ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『GOTH』

2008-11-13 00:30:13 | 新作映画
-----また乙一の映画化?
確か、彼は叙述トリックの作家だから
映像化は難しいと言ってたよね。
「いやあ、驚いたね。
まさかここまで乙一が映画でブームになるとは…。
この原作『GOTH リストカット殺人事件』は
彼の持ち味である暗黒面と切なさが
絶妙なバランスで出ている連作短編集。
ここではその中のいくつかをうまくミックス。
一つの乙一ワールドを作り上げている。
ただ、これは乙一ファンじゃないと
かなりキツいかもね」

----取っつきにくいの?
「う~ん。どう言えばいいだろう。
いわゆるドラマトゥルギーを排した作りになっているんだ。
原作では
人間の持つ暗黒面に強く惹かれる高校生の『僕』と
同級生の森野夜が
猟奇的な事件に関わっていくというもの。
最初、読んでビックリしたのは
このふたりはその事件や死体、あるいは
殺人を実行した人物には興味を示すものの、
その犯人を突き止めても
警察に通報したりはしないという点。
いわゆる『正義は悪を罰するべし』的なモラルからは
ほど遠いところにいるんだね。
彼らふたりの周りだけ、空気が違うみたい。
この映画のうまいところは、
その“ただならぬ空気”を生み出すにあたって、
自然光にさらに照明を当てることで作られた人工的な、
しかもコントラストの強い光と影によって、
塗り上げているところにある」

----塗り上げる?
「うん。監督の興味は
ストーリーを物語ることよりも
乙一の世界を絵画的に構築することにあるかのように見える。
冒頭のバスの中に続いて発見される手首のない死体。
ここは固定カメラによるワンショット撮影。
まるで『隠された記憶』のラストシーンみたい。
日常の中に異常が忍び込む------。
思わず舌を巻いたね」

----主演は本郷奏多だっけ?
「そう。
これはかなり原作とイメージが近かった。
まるで本郷奏多がその年になるまで
映画化を待っていたのではないかと思われるほどにね。
対する高梨臨もよかった。
近より難い美女・森野夜を
表情を作らないことで
まるで人形が動き出したかのように見せていた」

----ふうん。じゃあ、かなりオススメってワケ?
「いや、さっきも言ったようにこれは観客を選ぶだろうね。
撮影、照明、そして編集に至るまで
神経の行き届いた精緻な作り。
だけど、人によっては退屈かもなあ。
ぼくは、ストップモーションと
前景の人影を組み合わせたラストショットなんて
実に感心したんだけどね」


           (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「フォーンは好きになれるかニャ?」<小首ニャ

※う~ん。微妙だ度

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