飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアはウクライナとの「外交戦争」で何を狙っているのか?

2009年08月17日 15時20分38秒 | Weblog
 ロシアのメドベージェフ大統領が、ウクライナのユーシェンコ大統領に反露姿勢を非難する書簡を送れば、ユーシェンコ大統領がメドベージェフ大統領に対し「反友好的書簡」と反論するなど、両国間の「外交戦争」がエスカレートしている。これを仕掛けたロシアの狙いを探ってみた。

 ロシア側は、グルジア戦争からちょうど1年たった時期に「外交戦争」を仕掛けている。しかも、ウクライナの大統領選が来年1月に行われることになっており、大統領選に向けての高等作戦であることは間違いない。外交官追放合戦をはじめ、両国の外交をめぐるトラブルをまとめて取り上げ、新任の駐ウクライナ大使の派遣延期を条件にしているところがあやしい。

 ロシアとウクライナとの関係悪化はグルジアと同様、NАΤO(北大西洋条約機構)への加盟問題が直接のきっかけだった。グルジアに対しては軍事介入という強硬手段で対応したが、フランス並みの「大国」のウクライナに対してはそういうわけには行かない。そこで来年の大統領選で親欧米派のユーシェンコ大統領を政権から引きずり下ろし、親露派の大統領をすえるのが最終的な目的である。

 だが、複雑なのは親露派の大統領候補が2人いて、どちらも立候補を目指していることだ。一人は元首相のヤヌコビッチ氏で、最近の世論調査ではトップの24%の支持率がある。もう一人は現首相のティモシェンコさんで、支持率は14%と2位につけている。ちなみに現大統領の支持率は4%で一番低い。問題はロシアの現政権がどちらの候補を支持するかだ。

 タンデム(双頭)政権としては、操縦しやすいほうを選びたいと思うのは当然だ。このところプーチン首相と最もよい関係にあるのは、今年初めの天然ガス紛争でプーチン首相と交渉し、合意したティモシェンコ首相である。そこで、今回も同首相をモスクワに呼んで交渉し、合意を演出してウクライナ国民に次期大統領に最適任と印象付けたいのではないだろうか。そのための「呼び水」が外交戦争ということになる。

 だが、こうした演出が失敗すればティモシェンコ首相に傷がつき、逆にユーシェンコ大統領の支持率を上げる結果になりかねない。謀略的な仕掛けは諸刃の剣だ。策士、策におぼれるということわざもある。この外交戦争の結末や、いかに。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする