼に陥ってくる心理変化が感動的に描かれている。「人殺しをしてまで得られる自由に価値があるのか!」なんて当たり前のことを言い出すが、この映画を観たきっと誰もがこの台詞に感動するはず。『オマエ、今頃そんなことに気付いたのかよ!』なんてツッコム人間など居ないはずだ。
 しかし、この映画の素晴らしさに印象的な場面が多いことが挙げられるだろう。マチェックが酒場で給仕をしているクリスティーナをナンパするシーンはなかなか参考になる。
 他にマチェックがカウンターに置かれた酒の入ったグラスをカウンターの机を滑らせて次々に相棒の方へ渡すシーンが格好良い。あれは真似したいのだが失敗してグラスを倒してしまうのがオチだろう。そして、その後にかつて一緒に戦った女性の名前を言いながらグラスに火を点けていくのが感動的。このシーンは本当に注意してみて欲しい。さすがの俺もこのシーンは危なすぎて真似しようと思わない。
 他に花火が打ち上がるシーンはドラマティックだし、タイトル名の由来を表す”灰とダイヤモンド”の詩を読み上げるシーンは、じっくり何回でも聞きたくなる。この詩の意味を知ったとき、苦しい中にも小さな希望の光がある事を実感できるはずだ。
 そして、ラストシーンが鮮烈。あの結末、場所の意味を考えた時、第二次大戦終了後のポーランドの状況、そして制作時におけるポーランドの状況に思いを馳せるのは俺だけだろうかそしてマチェックのサングラス姿が格好良い。もっともサングラスが印象に残る映画でもある。
 恋愛、サスペンス、歴史、そして宗教的な示唆に富み、とにかく余韻がいつまでも残り続ける映画灰とダイヤモンドは万人にお勧めできる映画です

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 監督は最近もワレサ 連帯の男で存在感を示し、今や生ける伝説と化した雰囲気すら漂うアンジェイ・ワイダ。この監督の作品ではナチスドイツの攻撃にひたすら地下水道を逃げ回る地下水道、実在の事件を基にしたカティンの森がお勧め。本当にパワフルな映画を撮る監督のイメージがあります。

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