飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

旧ソ連のモルドバ共和国、欧州とロシア対立の新たな火種に!

2009年04月13日 10時29分32秒 | Weblog
 モルドバ共和国は以前、ベッサラビア地方と呼ばれていた。肥沃な黒土地帯にあることから、古くから隣国のルーマニアやトルコの間で領有権争いが続いている。第一次大戦後にルーマニアに編入されたが、旧ソ連が認めず、モルドバ共和国としてソ連圏に引き入れた経緯がある。いま、このモルドバをめぐってルーマニアとロシアが綱引きをしている格好だ。

 今回、争いが起きているのは、5日に投票されたモルドバ議会選が発端だ。与党の共産党が勝利宣言したが、野党側は選挙に不正があったとして選挙のやり直しを求めて街頭デモを始めた。そして7日、首都キシニョフで暴動が起き、野党支持者が大統領府と議会を占拠する事態に発展した。翌日、警官隊が大統領府と議会を奪還したが、共産党のウォロニン大統領はルーマニアが抗議運動に関与していると批判、ルーマニア大使の国外追放を通告した。ロシアはウォロニン大統領を支持していて、欧露間の対立に発展しそうな雲行きだ。ルーマニアは欧州連合(EU)に加盟しており、ロシア対EUの紛争の火種になるかもしれない。

 ところが、13日付けのロシア・コメルサント紙によると、野党側は7日の暴動は「共産党政権が不正選挙への批判をそらすために起こしたもの」と非難しているという。その「証拠」として、暴動参加者の中に警察関係者が加わっている写真があると指摘している。これが事実だとすると、共産党側の自作自演となり、非難の矛先が大統領自身に向かうことになる。そうなると、ロシアの立場も危うくなる。

 モルドバは民族的にルーマニアに近く、共産党政権も当初、EU加盟を目指す方針を打ち出したが、その後ロシアとの結びつきを強めている。今回の騒動で共産党大統領はルーマニアを敵視し、ビザ(査証)制度を導入して入国管理を強化することを決めたが、これも狙い通りだったのか。モルドバ情勢に当分目が離せない。