飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

北朝鮮の弾道ミサイル発射で判明した「日米同盟」の現実

2009年04月06日 10時18分58秒 | Weblog
 北朝鮮が5日、長距離弾道ミサイルを発射し、6日の各紙朝刊はこの問題で全面展開している。各紙の論調はおおむね「国際結束で脅威を抑えよ」(朝日)「安保理で共同歩調探れ」(毎日)「安保理は制裁決議の再確認を」(読売)などと国際協調で北朝鮮を封じ込めよという主張だが、はたしてそれだけで十分だろうか。

 今回の一連の問題で明るみに出てきたのは、日本政府が安全保障の根幹においている日米同盟が非常に頼りないもので、いざというときに日本を守ってくれないのではないかという疑問である。この点にはっきり言及しているのは産経の古森ワシントン駐在編集特別委員ぐらいだった。

 もちろん今回の問題でも情報収集では日米が協力し、米軍の早期警戒衛星が捉えた発射情報が大きな役割を果たした。しかし、米国は「ミサイルが米国本土に向かってこない限り、迎撃の計画はない」(ゲーツ国防長官」として日本に向けての発射には対応しない考えを示した。今回は日本が独自に迎撃を計画し、幸い何事もなかったからよかったものの、間違って日本国土に落ちた場合、日本の防衛力で対応できたかどうかわからない。

 日米同盟の実態については駐ウズベキスタン大使などを務めた孫崎享氏の著書「日米同盟の正体」(講談社現代新書)に詳しいが、同氏は日本政府が頼りにしている米国の「核の傘」は役に立たないと言い切っている。外務省の重要ポストを勤めた外交官の言だけに説得力がある。とくに氏は、日本政府が巨額の金をかけて整備しつつあるミサイル防衛について「有効に機能しない」と決め付け、軍事の枠組みの中では「核への抑止力」は達成できないとしている。

 今回の問題から「断固たる制裁を加えよ 抑止可能な防衛力の整備を」(産経)などと軍事力の拡大を主張する意見が出始めているが、その基盤となる日米同盟のあり方自体を再検討しないと日本の安全保障論議が進まないところにきている。この際、日米同盟はどうあるべきか、ミサイル防衛は有効かどうかという原点に戻って冷静に考え直すべきではないか。
コメント (1)
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