ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『その男ヴァン・ダム』

2008-11-27 00:23:39 | 新作映画
(原題:JCVD)


-----これって、あのヴァン・ダムが自分自身を演じた映画ニャンだって?
「そう。それも“どん底”のね」
----えっ、それってどういうこと?
「ほら、ヴァン・ダムという人は、90年代においては最強のアクション・スター。
でも、ここのところその名前をほとんど聞かなかったでしょ。
これはその“事実”を基に、
映画的にオモシロくなる脚色を施したもの」

----どういう脚色?
「設定はこう。
21世紀。彼のスタイルはすでに時代遅れ。
ビデオストレート作品が続いてギャラは急降下。
復活を期した作品は主役をスティーブン・セガールに奪われ、
最愛の娘にも嫌われ、銀行口座は底をついている」

----もしかして、それってコメディ?
「ぼくもここまでのプロットを聞いたときは、
そう思ったんだけどね。
彼の私生活をコミカルに描いたものなんだろうと…。
ところが、実際の物語は次のように展開してゆく。
妻と娘の親権、養育権を争っているヴァン・ダムが
弁護士への費用を下ろそうと立ち寄った郵便局。
そこで彼は強盗の襲撃に遭遇。
そればかりか犯人と誤認されてしまう----」

----あらら、立派なアクションのお話じゃニャい。
ちょっとおかしいけど……。
「そう、どことなく70年代アクション風。
一味の中で最も気が短い男なんて、
『狼たちの午後』ジョン・カザールを彷彿させるヘアスタイル。
しかし、正直言ってこの銀行のシーンはあまりオモシロくなかったね。
時制を分解して、
違う角度から同じシーンを見せたりしているんだけど、
あまり効果的ではない。
それ以前に銀行内が暗くて
アクションが急に起こるものだから、
何がどうなっているかよく分からない」

----あらら、それってあんまりな言い方……。
「でも、それに匹敵するくらいに
オモシロかったシーンもあるんだ。
まずはオープニング。
東洋人監督によって撮られているアクション映画という設定のこのシーンは、
延々とワンショット撮影。
でも、どこかヴァン・ダムのキレが悪い。
ところがここに『オレはもう47歳。これをワンショットなんて無理だ』と
監督に愚痴る強烈なオチが…。
ヴァン・ダムはおそらくそれを意識して、
少し、もさっとした演技をしていたんだろうね。
あと、タクシー運転手のお婆さんが
『ヴァン・ダムの態度が悪い』と
いつまでも彼に喋り続けるシーン。
ここもスリリングだったな。
ヴァン・ダムがいつキレるかと心配になったくらい、
これがしつこく続くんだ」

----だって、この映画
ドキュメンタリーじゃないんでしょ。
それってあたり前じゃニャい。
「うん。
そのはずなのに、
それを忘れさせる。
ここは監督の演出の巧さを認めなくてはいけないかもね。
なんと、このお婆さんは俳優ではないというし、
キャスティングの勝利だね。
そして、もう一つは
信じられないくらいに長いヴァン・ダムのモノローグ。
本来はアクションスターの彼が
よくこんな長セリフを覚えたなと思ったら、
なんとこれはヴァン・ダムが自ら入れたかった部分らしい。
ここでは彼のこれまでの生き方が
依存症などの暗い部分も含めて赤裸々に語られるんだ。
そしてその長いモノローグが終わり
パンダウンすると、
またドラマへと続いていく」

----ニャんだ。聞いていると
けっこうよかったんじゃニャい。
「う~ん。
ただ、それらの印象的なシーンが
いずれもバラバラだからなあ。
あっ、あと強盗犯にヴァン・ダムのファンがいたのはオモシロかったね。
その男のセリフ、
『あんたがジョン・ウーをハリウッドに連れてきたのに
彼は恩知らずだ。
あんたがいなければ、いまでも香港で鳩を撮っていたはずだ』には大笑いしたね」

---そうか、ツイ・ハークもリンゴ・ラムも
ヴァン・ダムがハリウッドに招いたんだよニャあ。
あの頃の彼はスゴかったニャあ。
意欲満々って感じ。

           (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「しかし、変な映画だニャあ」なにこれ?

※どこまでがほんとうのヴァン・ダムかは分からない度

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