飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアがベルリンの壁崩壊20周年を喜べないわけは?

2009年11月06日 11時00分19秒 | Weblog
 東西冷戦終結の象徴となった「ベルリンの壁」崩壊から満20年を迎え、欧州諸国では様々な記念行事が行われている。だが、冷戦の相手だったロシアでは、そうした行事はほとんどない。なぜなのだろうか?その疑問に答える論文が6日付けのロシアの英字紙モスコー・タイムズに掲載された。

 筆者は、リベラル派のルイシコフ元下院議員(43)。下院副議長を務めたこともある野党の有力政治家だ。論文の要旨は以下の通り。

 冷戦を終結させたゴルバチョフ旧ソ連大統領は、ソ連を崩壊させ、東欧諸国を西側に「引き渡した」責任を追及し続ける人々にこう答えている。「私が何を引き渡したって?ポーランドをポーランド人に、チェコスロバキアをチェコ人とスロバキア人にあげたのだ」。そして同様にロシアがロシア人の手にに戻ったというわけだ。

 ベルリンの壁崩壊から20年の間に、欧州とアジアが大きく発展したのに対し、ロシアはずっと立ち遅れ続けている。つまり、ポスト冷戦時代の最大の敗者というわけだ。具体的にはロシアは三つの失敗を経験している。第一に経済の近代化に失敗したこと、二つめは独裁体制に代わる効果的な政治システムを構築できなかったこと、そして国際的評価とスーパーパワーの地位を失ったことだ。

 さらに、旧ソ連諸国はモスクワからできるだけ距離を置き、西側の制度を発展のモデルと考えている。つまり、モスクワは国際社会からますます孤立しつつある。ロシア以外の国はベルリンの壁崩壊20年を祝っているのに、ロシアだけ取り残されているのだ。

 以上のような考えは、ロシアのリベラル派がみな思い描いていることだろう。プーチン首相ら保守派もソ連崩壊後の90年代を「屈辱の時代」と呼び、ロシアの伝統的価値観に戻って西側に雪辱戦を挑んでいるように見える。今は西側といたずらに対立するのではなく、この20年間を冷静に振り返り、失敗をきちんと総括すべき時なのではないだろうか。

<追伸>ロシアの金融危機の影響をまとめた私の記事が週刊エコノミスト誌最新号(11月10日号)に「ロシア経済底入れ?『停滞の時代』再来懸念も」の見出しで掲載されています。
 
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